雇用維持支援金制度の利用促進のための改善策

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  • 国別労働トピック:2021年4月

政府は2020年12月22日、雇用維持を目的とした「雇用維持支援金制度」の改善策を盛り込んだ「雇用保険法施行令」および「雇用保険法施行規則」を閣議決定し、2021年1月1日から施行した。雇用維持支援金制度の利用障壁を最小限にし、より簡単に活用できるよう改善することを目的としている。

雇用維持支援金制度の概要

雇用維持支援金は、一時的経営難により雇用調整が避けられなくなった事業主(在庫量50%増加、生産量・売上高15%以上減少)が休業・休職等の雇用維持措置を実施する場合、人件費の一部を支援する制度である。有給雇用維持支援金と無給雇用維持支援金の2種類がある。

有給雇用維持支援金の支援要件は、休業の場合は被雇用保険者の全所定労働時間合計の20%を超える労働時間の短縮、休職の場合は1カ月以上の休職付与――である。

無給雇用維持支援金の支援要件には、以下の2つがある。「無給休業」の場合は、①30日以上実施、②被雇用保険者のうち一定規模以上(19人以下:50%以上、99人以下:10人以上、100~999人:10%以上、1,000人以上:100人以上)の無給休業実施、③労働委員会の承認――である。「無給休職」の場合は、①30日以上実施、②被雇用保険者のうち一定規模以上(99人以下:10人以上、100~999人:10%以上、1,000人以上:100人以上)の無給休職実施、③無給休職実施前の1年以内に3カ月以上(特別雇用支援業種は1カ月以上)の有給休業または被雇用保険者の20%以上の休職実施、④労働者代表との合意――である。

雇用維持支援金の支援金額は、表1のとおりである。

表1:雇用維持支援金の支援金額
画像1:表1

  • 出所:雇用労働部報道資料(2020年12月22日付)「社会的弱者解消等のための雇用維持支援制度の開設」を基に作成。

雇用維持支援金の申請手続きは、表2のとおりである。

表2:雇用維持支援金申請手続き
画像2:表2

  • 出所:雇用労働部報道資料(2020年12月22日付)「社会的弱者解消等のための雇用維持支援制度の開設」を基に作成。

新型コロナウイルス感染症の影響による雇用ショックを緩和するため、政府は雇用維持支援金の支援要件の緩和、支援水準の引き上げなどの制度改善策を実施してきた(表3)。その結果、2020年12月10日現在、7万1,000社余りの企業の76万人(延べ217万人)に対し、2兆1,000億ウォンの雇用維持支援金を支給した。

表3:新型コロナウイルス対応関連支援制度改善事項(2020年)
画像3:表3

  • 出所:雇用労働部報道資料(2020年12月22日付)「社会的弱者解消等のための雇用維持支援制度の開設」を基に作成。

政府また、各地の雇用センター(雇用労働部傘下の公共職業紹介機関)に「雇用安定現場支援タスクフォース」を設置し、雇用維持の困難に直面する企業を重点管理現場に選定して、当該企業が雇用維持関連支援制度を活用できるようコンサルティングを行ってきた。しかし、派遣・サービス労働者、従業員10人未満企業等は依然として制度の利用が困難であったため、中小企業中央会等の関連団体から制度改善の要望があがっていた。これを受けて、政府は、雇用維持支援金制度をより簡単に活用できるよう、2021年1月1日付で「雇用保険法施行令」および「雇用保険法施行規則」を改正した(表4)。

表4:雇用維持支援金・無給休職支援金変更事項(2021年1月1日~)
画像4:表4

  • 出所:雇用労働部報道資料(2020年12月22日付)「社会的弱者解消等のための雇用維持支援制度の開設」を基に作成。

派遣・サービス労働者に対する支援強化

雇用維持支援金は、事業または事業場単位で雇用維持措置を実施する場合に支援を行うものである。このため、所属労働者を様々な事業場に分散勤務させている派遣・サービス会社に対する支援は難しかった。また、派遣労働者は派遣契約満了等による労働契約終了が頻繁にあるが、雇用維持支援金の支援を受けた企業は、雇用維持措置終了日以降1カ月間、当該事業場のすべての労働者の雇用を維持する必要がある。この減員防止期間が定められている点も制度の活用を難しくしていた。

