雇用労働部が「地域雇用政策の改善案」を発表

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  • 国別労働トピック:2019年12月

雇用労働部は2019年9月3日、様々な地域主体が参加してボトムアップで雇用政策を推進することにより、成果の向上につなげることを目的とした「地域雇用政策の改善案」を発表した。今回の改善案は、地域の雇用問題を地域が主導して解決できるよう政府が支援するため、様々な意見集約の機会を経て策定された。改善案の概要は次のとおり。

中央主導、地域補完に基づく労働市場政策体系の問題点

韓国の雇用政策の基本的枠組みは中央集権的であり、主要な雇用政策は中央省庁の雇用保険事業(失業給付・雇用安定・職業能力開発事業)で運営されている。雇用労働部が政策立案し、雇用労働部の地方官署が執行している。主な財源は、労使が拠出する雇用保険である。

地域の雇用政策は、中央の雇用政策を補完するもので、マッチング事業を中心に推進されている。2019年の雇用関連予算23兆ウォンのうち、地方自治体が執行する予算は8兆ウォンであり、中央と地方のマッチング事業(高齢者雇用事業、子育て支援事業、地域・産業カスタム雇用創出支援事業、地域主導型の青年雇用事業など、10省庁・41事業)6.5兆ウォンがその大部分を占め、自治体の独自事業は1.4兆ウォンに過ぎない。

地域雇用政策のほとんどは直接雇用事業(86.6%)であり、それに続いて雇用奨励金(5.6%)、創業支援(3.9%)、雇用サービス(3.5%)、職業訓練(2.7%)の順となっている。

こうした中央主導、地域補完に基づく労働市場政策体系の問題点は、地域が自律的に運営することができる雇用政策が不足していることである。直接雇用事業は個々の部署・事業単位で分節的に運営されおり、行政の非効率、事業活用の制約、雇用予算の政策効果低下、自治体の業務量増大などにつながっている。また、予算用途の制限、単年度の事業期間などの制約により、自治体が主導的に政策を設計・推進することが困難となっている。

地域主導による雇用政策の展開に向けた支援

これらの問題点を克服するため、「地域雇用政策の改善案」は、雇用危機が懸念される地域が主導的に中長期雇用事業を推進し、雇用危機に先制的に対応できるよう支援するとしている。

雇用危機発生後、特定の地域に対し特定の期間だけ対応する現行の雇用危機地域の支援要件を緩和し、常時事業として運営する。中央省庁は、最低限のガイドラインだけを提示し、審査・選定過程においてコンサルティングを行い、その結果確定した内容で自治体と協定を締結する。自治体は、ガイドラインに基づき、産業クラスターの育成、新産業の誘致など地域の産業政策と連携した地域雇用事業計画を独自に策定・推進する。

支援額は年間30~200億ウォン(最大5年間)で、自治体が中長期的に雇用事業を推進できる財政基盤づくりを後押しする。地域が独自に発掘した雇用事業(職業訓練、雇用サービス、雇用創出、労働環境の改善、地域企業支援、創業支援等)を優先し、必要性が認められる場合は、中央省庁の既存の雇用事業に対する支援を追加許可する。これにより、既存の若者支援、在職者支援、企業支援のように対象が特定された事業とは異なり、地域の需要に応じて事業内容と支援対象、普及方法などを主導的に設計することができるようになる。

この事業は、基礎自治体(市・郡・区)を支援することが原則であるが、地域の労働市場圏域に応じて、基礎自治体間または広域市と基礎自治体間の連合体(コンソーシアム)を対象とすることもでき、就業者数の急減と、大規模な構造調整、雇用・人材不足などで雇用危機が懸念される地域に対する機動的な支援が期待できる。

地方自治体が自主的に雇用目標と対策を立案し、公表・推進するため、「地域雇用目標公表制」を2010年から実施している。地方自治体の長は、管轄地域の住民に対して、その任期中に推進する雇用機会創出支援策を樹立・公表することができる(雇用対策基本法第9条の2)。この公表制において優れた実績を上げた自治体に対しては、自主的に設計された独自の雇用事業に活用できるインセンティブ(広域市:80~400万ウォン、基礎自治体:80~300万ウォン、自治体対応事業費の免除などの優遇措置)を拡大する。また、当該自治体が「雇用危機先制対応パッケージ」の支援を申請した場合、加点を付与するなど、政策間の連携を強化する。

地域雇用問題解決のための共同プロセスの構築

「地域雇用政策の改善案」はまた、雇用政策基本法上の最上位の審議機構である「雇用政策審議会」(雇用労働部長官、労使の代表者、雇用の専門家、地方自治体推薦者、関係省庁次官級等30人以内で構成)を地域の雇用問題を解決するためのコラボレーション機構として活用するとしている。そのため、「雇用政策審議会」の下に「地域雇用専門委員会」(政労使・有識者等20人以内で構成)を設置し、地域の雇用政策、雇用事業、公表制等に関する審議を活性化する(雇用政策基本法施行令第7条を改正)。

地方自治体(特別市・広域市・道及び特別自治道)に設置された「地域雇用審議会(地域労使民政協議会(注1))」の雇用政策審議機能を強化し、地域の雇用ガバナンスの最上位機関としての役割を確立する。このため、法令上の審議事項を明確に規定し、地域の産業界が参加して地域の雇用事業や訓練を実施・支援する機構である「地域の人的資源開発委員会」を雇用政策関連の専門委員会として活用するなど、審議会の運営を充実させる。

専門家の活用が難しい基礎自治体を対象に、地域別「雇用政策諮問団」(地域別大学・研究機関等の有識者を中心に、自治体、雇用労働部地方官署等の推薦者で構成)を設置して定期的に諮問協議会を運営し、教育を実施することができるようコンサルティング費用を支援する。また、自治体と雇用労働部地方官署の雇用問題担当者を対象に開催する「地域雇用アカデミー」を通じて、雇用政策関連の教育を強化する。さらに、地域主導の雇用政策のベストプラクティスを蓄積した「種類別地域雇用事例」を全国に普及させ、これを地域において雇用事業を発掘するための専門相談に活用する。

地域の主力産業クラスターと連携した「地域単位業種別雇用ネットワーク」を拡大・強化し、地域の主力産業の発展を支援する。産業界の意見集約、地域の雇用問題の発掘と試験運用(Test-Bed)、ベストプラクティス普及方法などに活用する計画である。

複数の法律に散在している地域雇用関連規定を有機的に統合し、地域の雇用事業や「地域の人的資源開発委員会」(地域労使民政協議会事務局、雇用労働部地方官署、自治体の雇用部門の代表等で構成)の法的根拠を設けるなど、地域の雇用関連法令を整備して継続的かつ安定的な地域雇用政策を推進できる環境を用意する。

イ・ジェガプ長官は、「今回の改善策は、地域が自主的に中長期の優先順位に基づき雇用問題を解決できるよう支援することが主な内容であり、特に『雇用危機先制対応パッケージ』公募事業を通じて、雇用危機前の段階で地域の雇用政策の死角を埋め、雇用政策の臨場感と体感度を高めることができると期待している」と強調した。

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