OECD、新型コロナウイルス封じ込め対策に伴う初期の経済的影響分析を発表
経済協力開発機構(OECD)は2020年3月、新型コロナウイルスに関するG20首脳テレビ会議のために、新たな国際経済の展望「経済活動におけるコロナウイルス封じ込め対策の初期的な打撃の評価(Evaluating the initial impact of COVID-19 containment measures on economic activity)」を発表した。この発表をもとに、アンヘル・グリアOECD事務総長はG20首脳に対し、より強固な経済財政政策を求める声明を発表した。以下、発表と声明の概要を紹介する。
GDPが短期間に減少―小売り・卸売り、専門サービス・不動産業の停止が大きな要因
OECDの新たな予測によれば、厳格なコロナウイルス封じ込め措置は、G7(主要経済国)のGDP(国内総生産)の減少を短期間に引き起こす(注1)。ロックダウン(都市封鎖)は主要経済圏のGDPの最大3分の1に直接影響を及ぼすこととなり、措置が1カ月続くごとにGDP成長率は2%低下することになる。このようなGDPの減少は、リーマン・ショックによる世界規模の金融危機で経験した数値をはるかに上回る。
G7における打撃の大部分は、小売り及び卸売り、専門サービス及び不動産の商業的活動の停止が要因である(図1)。これらのサービス業は移動制限とソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の問題から、明らかに悪影響を受ける。とりわけ、観光業の産出の減少分は70%に上る。
図1:一部または完全な操業停止がG7の経済活動に与える潜在的な初期の影響
出所:OECD
国ごとに産出の構成要素に違いがあるため、各国間でGDP成長率の減少推定値に差がある。観光業が比較的重要な国の多くは、国境封鎖や移動制限によって、より深刻な影響を受ける可能性がある。一方、農業や石油生産を含む鉱業の規模が比較的大きい国では、封じ込め措置による初期の影響は小さい可能性があるが、その後の世界的な商品需要の減少によって生産高は打撃を受けることとなる。
個人消費の冷え込み ―特にホテル、レストラン、旅行にかける消費が大幅に減少
また、コロナウイルス封じ込め措置の影響は、消費者の支出低下も招く(図2)。主要先進国の多くではロックダウン実施後、個人消費は3分の1にまで落ち込む。閉店や移動制限によって衣料品などの支出が完全に削減され、車の購入や美容院など、消費者と企業が直接の接点を持つ消費も先送りされる可能性が高い。また、ホテル、レストラン、旅行にかける消費は大幅な減少が予想される。一方、生活必需品を含むその他の支出は横ばいの予想となった。
図2:一部または完全な操業停止がG7の個人消費に与える潜在的な初期の影響
出所:OECD
経済的打撃の軽減に向け、G20に協調行動を要請
アンヘル・グリアOECD事務総長は、こうした経済的な打撃を軽減するために、G20諸国の首脳に早急に下記の取り組みを行うよう提案している。
- 医療制度と疫病システムを資本増強する。
- 金融・財政・構造政策における全てのマクロ経済的手段を動員する。
- 必要な医療物資の供給について、既存の商業規制を取り除く。
- 脆弱な開発途上国、低所得国を支援する。
- 労働者及びすべての人々、とりわけ最も脆弱な人々を支援するために最良な実践(ベストプラクティス)を共有し実施する。
- 企業、とりわけ中小企業を危機から脱するよう支援する。観光業界のような、最も影響を受けている業界に特別支援を行う。
注
- 初期の影響のタイミングは封じ込め措置の期間や程度によって、ばらつきがあることが予想される。(本文へ)
参考資料
- OECD資料 Evaluating the initial impact of COVID-19 containment measures on economic activity.
- OECD(26/03/2020) New OECD outlook on the global economy.
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