職業訓練生の協約手当
 ―職種、地域によって大きな差

カテゴリー:若年者雇用非正規雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2020年1月

現在、多くの若者が実務と座学を並行して行う職業訓練(デュアルシステム)に参加している。このような職業訓練生(Azubi)に対する最低訓練手当(月額515ユーロ)が、2020年から導入される見込みだ。2019年時点の職業訓練生の協約手当(訓練初年度)の多くは、月額515ユーロを超えていたが、職種や地域によって、3倍以上の差が見られた。以下に詳しく見ていく。

月額325ユーロから1037ユーロまで

ハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)は、各地で締結された様々な職種(あるいは業種)の労働協約賃金に関するデータ収集と分析を行っている。それによると、2019年の主な職業訓練生の協約手当(訓練初年度)は、図表1の通りであった。最も高額だったのは、バーデン・ビュルテンベルク州の金属・電気産業で月額1037ユーロであった。逆に最も低額だったのは、ブランデンブルク州の美容師で、同325ユーロであった。

また、同じ職種でも地域によって差があり、例えば自動車整備士の場合、バーデン・ヴュルテンベルク州では月額819ユーロだったが、テューリンゲン州では月額650ユーロとなっていた。

図表1:職業訓練生の協約手当 事例 (訓練初年度の月額、2019年)
画像:図表1

出所: WSI Tarifarchiv(2019)

2年~3年半続く職業訓練

 「職業訓練生(Azubi)」は、実務と座学を並行して行う二元的な訓練制度(デュアルシステム)の枠内で学ぶ者が多い。約350ある職業訓練職種のうち、男性は自動車や機械、電気などの技術職、女性は小売りや事務などのホワイトカラー職種を希望する者が多い。訓練内容は、企業における実務が週3~4日、職業学校における座学が週1~2日と、実務の比重が大きい。企業と訓練生は「職業訓練契約」を締結し、期間中は訓練手当(月額)が支給され、社会保障の対象にもなる。訓練内容は法律で規定されており、期間は職種や受講生の保有資格によって2年~3年半、最終試験に合格すると訓練修了資格が取得できる。

最低訓練手当、2020年に導入

職業訓練生は、労働者に適用される最低賃金の適用対象外である(2020年の最低賃金時給は9.35ユーロ)。また、訓練生の中には、採用の保障がない中で、既述の通り、数年にわたり非常に低い手当で働く者もいる。政府は、あまりに低すぎる訓練手当の改善を目的として、2020年から最低訓練手当の導入を計画している。すでに関連の職業教育訓練法(BBiG)改正案が議会に提出され、連邦議会(下院)で10月24日に可決された。順調にいけば、職業訓練生の最低訓練手当は、2020年に月額515ユーロ、2021年に同550ユーロ、2022年に同585ユーロ、2023年に同620ユーロへと、4年かけて段階的に引き上げられる予定である。さらに、訓練年数に応じて、訓練2年目に18%、3年目に35%の上乗せ手当が加算される(注1)

11.5万人の訓練生に影響か

協約手当の分析を行ったWSIのトーステン・シュルテン上級研究員は報告書の中で、「職業訓練生の協約手当の多くは月額515ユーロを超えているが、問題は、労働協約を締結していない訓練生や旧東独地域の小規模・零細事業主のもとで働く訓練生である。最低訓練手当の導入はこれらの訓練生の待遇改善につながるだろう」としている。

報道(handwerk.magazin)によると、最低訓練手当の導入は、長期的に訓練生11.5万人に影響を及ぼすと考えられている。同時に、待遇改善による訓練途中のドロップアウトの減少も期待されている。

参考資料

  • Böckler Impuls Issue 13/2019,handwerk.magazin(25.10.19)ほか。

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