協議を経た雇用契約の解消、2014年に増加
―失業保険制度改正の影響は見られず

国別労働トピック：2015年2月

解雇によらずに従業員を削減する手段として、協議を経た雇用契約の解消^(注1)は、2008年に導入された。ここ数年で毎年30万件程度利用されている。労働省が15年1月に公表した統計によると、この件数は13年にはいったん減少していたが、14年には増加に転じた。

受理比率の上昇による増加

「友好的な離婚(divorce à l'amiable)」とも言われている協議を経た雇用契約の解消は、経営者にとって手続きが簡単で紛争になる危険性が低いため安全な人員削減の方法として、とりわけ大企業において利用されている。労使で協議した上で、労働監督局(DIRECCTE^(注2))にその結果を通知し、審査を経て承認されるといった手続きが必要である。2014年の合計件数が、33万3413件となり過去最高になった。09年以降の推移を示したのが図表1である^(注3)。この図表から13年の受理件数の減少は、前年に比べて申請件数が若干増加したにもかかわらず、受理率が低下したことによって引き起こされたものと言える。14年には申請件数の増加とともに受理率も上昇し、受理件数が増加している(図表2参照)。

月ごとの件数をみてみると、6月と7月、12月にピークを迎える傾向がある。夏休み前と新年を迎える前に問題を解決したいという意図が伺えると分析されている^(注4)。

図表1：協議を経た雇用契約の解消件数(申請・受理)と失業保険登録者数の推移のグラフ

資料出所：労働省発表データ(参考資料1)より作成

**図表2：協議を経た雇用契約の解消の件数及び割合**
	申請件数	受理件数	割合 (％)	失業保険給付者数	割合 (％)
2009年	230,205	190,789	82.9	118,990	62.4
2010年	286,651	246,080	85.8	213,510	86.8
2011年	314,134	287,338	91.5	235,530	82.0
2012年	341,016	319,897	93.8	252,310	78.9
2013年	341,785	314,380	92.0	262,230	83.4
2014年	360,900	333,413	92.4	—	—

資料出所：労働省発表データ(参考資料1)より作成

注：2014年の失業保険給付に関するデータは9月分までの公表となっており、他の年と比較できないため空欄としている。

失業保険制度改正との関係

14年7月には失業保険制度改正^(注5)が行われ、高額の退職手当や解雇補償金を受け取った場合、失業保険給付を受給できない待機期間が75日から180日に延長された。協議を経た雇用契約の解消の場合、一般的な雇用終了に比べて高額の退職金が支給されるケースが多い。失業保険制度の改正は、この制度の利用を減少させる効果があると見られていた。だが実際には、そのような傾向はみられず、月ごとの件数を前年同月比でみると、むしろ2000件前後の増加が見られる。雇用契約解消の交渉過程では補償として給与の6カ月分以上を支払うという水準で交渉されているという。180日間の失業保険受給待機期間とほぼ同等の期間であるとすれば、今回の制度改正の影響は小さいと言えるかもしれない。

失業保険給付者数及び割合は、図表2に示したとおりである。8割程度が給付を受けている。労働省が13年に行った調査結果によると、協議を経た雇用契約の解消のうち、20％程度が雇用終了直後に次の職に就いていた(参考資料2参照)。今回公表されたデータと比較してみると、10年以降その傾向にさほどの変化がないと考えられる。

注

ruptures conventionnelles（本文へ）
directeur régional des entreprises, de la concurrence, de la consommation, du travail et de l'emploi（本文へ）
2008年は8月から12月の実績のみ確認できるが、その件数は3万1671件である。（本文へ）
Record de ruptures conventionnelles malgré des règles durcies, Le Figaro, 2 septembre 2014（本文へ）
当機構海外労働トピック2014年8月号参照。（本文へ）