求職者基礎保障給付額引き上げ、操短手当の受給期間延長など

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  • 国別労働トピック:2016年2月

2015年末から2016年初にかけて、求職者基礎保障の新しい標準給付額の適用、操短手当の受給期間延長、特定層を対象とした失業手当の実施等、いくつかの制度変更がなされた。以下に紹介する。

求職者基礎保障の給付額、引き上げ

1月1日から求職者基礎保障における新しい標準給付額が適用された。失業手当Ⅱ(ArbeitslosengeldⅡ)、および社会手当(Sozialgeld)に関する単身受給者のための標準給付額は年始から月額404ユーロに引き上げられた(詳細は図表1の通り)。

「求職者基礎保障」とは、主に長期失業者とそのパートナー等の生活保障を目的とした制度である。同制度では、求職者本人に「失業手当Ⅱ」を、同一世帯の就労能力のない家族に「社会手当」を給付する。

なお、病気や事故等で稼得能力のない困窮者の生活保障を目的とした「社会扶助(Sozialhilfe)」の給付水準も、求職者基礎保障の標準給付額と同額で設定されており、1月1日から同様に引き上げられた。

図表1:求職者基礎保障の標準給付額(月額)
受給資格者 2016年1月1日からの給付額
単身者(成人1人あたりの標準月額)、 単身養育者(ひとり親)の受給資格者 404ユーロ
家計を一にして同居するカップル 364ユーロ
独自の家計を営まない、またパートナーと家計を一つにしない成人の受給資格者 324ユーロ
14歳から18歳未満の若者 306ユーロ
6歳から14歳未満の子供 270ユーロ
0歳から 6歳未満の子供 237ユーロ
  • 出所:BMAS(2015)

操短手当、受給期間の延長

「操短手当」とは、操業短縮に伴う労働者の収入低下に対してその一部を補填する助成策の一つである。企業が景気の理由から受注が落ち込んだ時に操業時間を短縮して従業員の雇用維持を図る場合、連邦雇用エージェンシー(BA)に申請すると操業短縮に伴う賃金減少分の一部(減少分の 60%、扶養義務がある子供を有する場合は 67%)が補填される。

この操業短縮手当(操短手当)の法定受給期間が、2016年1月1日付けで6カ月から12カ月に延長された。連邦労働社会省が法規命令でその都度延長してきたこれまでの方法が、恒久化されることになった。

目的は、企業(使用者)が操業短縮中に、より確実な計画を策定できるようにすることである。

短期有期労働者に対する失業手当、特別規則の延長

主に短期の有期労働者を対象とする失業手当の特別規則の期限が、従来の2015年12月末から2016年12月末に延長された。これにより、有期労働者の失業手当の請求に必要な被保険者としての期間が最低6カ月に短縮される現行制度が今年末まで継続することになった (通常は離職前2年間において通算12カ月以上の保険料納付が必要)。

労働者派遣

2015年12月1日に施行された「労働者派遣許可費用令の改正に関する第2政令(Zweite Verordnung zur Änderung der Arbeitnehmerüberlassungserlaubnis-Kostenverordnung)」により、労働者派遣許可の交付手数料が、12年ぶりに引き上げられた(有期許可がこれまでの750ユーロから1000ユーロ、無期限許可がこれまでの2000ユーロから2500ユーロとなった)。今回の交付手数料の引き上げについて連邦労働社会省は、「連邦雇用エージェンシー(BA)の派遣元企業に対する監視の質を確保するため」としている。

公的年金の保険料率

1月1日以降の公的年金保険の保険料率は、普通年金保険で18.7%、鉱山従業員年金保険の保険料率は24.8%である。

年金受給開始年齢の段階的引き上げ

65歳から67歳への年金支給開始年齢の引上げは、すでに2012年から2029年の長期にわたり段階的に実施されており、今年も継続中である。2016年は、1951年生まれの人が原則として65歳5カ月で年金受給開始年齢に達する。今後最終的には、1964年生まれの人から67歳で公的年金を受け取ることになる(2029年)。なお、ドイツの繰上げ支給制度のうち35年以上の長期加入者に対する繰上げ支給は従来通り63歳とするが、受給時に一定の減額がある。また、2007年に導入した「特別長期加入者に対する老齢年金制度」により、45年以上の加入期間を満了した者は65歳からの満額受給が可能である。

参考資料

  • Bundesministerium für Arbeit und Soziales Pressemitteilungen (17.12.2015、01.01.2015)、Die Deutsche Rentenversicherungウェブサイトほか

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