女性の活躍促進には、人的資源管理制度・慣行の改善が必要

カテゴリー:労働条件・就業環境人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2018年11月

韓国労働研究院(KLI)は9月17日、「事業体パネル調査」の分析結果に基づく研究レポート「女性管理者の現状と課題」(注1)を発表した。それによると、女性管理者(管理者の役割をする係長級以上)の割合は、2005年の10.9%から2015年は16.5%に増加した。しかし、2015年の管理者に占める女性の割合は、役員6.8%、部長級4.9%、次長級7.1%の水準に止まっている。KLIのレポートに基づき韓国の女性管理者の現状と課題について紹介する。

女性の活躍状況

韓国の2016年の経済活動参加率は男性が68.7%、女性が58.4%で、女性が男性より約10%ポイント低い状況にある。雇用形態別にみると、男性は正規雇用が73.6%、非正規雇用が26.4%、女性は正規雇用が59.0%、非正規雇用が41.0%となっている。

世界経済フォーラムが毎年公表する男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」の2017年ランキングによると、韓国は調査対象の144カ国中118位にとどまっている。

2017年の専門・管理者従事者の割合は、女性23.5%、男性76.5%で、女性は全体の4分の1にも満たない。

女性管理者の現状

KLIの「事業体パネル調査」に基づく分析結果によると、事業体内の女性の割合は、2005年の26.42%から2015年の27.03%まで0.61%ポイント増加した。

女性管理者の割合は、2005年10.91%、2007年12.03%、2009年13.01%、2011年15.29%、2013年15.65%、2015年16.47%と増加傾向を示している。

管理者に占める女性の割合は、役員が2005年4.3%、2015年6.8%(2.5%ポイント増)、部長級は2005年2.3%、2015年4.9%(2.6%ポイント増)、次長級は2005年2.0%、2015年7.1%(5.1%ポイント増)、課長級は2005年7.4%、2015年17.1%(9.7%ポイント増)、係長級は2005年20.4%、2015年27.6%(7.2%ポイント増)であった。他方、非管理職の女性の割合は、2005年の35.9%に対し、2015年は35.7%でわずかに減少した(表1)。

表1:管理者に占める女性労働者の割合 (単位:%)
女性比率 2005 2007 2009 2011 2013 2015
役員 4.3 4.5 5.2 7.0 6.0 6.8
部長級 2.3 4.1 4.1 4.4 5.2 4.9
次長級 2.0 2.7 3.1 5.4 7.1 7.1
課長級 7.4 9.8 11.8 13.3 16.2 17.1
係長級 20.4 21.1 22.6 23.8 25.8 27.6
非管理職 35.9 35.0 33.6 34.2 35.4 35.7

出所:ソン・スンミ(2018)「女性管理職の現状と課題」、韓国労働研究院に基づき作成

注:30人以上事業体を対象とする「事業体パネル調査」2005年、2007年、2009年、2013年、2015年資料を統合し、加重値を付与して平均した値。

企業規模別にみると、女性管理者の割合は、従業員30〜99人の企業14.5%、100〜299人の企業12.7%、300〜499人の企業15.3%、500人以上の企業13.1%となっている。

業種別にみると、女性の管理者の割合は、製造業11.2%、非製造業16.3%となっている。女性管理者の割合が高い産業は流通サービス業(14.8%)、個人サービス業(14.5%)などであり、女性管理者の割合が最も低い産業は、電気・ガス・水道業(2.7%)である(表2)。

表2:業種別全労働者に占める女性管理職の割合 (単位:%)
  平均 標準偏差
電気・電子・精密 11.0 10.9
電気・ガス・水道業 2.7 4.4
建設業 7.6 8.5
個人サービス業 14.5 18.1
流通サービス業 14.8 13.6
事業サービス業 11.0 9.9

出所:ソン・スンミ(2018)「女性管理職の現状と課題」、韓国労働研究院

注:30人以上事業体を対象とする「事業体パネル調査」2005年、2007年、2009年、2013年、2015年資料を統合し、加重値を付与して平均した値。

その他の特性をみると、女性管理者の割合は、公共部門17.0%、民間部門13.9%、無労組企業14.4%、有組合企業11.9%、専門経営体制17.2%、所有経営体制12.6%などとなっている。

女性管理職の活用に影響を与える人的資源管理の現状

女性の活躍を推進するためには、 組織内での女性の教育訓練への参加を奨励・拡大し、女性の能力と専門性を向上させることが重要な課題の一つとなっている。

「事業体パネル調査」に基づく分析の結果によると、企業内訓練の履修者のうち、女性の割合は、2007年28.1%、2009年27.8%、2011年31.3%、2013年28.3%である。

女性の管理者の割合が低い集団と高い集団を区分して、製造業と非製造業を比較すると、製造業の教育訓練履修者のうち女性の割合は、女性管理者の割合が低い集団で17.2%、割合が高い集団で34.7%となっている。

非製造業では、女性の管理者の割合が低い集団で20.0%、高い集団で42.2%となっている。

全体では、女性管理者の割合が低い集団は18.6%、高い集団は39.9%で、女性の管理者の割合が高い企業において女性の教育訓練への参加が非常に広範囲に行われていること示している。

表3:女性管理職比率別教育訓練履修者の女性割合 (単位:%)
  製造業 非製造業 全体
女性管理職比率が低い 17.2 20.0 18.6
女性管理職比率が高い 34.7 42.2 39.9
全体 23.4 32.5 28.8

出所:「ソン・スンミ(2018)『女性管理職の現状と課題』韓国労働研究院」に基づき作成

注:30人以上事業体を対象とする「事業体パネル調査」2005年、2007年、2009年、2013年、2015年資料を統合し、加重値を付与して平均した値。

KLIは、女性管理者の活躍促進のためには、女性の教育訓練への参加拡大、公正な処遇と差別の禁止、多様性政策の実現など、人的資源管理制度と慣行全般の持続的関心と改善が求められると指摘している。

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