今回の施行令改正により、派遣労働者等を使用する事業場が所属労働者を対象に労働時間の短縮または有給休職を実施する場合、派遣会社は別途雇用調整の不可避性を立証することなく、当該事業場に勤務する派遣・サービス労働者を対象に雇用維持措置を実施することができるようになった。1カ月の減員防止期間も雇用維持措置を実施した労働者に対してのみ適用される。例えば、派遣会社がA、B、Cの3つの事業場に労働者を派遣しているとして、A事業場において所属労働者を対象に雇用維持措置が実施された場合、A事業場に勤務する派遣労働者に対しては派遣会社が雇用維持措置を実施することができ、当該労働者に対してのみ減員防止期間を遵守すれば支援を受けることができるようになった。

雇用維持措置計画の事後届出期間の延長

雇用維持支援金の支援を受けるためには、原則、雇用維持措置計画(労働時間の短縮および労働者の休職計画)を雇用維持措置実施の1日前までに雇用センターやインターネット(雇用保険サイト)を通じて届出する必要があり、やむを得ない場合も3日以内に届出することとされている。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、急に休業した場合などは、3日以内の届出が困難な場合があった(特別災害地域に宣言された地域の場合は、例外として、20日以内)。

今回の施行令改正により、国および自治体の命令により休業する場合や特別災害地域に宣言された地域の場合は、例外として、30日以内に事後届出ができるよう届出期間を延長した。

無給休職支援金の活用度の向上

従業員10人未満の企業は従来、無給休職支援金の支援対象ではなかった。

今回の施行令改正により、10人未満の企業も有給雇用維持支援金の支援期間(180日)が満了した場合は、無給休職雇用維持支援金の支援を受けることができるようになった。ただし、この措置の有効期間は2022年12月31日までに限定され、状況によって延長措置を検討することとされた。

また、無給休職雇用維持支援金の支援を受けるためには、無給休職実施前1年以内に有給休業(労働時間の20%超の短縮)を3カ月以上実施する必要があった。施行令改正後は、従来の要件に加えて、被雇用保険者の20%以上が有給休職を3カ月以上実施した場合も支援要件を満たしたものとみなし、無給休職支援を行うことができるようになった。

事業主の支援認定要件の緩和

雇用維持支援金の支援を受ける事業主は従来、生産量・売上高が前年同月、前年月平均または直前3カ月平均と比べて15%以上減少していることを立証する必要があった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年に生産量・売上高の減少傾向が続いた事業主は、2021年に雇用維持支援金の支援を受けようとしても、前年比生産量・売上高15%減少の要件を満たすことが難しい場合が想定される。

今回の施行令改正により、2020年と比較して支援要件を満たしていない場合でも、2019年平均または2019年同月と比較して生産量・売上高が15%以上減少している場合は、支援が必要な事業主として認定されることとなった。

労働時間短縮の認定要件の変更

労働時間を短縮する雇用維持措置により、雇用維持支援金の支援を受けようとする事業主は、雇用維持措置を実施する6カ月前から4カ月前までの3カ月間の月平均労働時間の20%を超える労働時間を短縮しなければならない。しかし、小規模企業の場合、それを立証する証拠書類を提出することが困難な場合があった。

今回の施行令改正により、所定労働時間を基準に労働時間を短縮するよう算定基準を変更した。事業主は、証拠書類として、所定労働時間が明示されている就業規則、団体協約、労働契約書等のみを提出すれば良いこととされた。ただし、残業が反復的に定常化している企業の場合は、直前3カ月の月平均労働時間を基準として労働時間を短縮することができる。

参考

  • 雇用労働部報道資料(2020年12月22日付)「社会的弱者等のための雇用維持支援制度の開設 ―「雇用保険法施行令」一部改正案国務会議議決」

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