配偶者出産休暇の法定有給日数を3日から10日に拡大

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  • 国別労働トピック:2019年12月

韓国政府は2019年10月1日、配偶者出産休暇及び育児期労働時間短縮に関する制度を拡充する改正法を施行した。これにより、男性は配偶者の出産時、10日の有給休暇を取得することができるようになった。政府は、今回の制度改善で男性の育児参加がより活性化し、社会全般で共にケアする文化が普遍的に拡散していくことを期待している。

母性保護及び育児支援に関する制度の概要

 韓国の使用者は、勤労基準法に基づき労働者に90日の産前・産後休暇(最低45日は産後)を与えなければならない。そのうち60日分は事業主から賃金が支給される有給休暇である。残りの30日分は、雇用保険被保険者期間が180日以上あるなど、一定の要件を満たす場合、雇用保険から180万ウォンを上限に出産後休暇給付金が支給される。今回の改正法施行前、男性労働者は配偶者が出産した日から30日以内に配偶者出産休暇を5日(3日は有給、2日は無給、分割不可)の範囲内で取得できた。

男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律(男女平等法)に基づき、満8歳以下又は小学校2年生以下の子を養育する労働者は、育児休職をすることができる。休職期間は、両親ともに、子ども1人当たりそれぞれ1年以内であるが、同一の子に対して両親が同時に給付金を受給することはできない。

育児休職を開始する日以前に雇用保険の被保険者期間が180日以上あるなど、一定の要件を満たす場合、雇用保険から賃金の50%(月額下限70万ウォン~上限120万ウォン)の育児休職給付金が支給される。2017年9月から、最初の3カ月間の給付金は、賃金の80%(月額下限70万ウォン~上限150万ウォン)に引き上げられた。

2014年10月から、父親の育児休職促進のため、「父親育児休職ボーナス制」(「父親の月」)が導入され、同一の子に対して両親が順番に育児休職する場合、後に育児休職する者の最初の3カ月の育児休職給付金を賃金の100%(現行上限250万ウォン)に引き上げた。

2008年6月から育児休職の代わりに、労働時間を週15~30時間に短縮する育児期労働時間短縮制度(使用期間は、育児休職と合せて1年以内)が導入され、2011年10月からは短縮時間に対して給付金(現行は賃金の80%)が支給されている。

男性の育児休職給付金受給者が増加傾向

韓国雇用情報院のレポート「男性育児休職給付金受給者の増加現況」によると、2014年から2018年までの5年間の男女別育児休職給付金受給者の推移は、依然として女性の受給者が大部分を占めているが、男性の受給者の割合が増加し、2018年は17.8%に達した。2018年の男性の育児休職給付金受給者数は17,662人(前年比5,620人増)で、最近は増加幅が拡大している。仕事と家庭の両立支援政策や社会全体の認識変化、育児休職給付金の支給水準引き上げ、父親育児休職ボーナス制の導入などの影響で増加したものとみられている。

男性の育児休職給付金受給者を年齢階層別にみると、2018年は30~34歳層が49.7%、35~39歳層が28.9%と30代が大部分を占めている(表1)。2016年以降、35歳以上の受給者の割合が増加しているが、人口減少の影響で34歳以下の受給者の割合は減少している。

表1:男性の年齢階層別育児休職給付金受給者の割合(単位:人、%)
画像:表1

注:()は男性育児休職給与の受給者全体の人数(人)

出所:韓国雇用情報院、雇用保険DB

事業所規模別の男性受給者の割合をみると、2018年は1,000人以上の事業所が44.0%と最も高く、5人未満の事業所が5.9%と最も低い。ただし、1,000人以上の事業所の受給者の増加幅が減少し、中小企業事業者の受給者の増加幅が拡大する傾向にある(表2)。

表2:男性の事業所規模別育児休職給付金受給者の対前年比増減数及び増減率(単位:人、%)
画像:表2
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注:()は前年対比増減率

出所:韓国雇用情報院、雇用保険DB

産業別では、製造業(33.9%)、卸売・小売業(12.9%)、出版・映像・放送通信及び情報サービス業(9.1%)、専門科学及び技術サービス業(8.3%)の順に男性受給者の割合が高い(図1)。規模の大きい産業から小さい産業へ男性育児休職給付金の受給者が徐々に拡大していく傾向がみられる(表3)。

