男性の育児休業の取得、過去最高の35.8%
2019年の連邦統計局資料によると、2015年生まれの子の父親が育児休業を取得した割合は過去最高35.8%であった。前回より1.6ポイント上昇し、3人に1人以上の父親が取得していた(注1)。
父親の2人に1人が取得する州も
父親の育児休業取得率を州別の内訳で見ると、最も取得率が高かったのはザクセン州の46.7%で、ほぼ2人に1人が受給していた。逆に、最も低かったのはザールランド州の24.4%で、地域によって差が見られた。なお、同じ子に対する母親の平均取得割合は95%で、地域差はそれ程見られなかった (表1)。
表1:2015年生まれの子に関する父母の両親手当受給状況(州別)
出所:連邦統計局(2019年)
「両親手当」、「両親手当プラス」の導入
ドイツは2007年に「両親手当(注2)」を導入し、それ以前は3%に過ぎなかった父親の育児休業取得率が、20.8%(2008年生まれの子に対する取得率)に上昇した。その後は、23.6%(同2009年)、25.3%(同2010年)、27.3%(同2011年)、29.3%(同2012年)、32.0%(同2013年)、34.2%(同2014年)と伸び続け、今回35.8%(同2015年)に達した。
「両親手当」は、片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給される。もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。追加の2カ月分は「パートナー月」と呼ばれ、もう1人の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツでは、この受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が育児休業を取得して両親手当を受給するケースが多い。
2015年には、制度の柔軟性をさらに高めた「両親手当プラス」が導入された。従来は、両親手当受給期間中に早期に職場復帰をして週30時間以内の時短勤務をした場合、そこで得た収入の分だけの両親手当の受給額が減る仕組みだった。「両親手当プラス」は、時短勤務で得た収入を減らすことなく手当を受給できる仕組みを整え、早期の復職を希望する親を支援している。新制度ではパートナー月を含めて受給月額を半額にすると最長28カ月まで受給期間を延長できる。さらに、母親と父親双方の育児と仕事への関与を促すため、両親が同時に4カ月間、週25~30時間の幅で働くと、パートナーシップボーナスとしてさらに4カ月が追加される。
新制度導入により、約3年ぶりの数値更新
上述の「両親手当プラス」の導入によって、2015年7月1日以降に子供が生まれた親は、「両親手当」や「両親手当プラス」を利用しつつ、希望に応じた柔軟な働き方や育児への関与が選べるようになった。また、新制度のもとで1人の子に対する手当の最長受給期間が3年近く延びたため、前回(2016年)から3年ぶりの数値発表となったが、父親の育児への関与がさらに進んでいることが確認された。
注
- 本稿の育児休業取得率は、両親手当の受給率である。日本とは、制度・定義・算出方法が異なる点に留意されたい。(本文へ)
- 「両親手当(Elterngeld)」は、育児のために休業もしくは部分休業(週30時間以内の時短勤務も受給可能)をする親の所得損失分の67%を補填する制度である。2007年以前は「育児手当(Erziehungsgeld)」(定額制)があったが、原則300ユーロ(月額)と少額で、多くの親には効果的な所得保障とならず、そのため一家の稼ぎ手であることが多い父親の育休取得の困難さなどが指摘されていた。「両親手当」はこのような課題を解決し、育児期の働く親を支援する目的で導入された。(本文へ)
参考資料
- Destatis、BMFSFJサイトほか。
参考レート
- 1ユーロ(EUR)=117.72円(2020年4月7日現在 みずほ銀行ウェブサイト)
関連情報
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:掲載年月からさがす > 2020年 > 4月
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:国別にさがす > ドイツの記事一覧
- 海外労働情報 > 国別労働トピック:カテゴリー別にさがす > 労働法・働くルール、労働条件・就業環境、勤労者生活・意識
- 海外労働情報 > 国別基礎情報 > ドイツ
- 海外労働情報 > 諸外国に関する報告書:国別にさがす > ドイツ
- 海外労働情報 > 海外リンク:国別にさがす > ドイツ