企業年金、税制面で有利に
―中小企業などへ制度の拡大図る

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  • 国別労働トピック:2014年1月

民間企業の従業員を対象とした企業年金の新たな仕組みが1月1日にスタートした。従業員の所得税から従業員個人の拠出分を控除したほか、企業の拠出分と運用益について従業員に課税されていた所得税を非課税とした。大企業に集中している企業年金を、中小企業を含め広く普及させるのが目的だ。

拠出額を所得税から控除など

中国の年金保険制度は三つの柱で構成されている。強制加入の「基本年金」と、任意加入の「補充年金」、さらに「個人貯蓄年金」である。このうち、補充年金には、政府系の職員・従業員を対象とする「職業年金」、一般企業の従業員を対象とする「企業年金」の2種類が存在している。政府系と企業の従業員は、基本年金に加入したうえに、当該の補充年金で年金額の上乗せを図っている。補充年金はいずれも確定拠出型である。

財政部、人的資源社会保障部、税務当局は昨年12月、「企業年金・職業年金の個人所得税に関する通知(以下:通知)」を発表し、新年1月から新制度がスタートした。新制度は

企業年金と同じ内容で、職業年金のほうでも税制面の仕組みを変える。まず、従業員の年金拠出額について、賃金の4%を上限に、所得税から控除する。企業の拠出分と途中の運用益は、当該従業員の所得税注1としてこれまで課税されていた。これらを非課税とする。年金の給付時の課税は従来と変わらない。なお、税制面では、職業年金と企業年金は今回の措置の前後で同じ扱いとなっている。

この措置によって、拠出時の「入口」と運用時の「途中」が非課税(Exempt)、給付時の「出口」が課税(Tax)となることから、「EET型」の年金となった。そのため、米国のEET型の「401K年金」になぞって、現地報道は、「中国版401Kのスタート」「401K式の非課税制度が実施される」などと伝えている。

大企業に集中する企業年金

人的資源社会保障部が発表した「全国企業年金基本業務データ摘要(2013年第2四半期」によると、13年6月時点で、企業年金の導入企業数は5万9362社、加入従業員は1,957万人、基金総額は5367億元に達している。 12年末の時点で見ると、企業年金の基金総額は、都市部の基本年金の基金総額の20.14%に当たる。しかし、加入人数では、企業年金は基本年金の6.07%に過ぎない(表)。企業年金を設けているのは、寡占・大企業がほとんどだ。電力、郵便、石油、国有銀行などで、沿岸地域に集中している。中小企業での導入は皆無に近い。

表:中国暦年企業年金基本状況と割合
導入企業数 企業年金加入従業員数(万人) 企業年金基金累計額(億元) 都市基本年金加入従業員数(万人) 割合(企業年金加入従業員/都市基本年金加入従業員) 都市基本年金基金累計額(億元) 割合(企業年金基金累計額/都市基本年金累計額)
2007年 32,000 929 1,519 20,137 4.61% 7,391 20.55%
2008年 33,100 1,038 1,911 21,891 4.74% 9,931 19.24%
2009年 33,500 1,179 2,533 23,550 5.00% 12,526 20.22%
2010年 37,100 1,335 2,809 25,707 5.19% 15,365 18.28%
2011年 44,900 1,577 3,570 28,391 5.55% 19,497 19.31%
2012年 54,700 1,847 4,821 30,427 6.07% 23,941 20.14%
2013年第1四半期 57,485 1,934 5,134 30,552 6.33%
2013年第2四半期 59,362 1,957 5,367 31,076 6.30%
  • 出所:「人的資源社会保障事業発展統計公報各年版」
  • 「企業年金基金業務データ摘要各年各季版」
  • 「2013年第1四半期人的資源社会保障データ」
  • 「2013年上半期人的資源社会保障データ」

今回の税制優遇政策の導入によって、企業年金への参入が広がることが期待されている。従業員が企業へ就職する際、賃金水準に加えて、福利厚生の水準も考慮にいれるようになっている。優秀な人材を確保し、定着させるためにも、企業は年金制度の整備が求められている。今回の措置は、税制を優遇することによって、企業年金の設置を企業に促すのが狙いだ。

参考文献

  • 委託調査員資料、人的資源社会保障部、21世紀経済報道、人民網、第一財経日報、南方週末、経済参考報

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