破棄院、ウーバーと運転手の間に雇用関係を認める判決

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  • 国別労働トピック:2020年7月

スマートフォンのアプリを用いた配車サービスを提供するウーバー社とその元運転手の間で雇用関係を争う裁判の破棄院(最高裁)判決が、2020年3月4日に下された。雇用関係にはないと主張するウーバーに対して、運転手は独立自営労働者とみなすことはできず、雇用労働者であると認める判決だった。

労働裁判所では雇用関係はないと判断

2016年10月からウーバーのプラットフォームを用いて就労していた運転手は、17年4月になってアプリへのアクセスができなくなり、顧客紹介がなされなくなった(注1)。ウーバーによるアカウント凍結を不当だとして、運転手は17年6月、労働裁判所に提訴した。これに対して労働裁判所は、元運転手とウーバーが雇用関係にはなく、商業裁判所で審理すべき事案であると判断を示した。その後、19年1月にはパリ控訴院の判決が下され元運転手との雇用関係が認められたものの、ウーバーはこれを不服として上告、破棄院の判決が注目されていた。

顧客管理、価格設定の権利がないウーバーの運転手

3月4日に下された破棄院判決で雇用関係の判断材料としたのは、運転手による自己管理の度合いである。17年4月以降の両者の関係には、通常の自営業者が持ちうる権利がないと判断した。自営業者は通常、自ら顧客を管理し、価格を設定し、業務実行の仕方を決定するが、この全ての点について運転手は要件を満たしていないと判断した。

運転手側の主張によれば、配車の依頼が届いた時点では目的地を知らされておらず、行先によって乗車受諾の可否を決定できなかった。目的地に到達する最適なルートを自由に選択することはできず、受諾を3回拒否した場合、ウーバーはアカウントへアクセスできないようにすることができた。

また、ウーバーのアプリを使用する運転手は、自分自身の特定の顧客をもつことはなく、運転手が価格を自由に設定することもできない上に、ウーバーによって決定された輸送するルートに従わない場合、価格改定が適用された。こういった条件を踏まえて、運転手はウーバーに対して従属的な関係にあり、雇用関係があると判断した。

フードデリバリーサービスTEEの判決との相違

2018年11月28日の破棄院判決も、フードデリバリーサービスのテイク・イート・イージー(TEE)のプラットフォームで就労していた労働者に関して、雇用関係を認める内容だった。だが、このケースはウーバーとは異なり、TEEが配達員の位置情報をリアルタイムで把握し、アプリへの接続状況と配達依頼の諾否等の就労状況に基づいてペナルティを科す体系化された制裁システムがあったために、厳重な管理・監督を行っていたとみなされた。また、職務遂行中の事故に対する労災認定がされず、療養期間中に無収入だったという境遇が裁判官の心証に影響を与えたとされている。そのため、一般的なプラットフォーム就労者のケースではなく、他のプラットフォームの就労関係に影響する可能性は小さいとされた。しかし、今回の判決は他のプラットフォームの就労条件に共通するケースと言えるため、同種の提訴が今後増える可能性がある(注2)

雇用契約を要望する運転手は僅かと主張するウーバー

ウーバー側はプラットフォームを介する就労形態の「独立性」と「柔軟性」の強調する姿勢を崩さない。ウーバーが行った調査では、雇用契約を要望する運転手は0.2%だったことを踏まえて、今回の破棄院判決は、多くの運転手がウーバーの意向を反映していないとする(注3)。過去2年間に運転手に裁量を与え、社会保障、福利厚生などの充実など改善に取り組んできたと主張している。

モビリティー法における「憲章」制定の規定との関係

19年12月に成立したモビリティー法(注4)において、プラットフォーム運営会社は、利用者(就労者)との間の条件を規定する「憲章」を制定することによって、雇用関係を問われなくすることができる規定が設けられた。ただ、憲法院の判断では、プラットフォームが労働法の範囲を超えて憲章を規定することはできないとした上で、憲章の制定だけをもって雇用関係の有無が決まるわけではなく、個々のケースは裁判所で判断がなされるべきであるとしている(注5)

(ウェブサイト最終閲覧:2020年7月20日)

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