2021年の最低賃金引き上げ率は1.5%

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最低賃金委員会は2020年7月14日、2021年1月から適用される最低賃金を現行より130ウォン(1.5%)引き上げ、時給8,720ウォンとすることを決議した。雇用労働部長官は8月5日、最低賃金委員会の決定どおり2021年の最低賃金を定めることを告示した。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、1988年の最低賃金制度創設以降、最低の引き上げ率で決着した。

使用者委員は業種別区分の適用を要求

韓国の最低賃金法では、雇用労働部長官の要請に基づき最低賃金委員会が最低賃金案を審議・議決し、労使団体による異議申し立て期間を経て、雇用労働部長官が毎年8月5日までに翌年1月1日から適用される最低賃金を定めることとされている。

公労使各9人、合計27人の委員で構成される最低賃金委員会は、2021年適用の最低賃金について審議するため、2020年6月から7月にかけて9回の全体会議を開催した。

第3回全体会議(6月29日)において、使用者委員は最低賃金の適用区分に関し、業種別区分を定めて適用するよう主張し、支払能力が低い1つか2つの業種だけでも試験的に業種別区分を導入するよう提案した。これに対し、労働者委員は、業種別区分の適用は階層間の対立や二極化を助長するものであり、納得しがたいとする反対意見を提示した。27人の委員全員が出席する中、この案に関する採決が行われ、14人が反対して否決された。これにより、2021年の最低賃金は、従来どおり、すべての業種について同じ最低賃金を適用することとされた。

労使の当初要求案に18.5%の開き

第4回全体会議(7月1日)において、使用者委員は、新型コロナウイルスの影響による経済危機で2020年の経済成長率がマイナスに落ち込むと予想される中、最近の最低賃金の高率引き上げや新型コロナウイルスの衝撃による中小企業・小規模事業者の経営環境および雇用状況の悪化を理由に、当初案として最低賃金を180ウォン(2.1%)引き下げ、時給8,410ウォンとするよう要求した。他方、労働者委員は、最低賃金制度の根本的趣旨は、低賃金労働者の生活安定と二極化の解消であり、低賃金層の格差是正のため最低賃金の継続的引き上げが不可欠であることを理由に、最低賃金を1,410ウォン(16.4%)引き上げ、時給10,000ウォンとするよう要求した。

第6回全体会議(7月9日)において、使用者委員は時給8,500ウォン(現行比1.0%減)、労働者委員は時給9,430ウォン(現行比9.8%増)の第1回修正案をそれぞれ提示した。労働者委員7人のうち5人は、使用者委員の最低賃金引き下げ提案が撤回されない限り議論を継続できないと主張して、使用者委員が修正案を提示する前に退席した。

第3回修正案提示後も労使の溝は埋まらず

韓国全国民主労働組合総連盟(民主労総)所属の労働者委員全員(4人)が欠席する中、第8・9回全体会議(7月13日・14日)が開催され、労使の要請により、公益委員が下限8,620ウォン(0.35%増)、上限9,110ウォン(6.05%増)の審議促進区間を提示した。下限の0.35%は2020年第1四半期の消費者物価上昇率、上限の6.05%は類似労働者の賃金と生活費の上昇率をそれぞれ考慮して算定されたものである。これを受けて、使用者委員は、公益委員の示した審議促進区間の下限と同じ時給8,620ウォン(現行比0.35%増)、労働者委員は上限と同じ時給9,110ウォン(現行比6.05%増)の第2回修正案を提示した。

労働者委員は、過去の経済危機(通貨危機、金融危機)の時も2%台後半の最低賃金引き上げを決定しており、ドイツでも最近、今後2年間で11.8%の最低賃金引き上げを決定していると主張した。使用者委員は、現在は最低賃金水準が既に高く中小企業等の支払能力を超えており、新型コロナウイルスは実体経済の危機と金融危機を同時に引き起こしていると強調した。

その後、労使双方は第3回修正案の提示を求められ、使用者委員は時給8,635ウォン(現行比0.52%増)を提示し、労働者委員は第2回修正案と同額の時給9,110ウォン(現行比6.05%増)を維持した。しかし、第3回修正案提示後も労使の要求案の隔たりを埋めることはできなかった。

公益委員の1.5%引き上げ案を議決

労使双方は合意の上、公益委員に対し単一案の提示を要請した。公益委員は、2020年の経済成長率見通し(0.1%)、2020年の消費者物価上昇率見通し(0.4%)および労働者の生計費の改善分(1.0%)を反映した、時給8,720ウォン(現行比1.5%増)の統一案を提示した。この提案を不服として、韓国労働組合総連盟(韓国労総)所属の労働者委員全員(5人)と使用者委員の一部(2人)が退席した。在籍委員27人のうち16人が出席する中、公益委員統一案に関する採決が行われ、賛成9人、反対7人で可決された(表1)。これは、現行の最低賃金(時給8,590ウォン)から130ウォン引き上げ、時給8,720ウォン、月換算(週40時間、有給週休時間(注1)を含む、月209時間)で1,822,480ウォン(前年比27,170ウォン増)とするものである。新型コロナウイルス感染症の拡大による企業業績の悪化を考慮し1988年に最低賃金制度が創設されて以降、最も低い1.5%の引き上げ率となった(図1)(表2)。

雇用労働部は7月20日から30日まで労使からの異議申し立て期間を設けたが、双方とも申し立てを行わなかった。雇用労働部長官は2020年8月5日、最低賃金委員会の議決どおり、2021年適用最低賃金を定めることを告示した。

表1:2021年最低賃金労使委員提示案(単位:時給、ウォン)
画像:表1

注:(  ) は前年比引上げ率

出所:韓国最低賃金委員会発表資料(2020年7月14日付)

図1:最低賃金の推移
画像:図1

出所:韓国最低賃金委員会発表資料(2020年7月14日付)

表2:最低賃金引き上げ水準
画像:表2

出所:韓国最低賃金委員会発表資料(2020年7月14日付)

参考

  • 韓国最低賃金委員会ウェブサイト

参考レート

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