特殊形態労働従事者への雇用保険の適用拡大

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  • 国別労働トピック:2021年4月

雇用労働部は2021年2月15日の雇用保険委員会で、特殊形態労働従事者(契約の形式に関係なく労働者と類似の労務を提供しているにもかかわらず勤労基準法等が適用されない者)に対する雇用保険の適用拡大に関する方策(雇用保険適用対象職種、保険料率および分担比率、保険料算定および賦課方式、失業給付受給要件、出産前後給付支給要件等)を議決した。その概要は以下のとおり。

全国民雇用保険制度の実現に向けた議論

第四次産業革命と呼ばれるデジタル技術革新の進展に伴い、プラットフォーム労働やギク・エコノミーなどの新しい就業形態が登場・普及している。従属労働者と自営業者の境界がぼやけ労働の自営業化が進行し、不安定労働が拡大している。労働市場の変化に応じて、2つ以上の仕事を並行して行うことが普遍化し、個人の生涯においても、様々な雇用形態を経験する人々が増加している。こうした様々な形態の就業者を失業給付で保護するため、全国民を対象とした雇用保険制度の整備が重要な課題となっている。

韓国政府は2017年、特殊形態労働従事者・芸術家への雇用保険の適用拡大を国政課題に選定し、労使・専門家が参加する雇用保険制度タスクフォース(TF)および雇用保険委員会で議論してきた。

国会は2020年5月、芸術家に雇用保険の適用を拡大するための法案を可決し、2020年12月10日から芸術家に雇用保険が導入された。国内芸術家(17.8万人)のうち、過去1年間に芸術活動関連の契約締結経験がある者は7.5万人(42%)であり、これらの労働者が適用対象として想定されていた。

国会はまた、特殊形態労働従事者に雇用保険の適用を拡大するための法案を2020年12月に可決した。雇用労働部は今回の雇用保険委員会の議決に基づき、雇用保険法施行令を整備し、今後、立法予告、規制・法制審査等を経て、2021年7月から特殊形態労働従事者に雇用保険を導入する方針である。

特殊形態労働従事者への適用拡大

韓国労働研究院の2018年の調査によると、特殊形態労働従事者の規模は166万人である。このうち、労災保険が適用されている14職種を中心に検討し、保険設計士、クレジットカード・融資募集人、学習指導教師、家庭教師、宅配運転手、レンタル製品訪問点検員、家電製品配送運転手、訪問販売員、貨物運転手、建設機械従事者、放課後講師(小中学校などで放課後に行う授業を担当する外部の講師)は2021年7月から、クイックサービス(バイク便)、代行運転は2022年1月から雇用保険の適用を拡大する予定である。ゴルフ場のキャディーについては、所得把握体制の構築状況を考慮しながら、適用時期(2022年以降)を検討することとしている。

ただし、65歳以降に労務提供契約を締結した場合、大統領令で定めた所得基準(月報酬80万ウォン)を満たしていない場合等は、適用除外となる。低所得の特殊形態労働従事者に対する実質的な保護範囲を拡大するため、2022年1月から当事者が申請する場合は所得を合算できるようにする。

被保険資格の管理については、事業主が労務契約を行った従事者の被保険資格取得を届け出ることにより、被保険資格の変動・喪失を管理する。労働者、芸術家、労務提供者の間の被保険資格の二重取得を認める。労務提供者である2つ以上の職場における被保険資格の二重取得は認定するが、自営業者(任意加入)との二重取得は制限する。

賃金労働者の雇用保険料率は1.6%(労使折半)であるが、特殊形態労働従事者の保険料率は、失業給付と出産前後休暇給付のみが適用され、育児休職給付事業等が適用されないことを考慮して1.4%(労務提供者0.7%、事業主0.7%)に設定する。

保険料算定の基準となる報酬額は、所得税法上の事業所得とその他の所得から非課税所得・経費等を除いた金額である。保険料は賃金労働者と同様に月別に算定・賦課される。

労務提供プラットフォームを利用する場合は、プラットフォーム事業主に被保険資格の届出および保険料の源泉徴収・納付義務を課す。

失業給付の受給要件・受給内容

特殊形態労働受持者が失業給付を受給するためには、基準期間24カ月のうち、被保険者としての単位期間12カ月以上、労務提供者としての最低従事期間3カ月の寄与要件を充たす必要がある。複数の雇用形態に従事した者の場合、各雇用形態別従事期間の比率により寄与要件充足の有無を確認する。例えば、離職前24カ月間に特殊形態労働従事者として9カ月、賃金労働者として5カ月(有給労働日100日)働いた場合、両方の保険期間を合算して判断する。

離職事由については、重大な帰責事由による離職や被保険者の自発的離職等に該当する場合は、受給が制限される。季節的要因や手数料構造の変化等が所得変動に大きく影響する特殊形態労働従事者の実情を考慮し、直前3カ月の報酬が前年同一期間より30%以上減少した場合または離職した日が属する月の直前の12カ月間に前年月平均報酬より30%以上減少した月が5カ月以上ある場合は、所得の減少による離職事由が認定される。

待機期間は原則7日(失業届出日~失業給付の最初の支給日)であるが、所得の減少による離職の場合は、30%以上は4週間、50%以上は2週間である。

失業給付の水準は基礎日額(離職前12カ月間の保険料算定の基準となった報酬総額を該当期間の日数で割った金額。報酬算定が難しい場合は、雇用労働部長官が告示する基準報酬)の60%、上限額は賃金労働者と同じ1日66,000ウォンである。

支給期間は被保険者期間および年齢に基づき、賃金労働者と同じ120日から270日までとなる()。

表:特殊形態労働従事者の失業給付の支給期間
画像1:表

  • 出所:雇用労働部報道参考資料(2021年2月15日付)

失業給付受給期間中に所定労働時間が月60時間以上、週15時間以上または適用除外所得以上の特殊形態労働に従事した場合、支給が中止される。また、自営業活動を行った場合は、その期間の支給が中止される。

失業給付の減額基準は、最低賃金額の20%までの所得活動は減額せず、それを超える分は全額減額する。

出産前後給付の受給要件・受給内容

出産前後給付の受給要件は、①出産日前の被保険単位期間が3カ月以上であること、②出産日後12カ月以内に申請すること、③出産日前後の所定期間に労務を提供しないこと――である。賃金労働者との公平性等を考慮して受給期間中の所得活動を認めるが、所得活動許可基準は雇用労働部長官が告示する。

出産前後給付の支給水準は、出産日直前1年間の月平均報酬の100%、2021年の上限額は賃金労働者と同じ月200万ウォンである。支給期間は、出産前後を合わせて90日のうち所得活動を行わなかった期間である。

参考

  • 雇用労働部報道参考資料(2021年2月15日付)「『特殊形態労働従事者雇用保険細部適用方策』雇用保険委員会決議」(韓国語)
  • 雇用労働部報道参考資料(2020年12月23日付)「すべての就業者を失業給付で保護する全国民の雇用保険のロードマップ」(韓国語)

参考レート

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