2022年最低賃金引き上げ率は5.1%

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  • 国別労働トピック:2021年12月

最低賃金委員会は2021年7月12日、第9回全体会議を開催し、2022年1月1日から適用される最低賃金を、時給9160ウォン(現行比440ウォン増、5.1%引き上げ)とすることを議決した。月換算額は191万4440ウォン(週40時間、月209時間基準)である。雇用労働部は8月5日、最低賃金委員会の決定どおり2022年の最低賃金を定めることを告示した。

従来どおり時給単位を採用

韓国では、雇用労働部長官の要請に基づき、公(公益委員)労使各9人、合計27人で構成される最低賃金委員会が最低賃金案を審議・議決し、決定した最低賃金案を雇用労働部長官が告示する。最低賃金委員会は2022年度最低賃金決定のため、2021年4月から7月にかけて9回の全体会議を開催した。

第3回全体会議(6月15日開催)では「最低賃金額決定単位」について審議が行われた。労働者委員は労働者の生活サイクルは月単位であるため最低賃金は月給で定める必要があると主張し、これに反対する使用者委員は、労働者の雇用形態や労働時間は多様であり月給を決定するのは難しいと主張した。結果、第4回全体会議(6月22日開催)において昨年同様「時給で決めるが、月換算額(月209時間基準)を併記」して告示するよう雇用労働部長官に要請することが労使間で合意がなされ、表決なく議決された。

業種別区分の適用は否決

昨年同様、「業種別区分適用の可否」が争点となった。韓国では1989年以降全産業同一の最低賃金額が適用されているが、現行の最低賃金法(1988年施行)では事業種別に最低賃金を区分して定めることが可能となっている。使用者委員はこれを根拠に、業種ごとの支払能力や事情を反映した最低賃金の業種別適用を要求した。一方、労働者委員は、業種別区分の適用は最低賃金制度の趣旨に合わないなどと反対した。

業種別区分の可否については第4回全体会議、第5回全体会議(6月24日開催)で審議されたが労使間の立場の違いが縮まることはなく、第6回全体会議(6月29日開催)において表決を行った結果、否決された(出席27人、賛成11人、反対15人、棄権1人)。これによって、2022年度も従来どおり全業種に対して同一の最低賃金額を適用することが決定した。

当初案で使用者側は凍結、労働者側は1万ウォン超を要求

第6回全体会議において、労使の当初案が提出された。

労働者委員は、2080ウォン(23.9%)引き上げ、時給1万800ウォンとするよう要求した。労働者委員の要求は、①最低賃金は労働者の生活安定と国民経済の健全な発展を目的としている、②新型コロナウイルスによって生じた経済格差解消の必要性、③労働者の所得増大と消費刺激の可能性、を根拠としており、加えて④経済民主化のため最低賃金制度の改善も並行して必要だと主張した。

これに対して使用者委員は、現行の8720ウォンで凍結するよう要求した。その根拠として、①2021年度適用最低賃金がすでに最低賃金の上限である中位賃金比60%を超過していること、②また、非婚単身者労働者の生計費を超え、全体の生計費中位値に近接していること、③労働生産性の伸び率が最低賃金引き上げ率に追いついていない状況、④新型コロナウイルスの影響による小規模自営業者および中小企業の経営悪化が持続しており、最低賃金未満率は過去2番目に高い状態であること、を示した。

第7回全体会議(7月6日開催)では、当初案に関する労使討論、および公益委員による労使双方への提示根拠に関する質疑応答が行われ、最低賃金委員会委員長は労使に第8回全体会議で修正案を提出するよう要請した。

第8回全体会議(7月8日開催)で、労働者委員は時給1万440ウォン(19.7%引き上げ)、使用者委員は時給8740ウォン(0.2%引き上げ)の第1回修正案をそれぞれ提示した。民主労総(注1)推薦の労働者委員4人は使用者委員の第1回修正案に反発して退場した。

労働者委員の第1回修正案の根拠は、3人世帯の生計費(202万8988ウォン)、賃金引き上げ見通し(5.5%)、所得分配の改善分(2%)に基づき算出した額を209時間基準で時給に換算した額である。一方、使用者委員の第1回修正案は、審議促進のために2020年の不変付加価値基準の労働生産性の増加率(2019年比)0.2%を反映している。

