有期労働者数、過去最高の320万人
―政府、有期の濫用規制を計画
ドイツ労働市場・職業研究所(IAB)によると、2018年の有期労働者数は320万人に達し、過去最高を記録した。有期雇用は多くの場合、「試用期間の延長」として利用されており、期間満了時には4割強が無期雇用へ移行する。他方で、不況時には雇用の調整弁として利用され、不安定な雇用でもある。また、客観的正当化事由(注1)なく有期雇用を締結する割合は半数を超えており、政府は有期の濫用規制を計画している。
有期雇用の現状―IABパネル調査より
今回の分析は、国内の全産業、1.6万事業所を対象に毎年実施されるIABパネル調査に基づいて行われた。それによると、好調な経済状況を反映して、有期労働者数は継続的に増加傾向にあり、2018年には過去最高の320万人に達した。雇用労働者に占める割合は8.3%で、12人に1人が有期労働者として働いていたことになる(図表1)。
図表1:有期労働者数、割合の推移(1996年~2018年)
出所: IAB(2019)
また、2018年の期間満了時の動向を分析した所、44.2%が無期雇用へ移行し、43.4%が労働者の自発的な離職だった。期間満了を理由とした離職は11.1%のみで、労使双方のミスマッチを防ぐ「試用期間」として有期雇用が機能していることも明らかにされた。
景気によって利用動機が変化
好況だった2018年に、使用者が有期雇用契約を締結した理由を見ると、「適切な人材か判断するため(36.7%)」が最も多く、「病休等による代替の確保(18.1%)」、「一時的な需要増による追加人材の確保(13.1%)」、「経済的に不透明な状況のため(11.9%)」と続いた。対照的に、金融危機の影響で有期労働者が減少した2009年を見ると、「適切な人材か判断するため(23.8%)」に次いで「経済的に不透明な状況のため(22.0%)」の割合が高く、「病休等による代替の確保(19.7%)」、「一時的な需要増による追加人材の確保(18.2%)」と続いた。このように経済状況によって使用者の利用動機には違いが見られる。
政府、有期雇用の濫用を規制する方針
前述のように使用者の利用動機が明確な場合を除き、客観的正当化事由なく有期契約を締結するケースは現在半数を超えており、有期労働者の180万人に上ると推計されている。そのため政府は、有期雇用の濫用を規制するパートタイム・有期労働契約法(TzBfG)の改正を計画している。草案によると、75人を超える従業員を擁する企業は今後、全従業員の最大2.5%までしか客観的正当化事由のない有期雇用契約が認められなくなる。この比率を超えて客観的正当化事由がないまま有期労働者を雇用する場合、いかなる契約も無期で成立しているものと見なされる。さらに、客観的正当化事由のない有期雇用は、18カ月(現在は最大24カ月)までしか認められなくなる。
このような政府案についてIABは、「法改正によって企業は有期雇用を抑制する一方で、正規従業員の労働時間延長や基本給の抑制、派遣や請負の利用を増やすことも考えられ、法改正の影響を今後も科学的に詳しく分析・評価する必要がある」としている。
注
- パートタイム・有期労働契約法(TzBfG)14条2項は2年を上限として、客観的正当化事由のない有期雇用契約を認めている。なお、同14条1項は「客観的正当化事由」として、一時的な労働力需要、労働者代替の必要性、当該労働者の試用などを例示している。(本文へ)
参考資料
- EuroWORK, IAB-Forum(12. Juni 2019)ほか。
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