図1:男性の産業別育児休職給付金受給者の割合(2018年)
画像:図1

出所:韓国雇用情報院、雇用保険DB

表3:男性の産業別育児休職給付金受給者の対前年比増減数及び増減率(単位:人、%)
画像:表3
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注:1.第9次韓国標準産業分類に従う。
2.()は前年対比増減率である(%)。
3.割合が2%未満である農林漁業、工業、電気ガス蒸気及び水道事業、下水・廃棄物処理原料再生及び環境復元業、不動産及び賃貸業、教育サービス業、国際及び外国機関はその他に分類。
4.分類不能は表記していないため各セルの合計が全体数値と一致しない場合がある。

出所:韓国雇用情報院、雇用保険DB

配偶者出産休暇の拡大と中小企業支援策の新設

韓国の合計特殊出生率は2016年の1.17、2017年の1.05に続いて、2018年は過去最低の0.98を記録し、急激な下落に歯止めがかからない状況にある。

国会では2019年8月2日、男女雇用平等及び仕事・家庭両立支援に関する法律と雇用保険法の改正法案が成立し、2019年10月1日から配偶者出産休暇及び育児期労働時間短縮に関する制度が拡充された。

配偶者出産休暇制度は、それまで3日以上5日以内(最初の3日は有給)であった休暇付与日数を10日(すべて有給)に拡大した。また、出産の日から30日以内であった休暇請求期限を90日以内に延長し、1回に限り分割使用できることとした(表4)。

有給休暇日数の拡大に伴う中小企業の負担を軽減するため、中小企業優先対象企業(産業別に、常用労働者数が100~500人以下の企業及び中小企業基本法上の一定の要件を満たす企業)の労働者を対象に、政府が有給休暇5日分の賃金を支援する「配偶者出産休暇給付金」が新設された。この給付金の算定方式は、「月給(上限200万ウォン)÷月所定労働時間×1日の所定労働時間×5日」である。配偶者出産休暇給付金は、休暇がすべて終わった後(分割使用の場合を含む)に一括申請しなければならない。

改正法施行前も、一部の大企業では10日の配偶者出産休暇を付与する事例がみられたが、ほとんどの中小企業の配偶者出産休暇の使用日数は法定有給日数の3日前後であった。

表4:配偶者出産休暇制度の改正
画像:表4

出所:韓国雇用労働部発表資料(2019年9月30日)をもとに作成

育児期労働時間短縮制度の拡大

育児期労働時間短縮制度の使用期間は、改正法施行前は育児休職と育児期労働時間短縮を合せて最長1年であった。2019年10月1日からは、育児休職の1年とは別に、育児期労働時間短縮だけで1年間使用可能となった。また、育児休職の未使用期間(1年までの残日数)は、育児期労働時間短縮期間(1年)に追加して使用することができることとされた。育児期労働時間短縮だけを使用する場合、最長2年まで使用可能であり、最短3カ月単位で回数の制限なしに分割使用できる(表5)。

さらに、賃金削減のない1日1時間の育児期労働時間短縮も導入された。改正法施行前は、1日2~5時間の範囲内で労働時間の短縮が可能であったが、2019年10月1日からは1日1時間の短縮も可能となり、1時間短縮分については、賃金の100%が支給される。ただし、1週5時間を超える1時間短縮分については、従前どおり賃金の80%が支給される。短縮後の週労働時間数は、改正法施行前の15~30時間から15~35時間に改正された。

表5:育児期労働時間短縮制度の改正
画像:表5

出所:韓国雇用労働部発表資料(2019年9月30日)をもとに作成

参考

  • 韓国雇用労働部発表資料「10月1日から配偶者出産休暇有給10日に拡大」(2019年9月30日付)
  • 韓国雇用情報院「男性育児休職給付金受給者の増加現況」『雇用動向ブリーフ2019年4月号』
  • 厚生労働省(2019)『2018年海外情勢報告』
  • 金任子(2019)「韓国におけるワーク・ライフ・バランス実現への取組と課題―育児休業制度を中心に」『Discussion Paper, Series B』北海道大学大学院経済学研究院

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