特別手当、1,000ユーロを上限として非課税措置

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  • 国別労働トピック:2019年10月

2018年11月から毎週土曜日に行われ、全国に広がった「黄色いベスト運動」は、2019年1月に実施する予定だった燃料税の引上げに対する抗議運動に端を発したものだった。政府は事態の沈静化をはかるため、12月10日に法定最低賃金(SMIC)の引上げ、超過勤務手当にかかる所得税および社会保険料の免除などとともに、特別手当(ボーナス)に対する非課税措置を発表した。非課税措置は3月末までに支給された手当が対象となり、従業員規模500人以上の企業の38%、全従業員の約29%がボーナスの支給を受けた。

平均449ユーロの支給

特別手当にかかる所得税および社会保険料、一般福祉税の免除は、18年12月11日から19年3月31日までに支給された1,000ユーロを上限とする手当が対象となった。適用されるのは、月額賃金3,600ユーロ以下の公務員を除く民間企業の被用者や非営利団体の職員である(注1)

国立統計経済研究所(INSEE)によると、1月末時点で特別手当を支給した民間企業は22万1,800社(全体の12.0%)、支給を受けた雇用労働者は約205万人(全体の9.8%)だった(注2)(図表参照)。産業別では、建設業が最も高く14.9%の企業が手当を支給し、18.0%の雇用労働者が受給して、平均支給額は449ユーロ。20万人が非課税限度額上限の1,000ユーロを受給した。

図表:特別手当支給企業の業種別割合
  支給した使用者の割合 支給された被用者数・割合
農業 9.1 24,500 8.8
製造業 12.2 327,200 10.2
建設業 14.9 264,900 18.0
商業 12.0 1,255,400 9.4
商業を除くサービス業 9.6 177,600 6.7
全体・合計 12.0 2,049,600 9.8

出典:INSEE公表資料(なお、被用者の総数は約2,097万人)。

民間企業協会加盟企業では24%の企業が上限の1,000ユーロ支給

全国民間企業協会(Afep)が実施した調査によると、19年2月の時点で、会員企業115社のうち特別手当を「支給した」あるいは「支給予定」と回答したのは74社で、平均支給額は630ユーロだった(注3)。そのうち、SFR(移動体通信業(携帯電話))やロレアル、エルメスグループ(化粧品)など28社は上限の1,000ユーロを支給すると回答した。

自動車部品メーカーのヴァレオやタイヤ製造業のミシュランなど、賃金が低い従業員ほど手厚い手当額を支給するという傾斜配分を行なった企業もある。ヴォレオでは、SMICの1.5倍までの従業員には500ユーロ、1.5倍から2.5倍までの従業員には250ユーロを支給。ミシュランでは、年額賃金が26,000ユーロ未満の従業員に750ユーロ、26,000ユーロから30,000ユーロの場合は500ユーロ、30,000ユーロから34,000ユーロの場合は250ユーロを支給した。

従業員規模での支給割合、支給額の違い

人事責任者全国協会(ANDRH)は、2019年2月に加盟企業に対して特別手当の支給に関する調査を実施した。それによると、有効回答約400社のうち74%の企業が特別手当を「支給」あるいは「支給予定」であると回答した。

「支給する」もしくは「支給予定」と答えた企業の割合は、従業員規模の大きい企業と小さい企業の両端で高くなっている。従業員数10人以下の企業では80%、同300人以上1,000人未満の企業では81%、同1,000人以上の企業では79%が支給するのに対して、同11人以上50人未満では62%、同50人以上300人未満の企業では67%だった。手当の平均額は全体で532ユーロ。従業員規模50人未満の企業で687ユーロ、1,000人以上の企業で583ユーロだったが、同50人以上300人未満の企業の530ユーロ、同300人以上1,000人未満の467ユーロだった(注4)

使用者側も概ね歓迎

今回の特別手当に対する使用者の評価も良好だ。これまでもサルコジ政権下で「利潤分配特別手当」という1,200ユーロを上限とする非課税措置を行なっているが、今回の措置は比較的多くの企業が賛同していることからも、そのことが伺える(注3参照)。中小企業連盟(CPME)会長は、各企業は可能な限り支給すべきであると発言するなど歓迎の意向を示している(注5)

非課税対象期間を終えた4月に、調査会社IFOPにより首都圏在住の民間企業の従業員1,057人を対象として実施された調査結果によると、ボーナスの支給を受けたのが29%、受けなかったのが62%、支給対象ではなかったのが9%だった(注6)

(ウェブサイト最終閲覧:2019年9月24日)

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