地域間格差の縮小に関する白書

カテゴリー:地域雇用

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  • 国別労働トピック:2022年4月

政府は2月、地域間の経済的・社会的格差の縮小に向けた取り組みに関する白書を公表した。民間部門の成長促進に向けた研究開発やインフラ整備のための公共投資、教育訓練や保健サービスの拡充、地域の結束力を高めることを目指す施策を柱に、2030年までに目指すべき各種の目標を掲げている。

成長促進による生産性や賃金、雇用、生活水準の向上

地域間格差の縮小に向けた施策の実施は、保守党が2019年の総選挙時に公約として掲げていたものだ。経済的・社会的な発展が集中しがちなロンドンやその周辺地域、あるいは地方の大都市圏以外の地域にも、発展をもたらすこと(levelling up)を目的に掲げ、インフラ整備や地域の再生、雇用促進や技能政策などに対応した基金の設置等がこれまで行われてきた。

今回公表された白書(注1)は、既存の取り組みを踏まえて、より包括的かつ長期的なプログラムの方向性や、地域の発展を表す各種のエビデンスに基づく施策の実施を、方針として打ち出している。地域間格差の縮小を図る上で、2030年までに目指すべき目標(ミッション)として、生産性や賃金、雇用、生活水準の向上のための民間部門の成長促進や、教育訓練・保健など公共サービスの拡充、あるいは地域における帰属意識の再生、地方分権といった目的別に、計12項目が示されている(図表)。このうち、民間部門の成長促進の具体的な施策としては、中小企業への融資促進、機関投資家や海外からの投資の促進、貿易政策の推進、研究開発やその成果の活用・普及の促進、製造業の活性化のほか、各種公共交通網の整備、通信ネットワークの整備などが挙げられている。

一連の目標に関する取り組み状況について、政府は今後、毎年進捗報告を行うとしている。

指標による進捗の把握

白書は、各目標に関する進捗を測るための51の指標を、案として挙げている。これには例えば、時間当たり付加価値や、週当たり賃金額(中央値)、16-64歳層の就業率、19歳以上層の継続教育への参加や資格取得状況、あるいは一般的な通勤手段や平均通勤時間など、多様な内容を含む。ただし、約半数については、地域・地方レベルのデータの整備状況などの問題があるとしている。同時に、労働の質、労働と健康(健康上の理由による就労困難の問題)、地域への誇りと厚生、訓練修了の長期的成果、地域のリーダーシップといった分野については、さらなる適切な指標の検討が必要であるとして、今後、研究者やシンクタンク、非営利組織、現場の専門家、民間企業、統計局などからの意見聴取を踏まえて指標を決定するとしている。

図表:2030年までの目標および指標案
画像:図表
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参考資料

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