弾力的労働時間制の単位期間を最長6カ月に延長する労使合意が成立

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  • 国別労働トピック:2019年5月

経済・社会政策に関する大統領の諮問機関である経済社会労働委員会は2019年2月19日、弾力的労働時間制(日本の変形労働時間制に相当)の単位期間を最長3カ月から6カ月に延長することに合意した。合意内容は、今後、勤労基準法の改正を経て企業規模に応じて段階的に実施される。

単位期間の延長をめぐり労使が激しく対立

韓国では、労働時間の上限を週68時間から週52時間に短縮する改正勤労基準法が2018年7月1日から施行された(2018年7月1日から企業・事業所規模に応じて段階的に実施)。週52時間労働制の導入による労働時間短縮の影響に苦しむ企業側の意向を受け、韓国政府は、一定の単位期間内に労働時間を調整することを前提に、法定労働時間を超えて勤務させることができる弾力的労働時間制の単位期間を延長する方針である。

現行の勤労基準法は、弾力的労働時間制の単位期間を、就業規則に基づく2週間以内(週48時間以内)又は労使協定に基づく3カ月以内(週52時間・1日12時間以内)と規定している。後者の場合、週労働時間は最長64時間まで延長できる。

韓国政府は、弾力的労働時間制の単位期間を6カ月から1年程度の期間に延長する法改正を2018年中に実施する計画であった。しかし、全国民主労働総連盟(民主労総)などの労働組合側がゼネストを実施して強硬に反対したため、政府は法改正を延期した。

弾力的労働時間制の改正に関しては、①単位期間の延長、②導入条件の緩和、③労働者の安全保護、④乱用の防止――などが論点となっていた。経営側が単位期間の上限を6カ月から1年程度の期間に延長するよう要求したのに対し、労働組合側は現行の最長3カ月の単位期間を維持するよう強硬に主張した。

経済社会労働委員会(政労使公益員18名で構成)の第1回会議が2018年11月22日に開催され、弾力的労働時間制の拡大について議論する課題別委員会「労働時間制度改善委員会」を設置することを決定した。

経済社会労働委員会が改正案に合意

韓国労働組合総連盟(韓国労総)、韓国経営者協会、大韓商工会議所は昨年11月以降、全体会議や非公式会議において、弾力的労働時間制をめぐる立場の違いを縮める努力を続けてきた。経済社会労働委員会は2019年2月19日、弾力的労働時間制の単位期間を最長6カ月に延長することに合意した。

現行の弾力的労働時間制も単位期間が2週間を超える場合、労使が書面により、①対象労働者の範囲、②単位期間(3カ月以内の一定期間)、単位期間の勤務日とその勤務日ごとの労働時間、④その他の大統領令で定める事項――を定めることを実施の前提条件としている。

3カ月を超える弾力的労働時間制の場合、事前に勤務日ごとの労働時間を確定することが難しいことを考慮し、週ごとに労働時間を定め、少なくとも2週間前までに勤務日ごとの労働時間を労働者に通知することとした。

さらに労働者の過労防止と健康保護のため、労働日の間に11時間の連続休息時間を義務化することを原則とした。連続休息時間の保証が困難な場合は、労使が書面により同意しなければならない。

また、3カ月を超える弾力的労働時間制導入時の賃金低下を防止するため、保全手当の支給や手当割増率の調整などの賃金保全策を講じ、雇用労働部長官に届出しなければならない。届出を怠った場合は罰金が課される。

弾力的労働時間制の単位期間の延長は、勤労基準法の改正に関する国会の審議・議決を経て、最終的に実施される。経済社会労働委員会の合意内容は、週52時間労働制の施行時期に合わせて、企業・事業所の規模別に段階的に適用される予定である。

民主労総は政労使合意に参加せず

今回の経済社会労働委員会における弾力的労働時間制に関する合意には、2大労総のうち、韓国労総は参加していたが、単位期間の延長に強硬に反対している民主労総は参加しなかった。民主労総は、改正案が労働時間短縮の努力を帳消しにしてしまうとして、経済社会労働委員会への参加を拒否し続けた。民主労総は、単位期間の6カ月への延長は3カ月連続で週労働時間の64時間への延長を可能とする「改悪」であるとして合意案を批判し、2019年3月6日にゼネストを行った。

単位期間の1年への延長を要求してきた経営側は、改正案はあまり大きな影響を与えないだろうとみている。中小企業連盟の担当者は、「多くの中小企業では、繁忙期が5カ月から6カ月間続くため、単位期間が延長されても平均週52時間以内の労働時間を維持することができない」と述べた。

政府は、「3カ月を超える弾力的労働時間制の導入と運用実態を今後3年間綿密に分析して、問題点を把握し、制度運営に関する相談及び支援を提供する」と説明した。

参考

  • ハンギョレ新聞 2019年2月19日
  • 毎日労働ニュース 2019年2月
  • 朝鮮日報 2019年2月20日
  • NNA ASIA 2019年2月21日
  • 全国民主労働総連ウェブサイト

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