故意のない法律違反を処罰しない措置
 ―故意の違反に対する取り締まり強化も

カテゴリー:外国人労働者労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2019年1月

「社会の信頼を得る行政サービスに関する法案(projet de loi pour un État au service d’une société de confiance)」が2018年1月30日に下院で可決された。国民の過ちを犯す権利(droit à l’erreur)の明文化とともに、行政手続きの簡素化などを盛り込んだ法案である。その一方で、不法外国人派遣労働者を雇用する企業に対して厳格な措置をとる方針が打ち出された。

労働基準違反や社会保険未加入問題に対する方針の変更

企業や国民が行政に対して申告した内容に誤りがあったり、法律に違反した場合に、それが故意ではなければ、処罰を免除することを明文化する法案が可決された。労働面では、労働基準監督官が企業で立ち入り検査した際、労働時間の超過や労働者の安全管理義務違反といった雇用主の法令違反が明らかになった場合でも、それが故意でなければ処罰の対象とはせずに、差しあたり警告にとどめるというもの。行政側が故意であることを立証できれば、処罰の対象となる。再犯の場合や公衆衛生の安全が脅かされる過失、あるいはEUによる規則や国際的な公約に背く過失は、故意であるかどうかにかかわらず処罰される。

社会保険の未加入問題について、URSSAF(社会保障及び家族手当に関する保険料徴収連盟)などを統括する機関、ACOSS(社会保障中央機関)の代表は、従業員の課税申告漏れを犯している企業に関しては、これまで通り違法として扱うとしており、従業員の社会保険の加入漏れなども、故意によるものと見なす方針である(注1)

行政手続きの柔軟な対応と簡素化

故意ではない違反は、法制度や行政手続きが複雑であるために生じている。そのため利用者の手続きを容易にする措置や手続き基準の緩和、地域ごとの実状に合せた柔軟な対応を可能にすることで、故意ではない違反を未然に防止する措置が講じられる。例えば、医療サービスや雇用の手続きに関する様々な行政機関に対する申請を受け付ける窓口を1つにすることを試験的に導入するといったことが行われる。

行政機関の窓口サービス拡充も

法令に合致しているか否かを行政に容易く照会できるようにすることも、行政手続きの簡素化を通じた故意ではない違反を防ぐための方策である。そのために行政機関の一部窓口業務の受付時間を延長し、従来、日中に就労しているために問い合わせできなかった者が就労後に利用できるようにする。これらの施策を運用する公務員の教育・研修も行う。

増加する不法外国人派遣労働者の取締強化

一方で海外からの不法な派遣労働者を取り締まる方針が打ち出された。違反事業所の閉鎖や業務の停止命令の厳格化、税務当局や労働基準監督署などの関係当局の連携強化、監査の効率化がその具体的な施策である(注2)。ペニコー労相は、先般可決された過ちを犯す権利に関する法案に言及し、「法違反の企業経営者は、過ちを犯す権利が違法の容認ではないことをしっかりと理解する必要がある」と述べ、労働者の派遣制度の適切な利用を訴えた(注3)

外国からの派遣労働者の数は、ここ数年、増加が続いており、15年に25%増、2016年に24%増であったが、2017年には46%増加した。未申告就労や法定最低賃金(SMIC)を大幅に下回る賃金の支払い、労働時間の超過、基準外の住居など制度の悪用が多く見られる。

2013年の上院の報告書によると、不法な外国からの派遣労働者の数は22万人から30万人に上るとされている。

こうした不法派遣労働に対して規制を厳格化し罰金を増額することになった。労働者1人当たりの罰金を現行の2000ユーロから3000ユーロへ、再犯の場合は4000ユーロから6000ユーロへ引き上げる。また、違反を行った企業名を公表することになった。

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