独立自営業者の失業手当支給条件の緩和

カテゴリー:労働法・働くルール雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2022年4月

フランスでは、独立自営業者(travailleur indépendant)がおよそ310万人いるとされ、その多くが情報通信業や輸送、コンサルティング業、医療・介護、商業などの業種で就労している(注1)。独立自営業者の約2割が発注者や仲介業者に経済的に依存しており、収入が不安定だとされているため、2019年11月に独立自営業者であっても失業保険に加入できるようにする措置が取られた。しかし、実際の加入者は当初予定していたほどの規模にはなっていないため、失業手当の支給条件の緩和を目的とする法律が国会で2022年2月に可決成立し、4月1日から施行された。

不安定な独立自営業者に月額800ユーロ支給

フランス(マイヨットを除く)では、2017年時点で310万3,000人が独立自営業者として就労しており、就労者全体の11.5%に相当する(注2)。そのうち61万9,000人(19.9%)は、発注業者や仲介業者に対して経済的に依存しており、発注される仕事の内容や日程管理、価格設定に関して自律的に決定することが制限されている。その中でも、29万5,000人(9.5%)は単一の発注者に依存している。職種としては、情報通信、輸送、ビジネス・コンサルティングの分野で多く就労しており、日程管理に制約があり、仕事が不足しているという特徴がある。そうした独立自営業者の社会的保護を強化するために、失業保険への加入を可能とする制度が2019年11月に創設された。

雇用労働者ではない形態で2年以上就労した失業者に対して、月額800ユーロ(上限)が6カ月間にわたって支給される制度となっており、制度の創設時に政府は、年間2万9,300人の利用を見込んでいたが、施行から16カ月経過した2021年2月26日の時点で911人に過ぎず(注3)、2021年9月17日時点でも1,107人のみだった(注4)

支給条件緩和の必要性

受給資格を得る失業者が想定よりも少ないのは、支給条件が厳し過ぎるためだと考えられている。2022年3月までの制度では、失業手当受給のためには次の条件に合致していることが必要とされた。指定された業種において、(1)少なくとも2年間継続して一つの事業に従事したこと、(2)法的整理(法的清算や法的更生手続き)を受けたこと、(3)申請前の2年間を通じて、少なくとも毎年1万ユーロ以上の年収があったこと、(4)独立自営業者以外の収入が生活保護手当(RSA)(2022年4月現在、月額575.52ユーロ)を上回らないこと、(5)積極的に求職活動をしており、公共職業安定所に求職者登録をしていること、である(注5)

2021年2月26日までに受け付けた独立自営業者による失業手当の請求は2196件で、実際に手当を受給できたのは41%の911人である。請求を却下された786件のうち、理由としてもっとも多い74%を占めたのが上記条件の(3)「2年間を通じて少なくとも10,000ユーロ以上の収入」だった(注3参照)

この制度の利用者を増やすために、マクロン大統領は2021年9月16日、「独立自営業者の保護を強化する行動計画を公表した(注6)。その一部は、一般会計予算法案(projet de loi de finances)や社会保障財源法案(projet de loi de financement de la Sécurité sociale pour 2022)などに盛り込まれ、具体化されており、今回の法改正につながった(注5参照)

収入に関する支給要件の緩和

上述の「独立自営業者行動計画」に基づき失業手当受給条件の緩和する法律が、2021年9月から国会で審議され、2022年2月8日に可決成立した(注7)。この法改正では、(3)「2年間を通じて少なくとも毎年1万ユーロ以上の年収」という条件が緩和され、「2年間のうちどちらか1年間は、1万ユーロ以上の年収」という条件になった。また、(2)「法的整理(法的清算や法的更生手続き)」についても受給条件からはずされ、2022年4月1日の時点で、事業の運営が不可能となり、所得税課税対象の所得が前年比で少なくとも30%減少し、当該事業の将来性が見込めないために活動を完全に停止したことを申告すれば手当受給が認められることになった(注5参照)

行動計画には職業訓練に関する措置も

「独立自営業者行動計画」に基づいて今回は失業保険の受給条件を緩和する措置が取られたが、同計画には職業訓練の受講を可能とする措置も盛り込まれている。また、失業手当の額は月額800ユーロを上限としているが、事業停止前の収入が低い独立自営業者は、受給額が引き下げられる可能性があるため、下限を600ユーロに設定する等の措置が新たに検討されている(注8)

独立自営業者組合(Syndicat des indépendants:SDI)の事務局長は、今回の法改正を高く評価しながらも、一定の警戒が必要だとしている。これは中小企業担当大臣も認めていることだが、独立自営業者に融資した銀行が債権者として個人資産の請求する場合の対応について検討する必要があるとしている(注9)

(ウェブサイト最終閲覧:2022年4月12日)

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