最高裁、ウーバーのドライバーを労働者と認める判決

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2021年4月

最高裁判所は2月、労働者としての法的権利をめぐってウーバー社とそのドライバーが争っていた事案で、ドライバーは労働者であるとの判断を示した。ウーバー社はこれを受けて、国内のドライバーを労働者とみなして最低賃金や企業年金などを適用するとの方針を示している。

管理の度合いから労働者と判断

ウーバー社は、ロンドンを中心に国内の複数の都市で配車サービスのアプリケーションによるプラットフォームを提供している。現在、イギリス国内でおよそ6万人(うちロンドンで4万5000人)がドライバーとして登録、予約制ハイヤーサービスに従事しているとされる。ウーバー社は、自社はアプリケーションの提供者であり、配車サービス自体は乗客との「契約」に基づいて、自営業者(independent company)であるドライバーが提供するものであり、ドライバーは同社の「顧客」であって雇用関係や委託関係等はない、との立場をとる。

これに対して、同社のドライバーが2016年7月、労働者(注1)としての権利を求めて雇用審判所に提訴した際の主張は、ドライバーにはサービスの提供において自営業者としての自律性は認められておらず、ウーバー社によるこうした規定は実態を反映していないというものだ。これには例えば、乗客が乗車するまで目的地は知らされず、目的地までのルートや料金も実質的にウーバー社側の主導で設定されていること、また乗客による評価システムや、配車依頼に対する諾否の比率などの管理を受け、要求水準に達しない場合にはペナルティ(アプリケーションの利用停止を含む)も設けられていること、あるいは乗客との連絡先の交換も禁止されていることなどが挙げられている。このため、労働者(worker)として、最低賃金の適用や有給休暇の付与などの雇用法上の権利を保証することを同社に要求、また関連して、アプリケーションにログインしてサービスを提供できる状態にある時間は労働時間として認めるよう求めていた。

ウーバー社は、ドライバーが他社でも働けること、サービス提供の可否やその種類を任意に決められることなどを挙げ、ドライバーは自営業者であるとの従来の立場を維持した。また、乗客を乗せている時間のみが労働時間であると主張していた。

雇用審判所は同年10月、ウーバー社が配車サービスの提供に中心的な役割を負っているとして、同社の主張を一蹴、ドライバーを労働者と認める判決を示した。また、労働時間についても原告側の主張を認め、アプリにログインしている時間について最低賃金を適用すべきであるとした。ウーバー社はこの結果を不服として、雇用控訴審判所、さらに控訴院に控訴したものの、いずれについても訴えを棄却され、最高裁に上告していた。

最高裁は2月、当初の雇用審判所の判断を支持し、ドライバーは労働者であるとする判断を示した。判決は、ウーバー社が料金、ドライバーとの間の契約内容、アプリを通じたドライバーによるサービスの提供、あるいは乗客とのコミュニケーションに至るまでを管理しており、ドライバーが自らの事業としてこれに従事しているとは言えない旨を指摘。労働者であるとの雇用審判所の判断が、たどり着きうる唯一の結論である、と述べている。また、いつ就業するかを自由に選択でき、就業していない間は何ら契約上の義務を負っていなくとも、就業している間には労働者あるいは被用者でありうる、としている。

裁判は今後、雇用審判所に戻り、労働者への補償額が決定される見込みだ。

現地報道によれば、ウーバー社は当初、この判決は2016年時点でアプリケーションを利用していたごく少数のドライバーに関するもの、としていたが、3月半ばには一転、国内のドライバーを労働者として扱うとの方針を発表した。ドライバーには、最低賃金や企業年金が適用され、また有給休暇相当として報酬の12.07%が2週間ごとに支給される見込みだ。ただし、賃金支払いの対象となる労働時間は、乗客を輸送している間のみに限るとしており、最高裁判決に必ずしも沿ったものではない。原告側ドライバーが代表を務める労働組合App Drivers & Couriers Unionは、乗客を輸送していない時間が除外されることで、本来ドライバーが得られるべき収入の4~5割が失われるとして、この内容は受け入れられない述べている。

参考資料

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