ミシュラン・ロアンヌ工場における事業所レベルの労使合意成立
―設備投資や職業訓練による収益性向上と日曜就労増加等の労組側協力

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係労働条件・就業環境

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2015年9月

タイヤメーカー大手ミシュランのロアンヌ工場で、2014年9月から続けられていた労使交渉が2015年5月に合意に至った。従業員数約850人の同工場は、フランス国内でも古い工場であり、フランス民主労働総同盟(CFDT)は同工場の存続に危機感を抱いていた。今回成立した労使合意では、経営側が設備投資と従業員の技能研修を実施することによって収益性を向上させる一方で、労組側は5直三交代制や日曜就労の実施という勤務体制の変更に応じる内容が盛り込まれている。

工場存続のための労使協議

ロアンヌ工場(注1)は1974年に操業を開始した工場で、フランス国内にあるミシュランの工場の中でも古い工場の一つである。同工場で生産される製品は、小型トラックや四輪駆動車、ワンボックスカー向けの16インチから17インチタイヤが中心となっているが、アジア諸国で生産される製品と競合関係にあるため、同社の他の工場と比べて収益性の低さが指摘されていた。フランス民主労働総同盟(CFDT)は設備投資を行っていないことが同工場の競争力が低い一因であるとして、経営陣に働きかけ、工場存続のための方策に関する労使協議を行っていた。2014年9月に始まった協議は、2015年5月19日に妥結し、使用者と労働組合の連帯・統一・民主労働組合(SUD)、CFDT、管理職組合総連盟(CFE-CGC)が合意書に署名した(注2)

収益性の高い製品への転換と職業訓練の実施

その内容は、世界市場で競争の激しい17インチタイヤの生産が7割を占めるという生産体制から、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニ等の高級車向けで付加価値の高い19インチから21インチの最高級タイヤの生産に集約することを柱とする。ミシュラン・フランスのド・ヴェルディアック社長によると、高級車向け市場規模は年10%の成長が続いているため、2019年までの間に8000万~1億ユーロを投資することとし、最高級タイヤの完全自動生産が可能となる機械設備を導入するという。そのために、従業員の半数以上が、職種や仕事の内容が変わることになるため、従業員の職業訓練を実施するとしている。この投資が実行に移されれば、ロアンヌ工場は、19年にはミシュランの本社があるクレルモン・フェランのレ・グラヴァンシュ工場と並んで収益性が最も高い工場となる。

週35時間制の維持、5直交代制へ

従業員数は、現在の850人(そのうち、770人がフルタイム労働者)から、19年の時点のフルタイム従業員数換算で720人となる見込みである。しかし、19年までの間に従業員の解雇はせず、定年退職者などの離職者の不補充によって、従業員の削減を実現するとしている。20年以降には80人の新規雇用をする予定としている。合意内容には勤務体制の変更も盛り込まれており、現在の週35時間制を維持した上で、4直交代制から5直交代制にすることによって、需要が多い時期のみの運用だった日曜操業の数を増やすことになる。各従業員が年間で日曜日に28回、就業することになり生産性強化に協力するかたちになる。一方で、企業側としては、築40年以上が経過している建物や休憩室、食堂、更衣室などを改修し、職場環境を改善することを約束した。

労使の将来に向けた約束の文書化

経営側はこの合意を歓迎しており、ミシュランのド・ラ・ブレテッシュ社会関係部長は「単なる競争力強化に関する合意」でなく、経営陣と労働組合の相互の約束を文書化した「将来協約」であると強調している。また、ペルシ・デュ・セールロアンヌ工場長も、「労使の意思によって、この工場に未来がある」とし、工場の存続及び発展を歓迎した。ミシュランの今回の労使合意と同様の協約は他社でも締結されており、自動車メーカーでは、PSA・プジョー・シトロエンやルノーが雇用の維持の確約と引き換えに、従業員に対して競争力の強化に向けた努力を求める協約を結んでいる(注3)

主要労組の賛成とCGTによる批判

ロアンヌ工場の従業員の大多数に当たるおよそ830人(95%以上)がこの合意に賛成しており、労働組合も概ね今回の合意に前向きである。SUDの組合代表ジェローム・ロルトン氏は「ロアンヌ工場は、完全な失敗の運命にあったため、他の解決策はない」としており、工場閉鎖への懸念を払拭する今回の合意を歓迎している。ただ、労働総同盟(CGT)は、「現在の雇用水準の維持が確保されておらず、日曜日の就労が増加する」として、この合意には署名はしていない。CGTミシュランのジャン・ミッシェル・ジル書記長は、この合意成立がミシュランの株主総会の三日前であったことに着目して、「株主のため」の合意と批判している。一方で、ミシュランの経営陣は、同様の合意がフランス西部のラ・ロッシュ・シュール・ヨン工場やクレルモン・フェランのラ・コンボード工場など、他の事業所でも締結されることを望んでいる。ミシュラン・フランスのド・ヴェルディアック社長によると、実際にラ・ロッシュ・シュール・ヨン工場(フランス西部、ペイ・ド・ラ・ロワール地域圏)では、既に労使協議が始まっている。

参考資料

(ホームページ最終閲覧:2015年8月25日)

参考レート

関連情報

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。