失業者数、過去最多を更新
―4月末時点で326万人、政府発表

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2013年7月

政府の発表によると、フランス本土における4月末時点での失業者数は、前月比1.2%増の326万4400人となり、先月に記録した過去最多の数字を更新した。失業者数の増加は24カ月連続注1。エコノミストによる見方では失業者数が減少に転じるのは2014年以降になるというのが一般的だが、オランド大統領は失業者数を年内に減少に導くという目標を改めて強調している。しかし就任以来打ち出してきた雇用対策は予定した効果が発揮しているとはいえない。

政府の発表によると、フランス本土における4月末時点での失業者数は前月より1.2%増加し、326万4400人となった。失業者数の増加は24カ月連続となっており、3月に従来の記録(1997年の319.6万人)を超え過去最大となったが、さらに更新する結果となった。エコノミスト等による予測では一様に失業者数が減少に転じるのは2014年以降になるとされているなか、オランド大統領は失業者数を年内に減少に導くという目標を改めて強調したが、就任以来打ち出してきた雇用対策は予定した効果が発揮されずにいる。

若年者、高年齢者で高い増加率

フランスで一般的に失業者として捉えられるカテゴリーAの求職者注2(海外県を除く本土のみ、以下、特筆しない限り同様)は、2013年4月末時点で326万4400人になり、前月末と比べて1.2%の増加、前年同月末と比べると12.5%の増加であった注3

カテゴリーAの求職者を年齢階層別にみると、25歳未満が56.2万人、25歳以上50歳未満が200.8万人、50歳以上が69.6万人であった。その増加率を見てみると25歳未満のカテゴリーAの求職者数が前月末比で2.0%増、50歳以上が1.3%増となっている。前年同月末比ではそれぞれ、12.7%増、17.4%増であった。これに対して、25歳以上50歳未満の年齢層では、それぞれ1.1%増、10.8%増だった。若年者と高年齢者の求職者数の増加率が高いことがわかる。

失業の長期化が進む

失業期間(求職者登録の期間)が1年以上の長期失業者数の増加が続いている。カテゴリーA~Cの求職者注4479.9万人のうち189.4万人が、1年以上の求職者登録をしていた。求職者登録の期間が1年未満の者は287.7万人で、前月末比で1.1%増、前年同月末比で7.9%増であったのに対して、同期間が1年以上の者は、それぞれ、1.5%増、15.4%増に上っていた。また、2013年3月の1カ月間にカテゴリーA~Cの求職者登録リストから離れた者の平均登録期間は257日に達し、前年より6日長くなっている。失業の長期化が進んでいることが改めてわかった。

失業率では過去最高には至らず

フランス国立統計経済研究所(INSEE)によると、労働力人口(15歳以上)は、1997年に2562.7万人(フランス本土、年平均、以下同様)であったが、それ以降増加を続け、2011年注5には、2839.0万人となった注6。すなわち、14年間に276.3万人増加したことになるが、これは生産年齢人口の増加と女性の労働力率の上昇が主な要因とされている。生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は1997年の3793.7万人から、287.2万人増加し、2011年には4080.9万人となった注7。また、同年齢層の女性の労働力率注8は、同期間に61.4%から66.2%に上昇した。ちなみに同年齢層の男性の労働力率は、同期間に75.1%から74.8%へ微減している。このような労働力人口の増加傾向を踏まえて、2013年4月末時点の失業者数そのものは最高を記録したが、失業率は最高になってはいない。失業率は1997年第1四半期から第3四半期にかけて10.8%であったが、2013年第1四半期では10.4%にとどまっている(海外県も含む数値では10.8%)。ただ、経済紙Les Echosのエコノミストであるド・コマルモン氏は、労働力人口の前提条件の違いなどによって1997年時点とは異なる状況であることを指摘しつつ、長期失業者の増加を危惧している。また、失業率は前年同期の9.6%から顕著な上昇を続けていることにも留意すべきである。

新たな雇用対策がなく、景況指数も好転せず

政府は今年末までに失業者数の増加に歯止めをかける目標を掲げている。ただ、2012年に0.0%にとどまっていたフランスの経済成長率は、2012年第4四半期、2013年第1四半期と続いてマイナス0.2%となり景気後退が鮮明となっている。また、INSEEが算出している景況指数注9も低い状態を推移している。この数値は主な産業の経営者を対象に実施した生産や売上、雇用等の実績と見通しなどに関する調査の結果をまとめて指標化したもので、平均で100となるように調整される。つまり好景気の時には、100を超える数値であるが、今年2月以降の景況指数は、84から88の間で推移している。産業別では、製造業が90前後にとどまっており、建設業が91から93、小売業が86から90を推移しており、サービス業では84となっている。このように、景気が好転する見通しが立たない中、雇用状況の改善の見込みは立っていない。

政府は、「将来雇用制度」や「世代契約制度」の創設注10や職業訓練制度の活用の強化などの施策の効果を期待している。また、労働者の権利を拡大すると同時に、2013年1月11日に労使間での雇用の柔軟性を高める合意注11に関する法整備が進められている。ただ、Les Echos紙によると、これが直ちに雇用につながるわけではないという見方をしており、「将来雇用制度」による契約件数も政府が当初予想した件数は達成できていないのが実情である。

参考資料

  1. Demandeurs d’emploi inscrits et offres collectées par Pôle emploi en avril 2013 リンク先を新しいウィンドウでひらく(mai 2013) (2013-033)
    http://travail-emploi.gouv.fr/IMG/pdf/PI-Mensuelle-PEP500.pdfリンク先を新しいウィンドウでひらく
  2. Demandeurs d’emploi inscrits et offres collectées par Pôle emploi en mars 2013 (avril 2013)(2013-028)
    http://travail-emploi.gouv.fr/IMG/pdf/PI-Mensuelle-MAT851.pdfリンク先を新しいウィンドウでひらく
  3. LAFFITEAU Cécile, BLOUARD Jean-Paul, « Qui sont les allocataires indemnisés par l'Assurance chômage ? », Eclairages, études et analyses, no 5, Unédic, avril 2013
  4. Par Leila De Comarmond, « Vive hausse du chômage, des seuils symboliques franchis.リンク先を新しいウィンドウでひらく », Les Echos
    Par Leila De Comarmond, «Chômage : deux records probablement franchis en mars.リンク先を新しいウィンドウでひらく », Les Echos, 4月24日

(ホームページ最終閲覧:2013年6月28日)

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