インフラ整備で景気回復と雇用創出を図る
―中期支出計画
政府は11月、今後の新型コロナウイルス対策やインフラ整備による景気回復等の方針を盛り込んだ中期支出計画を公表した。就業支援策としては、新たな長期失業者向け支援プログラムの導入や、先に実施が開始された若年層を中心とした支援策の拡充などが、方針として示されている。一方、企業向け賃金補助などの支援策は、年度末で終了の見込みだ。
新たに長期失業者の就業支援策
中期支出計画(Spending Review)は、通常の年度予算とは別途、複数年の支出総額に上限を設けることを目的に実施されるもの。ただし今回については、新型コロナウイルスへの対応に関する不確実性を理由に、複数年の上限額は設定されず、次年度以降の方針を示す内容となっている。
計画の策定に際して経済、財政の見通しを政府に提供する予算責任局(Office for Budget Responsibility)は、2020年の経済成長率についてマイナス11.3%と予測、300年来の経済の縮小規模であるとしており、2021年以降は回復に転じるとみられるものの、感染拡大以前(2019年第4四半期)の水準に戻るためには、2022年第4四半期までを要するとみている。この間、失業者数は2021年には260万人(6.8%)に達する見込みである。なお、10月に終了が予定されていた雇用維持スキームを2021年3月まで延長したことで、およそ30万人分の雇用が保護された、とOBRは試算している。
今回公表された中期支出計画の柱の一つ、新型コロナウイルス関連の主な項目として挙げられているのは、感染対策(感染検査や防護装備、ワクチンの調達等)、ひっ迫する公的サービスへの補助(公的医療、地方自治体によるホームレス支援等のサービス、公共交通機関等)、並びに就業支援である。このうち、就業支援については、新たに「リスタート」と呼ばれるプログラムの導入が掲げられている。12カ月以上失業状態にある求職者を対象に就職支援を行うもので、3年間で29億ポンドを投じ、100万人の支援を目標としている。加えて、7月に公表された「雇用のためのプラン」(Plan for Jobs)に基づいて、9月から導入している「キックスタート・スキーム」(失業リスクの高い25歳未満層を就業体験のために6カ月間受け入れる企業に、週25時間分の最低賃金相当額および社会保険料等を支給)についても、既に予算措置されている20億ポンドに、16億ポンドを追加する方針だ。2021年度中に、25万人超への支援の提供が目標とされている。また、ジョブセンタープラス(公共職業紹介機関)の体制の拡充にも14億ポンドを充てるとしている。一方で、雇用主に対する賃金補助や給付の一時的増額など、影響を受ける世帯の所得を補助する対策の多くは、2021年3月をもって終了が予定されており、翌年度以降の予算は措置されていない。
もう一つの柱は、インフラ整備を通じた景気回復と雇用創出だ。中期支出計画と併せて公表された「インフラストラクチャー戦略」は、継続的なインフラ整備のプランを提示、住宅や鉄道、ブロードバンド網の増強や環境対策などを掲げている。これに沿って、次年度には1000億ポンドあまりの支出が予定されている。また、地方自治体における新たな道路や鉄道の敷設、住宅建設などの事業に向けた40億ポンドの「レベリング・アップ基金」を設置し、自治体からの申請により補助を行うとしている。政府は一連の施策により、数十万人分の雇用の維持・創出を見込んでいる。
資料出所
- Gov.uk
、UK Parliament
、The Guardian
ほか各ウェブサイト
参考レート
- 1英ポンド(GBP)=140.00円(2021年1月6日現在 みずほ銀行ウェブサイト
)
2021年1月 イギリスの記事一覧
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