第9回全体会議(7月12日開催)において、第2回、第3回修正案が労使双方から提出された。第2回修正案では、労働者委員は1万320ウォン(18.3%引き上げ)、使用者委員は8810ウォン(1.0%引き上げ)を提出した。第3回修正案で労働者委員は1万ウォン(14.7%引き上げ)、使用者委員は8850ウォン(1.49%引き上げ)を要求したが、これ以降労使間の主張の隔たりを縮めることはできなかった。

そのため、労使の要請により、公益委員が下限9030ウォン(310ウォン増、3.6%引き上げ)、上限9300ウォン(580ウォン増、6.7%引き上げ)の審議促進区間を提示した(注2)。民主労総推薦の労働者委員4人は公益委員の審議促進区間に反発して退場した。

公益委員の5.1%引き上げ案を議決

審議促進区間提示後、労使双方は公益委員に対して単一案の提示を要請し、公益委員は時給9160ウォン(本年比440ウォン増、5.1%引き上げ)の公益委員単一案を提示した。

使用者委員は、公益委員単一案の表決に反発して9人全員が退席した(棄権として処理)。在籍27人中23人が出席する中、公益委員単一案の表決が行われ、賛成13人、反対0人、棄権10人で可決された。

公益委員単一案は、2021年の経済成長率(4.0%)、消費者物価上昇率(1.8%)、就業者増加率(0.7%)に基づき決定されている(注3)(図表1)。

図表1:2022年最低賃金提示案 (単位:ウォン、%)
画像:図表1

  • 注:( )は前年比引き上げ率
  • 資料出所:韓国最低賃金委員会報道参考資料(2021年7月13日付)を元に作成

文在寅政権は当初最低賃金1万ウォンを公約としており、2018年は16.4%、2019年は10.9%と2年連続で最低賃金を大幅に引き上げた。しかし、急激な最低賃金の引き上げは産業界から批判を受け、2020年の引き上げ率は2.9%と小幅な引き上げに留まった。その後は、コロナ禍による景気悪化の影響もあり、2021年は1.5%と、最低賃金制度導入後、最も低い引き上げとなっていた(図表2)。

図表2:最低賃金の推移(2012年~2022年) (単位:ウォン、%)
画像:図表2

  • 資料出所:最低賃金委員会報道参考資料(7月13日付)を元に作成

経営側からの異議は認められず

最低賃金委員会による最低賃金案の提出後、雇用労働部によって最低賃金案が告示される。労働者を代表する者および使用者を代表する者は、告示後10日以内は雇用労働部長官に異議を提起することができる。雇用労働部は7月19日に2022年最低賃金案を告示後、29日までを異議申し立て期間としていた。労働界からの異議申し立てはなく、経営界からは3件の異議申し立てが行われたが、経営界からの異議はすべて承認されなかった。

最低賃金法では毎年8月5日までに雇用労働部長官が最終的な最低賃金を決定し告示するよう定められている。雇用労働部は8月5日、2022年最低賃金を告示した。今回議決された最低賃金は2022年1月1日から適用される。経済活動人口付加調査によると、この最低賃金に影響を受ける労働者数は355万人であり、影響率は17.4%である。

零細経営者への支援-雇用安定資金事業

零細事業主の最低賃金引き上げの負担を減らし、労働者の雇用維持を図る事業として、「雇用安定資金事業」がある。

雇用安定資金事業とは、原則として従業主30人未満の事業主に対して、一定の支援要件を満たした場合に労働者の人件費の一部を継続的に支援する制度である。2021年度時点では、支援要件として、支援を受ける労働者は雇用が1カ月以上維持されており、月平均報酬額(基本給、すべての手当の総額)が219万ウォン以下である必要がある。また、事業主は、①最低賃金の遵守、②雇用保険への加入、③既存労働者の賃金水準引き下げ禁止および雇用維持の努力義務、という条件を満たさなければならない。

2021年度の支援金額は、5人以上の事業所では一人あたり月5万ウォン、5人未満の事業所では月7万ウォンで、短時間労働者および日雇い労働者の場合、支援金額は労働時間に比例する。

雇用労働部は2022年度も雇用安定資金による支援を追加で実施することを示したが、2021年度の1.3兆ウォンから規模を縮小し、2022年度予算では0.5兆ウォンとした。また、コロナからの景気回復を考慮して支援期間を6カ月に短縮する予定である。

参考資料

  • 韓国最低賃金委員会ウェブサイトほか

参考図表

韓国の最低賃金の変遷(1988年~2022年) (単位:ウォン、%)
画像:参考図表

  • 資料出所:最低賃金委員会報道参考資料(7月13日付)

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