労働時間の上限を週52時間に制限する改正勤労基準法に関する評価

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  • 国別労働トピック:2018年11月

韓国は、労働時間の上限を週52時間に制限する改正勤労基準法を2018年7月1日から施行した。調査会社のイプソス(Ipsos)は、7月26日から30日まで、18~64歳の1171人を対象に、オンラインによる「労働時間の短縮に関する意識調査」を実施した。その結果によると、勤労基準法の改正について、「内容を良く知っている」と答えた人の割合は60.6%、法改正を「肯定的」に評価している人の割合は52.1%であった。同調査結果の概要を紹介する。

改正勤労基準法の概要

法改正前の韓国の労働時間制度は、1週40時間の法定労働時間に加え、最長12時間の時間外労働を認めていた。しかし、休日労働は法定労働時間に含まれないため、1週の労働時間は休日労働(8時間×2日)を加えた最長68時間まで延長できた。さらに、公益性や業務特性に基づき指定された特例26業種において、労使が合意した場合、時間外労働の上限規制が適用されなかった。

今回の勤労基準法の改正では、1週の労働時間規制の上限を原則、休日を含め週52時間以内に制限した。また、特例業種の範囲を26業種から5業種に縮小し(対象労働者数は453万人から102万人に減少)、存続する特例5業種においては11時間の勤務間インターバル規制を導入した。

週52時間労働の上限規制に関する評価

イプソスの調査結果によると、労働時間の短縮を目的とした勤労基準法の改正について、「内容を良く知っている」という回答が60.6%、「内容は良く分からないが聞いたことがある」という回答が38%で、回答者の98.6%が認識していた。

法改正の趣旨については、「共感する」が74.4%、「共感しない」が25.6%であった。

法改正の評価については、「肯定的」が52.1%、「否定的」が25.8%、「まだよく分からない」が22.2%であった。

労働時間の短縮が今後の暮らしの質にどのような影響を与えるかについては、「肯定的な影響が大きくなる」が55.5%、「マイナスの影響がより大きくなる」が28.8%、「別に影響はない」が15.7%であった。

労働時間短縮が今後の暮らしの質に肯定的な影響を与えると回答した人に対し、肯定的要素について質問した結果(複数回答)は、「個人時間の増加」(62.3%)、「夜勤の減少」(59.1%)、「働き方の変化(会議時間の短縮など)」、(44.1%)、通勤時間の変化(34.3%)の順に多かった。

労働時間短縮が否定的な影響を与えると回答した人に対し、否定的要素について質問した結果(複数回答)は、「所得減少、追加労働」(67.8%)、「雇用が不安定」(58.5%)、「物価上昇」(38.3%)、「労働強度の増加」(33.2%)の順に多かった。

全体的に労働時間の短縮について共感しながらも、労働時間短縮に伴う所得減少や追加労働に対する懸念があることがうかがわれる。

労働時間の短縮に関する今後の展望

労働時間の短縮が今後の生活にどのような影響があるかについて、項目ごとに、「良くなる」「変化なし」「悪くなる」のいずれかを選択してもらった結果は下表のとおりである。休息、運動、余暇・レジャー、趣味など大半の項目で「良くなる」という回答が50%以上となっている。ただし、出産の項目は、「良くなる」という回答が36%に止まった。所得の項目は、「悪くなる」という回答が54%に達した。

表:労働時間短縮に関する今後の展望 (単位:%)
  良くなる 変化なし 悪くなる
休息 75 15 10
運動 68 22 10
余暇・レジャー 66 23 11
趣味 65 23 13
自己啓発 64 26 10
残業文化 64 20 16
全般的な暮らしの質 59 23 18
旅行 57 30 12
育児 51 34 15
ショッピング・消費 50 25 25
出産 36 49 16
所得 19 28 54

労働時間の短縮により生じた余暇時間をどのように活用するかについて質問した結果(複数回答)は、「家族と一緒にする生活」(43.3%)、「休息・娯楽」(41.1%)、「健康・レジャー」(35.3%)、「自己啓発・学習」(23.2%)、「趣味生活・サークル」(22.5%)、「レジャー・文化活動」(17.4%)、「追加所得のための経済活動」)(16.1%)の順に多かった。

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