雇用情勢が改善、パート増加で
―長期失業者は依然増加

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  • 国別労働トピック:2012年5月

統計局が4月に発表した雇用関連統計によれば、12-2月期の就業数は前期(9-11月期)よりも5.3万人増加、失業者数は3.5万人減った。雇用状況は2011年3-5月期以来の改善を見せている。しかし、就業者数の増加の大半を男性パートタイム労働者が占め、また、1年を超える長期失業者の増加が続いている。

12月-2月期の就業者数は2917万人、失業者数は265万人。失業率は前期よりも0.1ポイント減少して8.3%を記録した。若年層(16-24歳)の失業率は22.1%で、0.1ポイント改善した(失業者数103万3000人)。就業者数の増加の大半を男性パートタイム労働者が占める一方、フルタイム労働者は女性を中心に引き続き減少している。女性の雇用状況は2008年の経済危機以降、悪化の傾向が止まらない。フルタイムの仕事がないためにパートタイムで働いている労働者は、1992年以来の調査開始以来、最高の140万人を記録し、2008年以降から4年間で2倍に増えた。2012年3月の求職者手当申請数は161万人で、失業者のうち、申請期間1年未満が減少し、1年超がその減少数を上回った結果、前月から3600人増えている。

シンクタンクのCIPDは、男性パートタイム労働者の増加は失業者数の抑制につながったとして積極的に評価している。女性の失業者数の増加については、公共部門における人員削減の影響の可能性を指摘。僅かとはいえ雇用状況の改善は、景気の二番底を回避できたことを示唆していると考えられる、とコメントした。

フルタイム・パートタイム労働者の対前期増減(千人)

フルタイム・パートタイム労働者の対前期増減(2007-2011年)

出典:Office for National Statistics

しかし、前後して統計局が公表した2012年第1四半期の経済成長率(一次推計)はマイナス0.2%で、前期のマイナス0.3%に続いて2期連続のマイナス成長となり、経済は統計上、再び景気後退期に入った。政府はユーロ圏の不調が一因と説明しているが、マイナス成長に大きく寄与したのは建設業の低迷(マイナス3%)で、緊縮財政に伴う公共事業の削減よるものとの見方が強い(注1)。このほか、製造業を含む生産部門もマイナス0.4%と縮小、サービス業の成長率はほぼ横ばいのプラス0.1%となった。

建設業の成長率は二次推計以降での修正が大きい傾向にあることもあり、経営者団体のCBI(イギリス産業連盟)やBCC(イギリス商業会議所)は、各種の企業調査の結果はむしろ景気が回復基調にあることを示しているとして、統計局のデータに不信感を示している。しかし、今後の修正により逆に全体の成長率が上向くことは難しく、最大限でも横ばいとなるとみられる。

「ユース・コントラクト」開始

政府は4月から、若年層向け支援策のパッケージである「ユース・コントラクト」を開始した。25歳未満の16万人分の雇用に最高2275ポンド(年間の社会保険料を上回る額)を助成するほか、18-24歳の求職者手当受給者に対して、3年間で25万人分の就業体験の機会を追加する。また、初めてアプレンティス(見習い訓練生)を受け入れる使用者に対して支給を決めている1500ポンドの手当の支給件数を2万件から4万件に引き上げる。さらに、16-17歳層のニート55000人に教育訓練または訓練つき雇用の場を提供するというものだ。

就業体験プログラムをめぐっては、その一部が実質的に無給労働を強制しているとの批判の高まりから、多くの大手企業が不参加を表明し、政府が部分的な制度改正を余儀なくされるに至っている。また、将来の雇用につながらない未熟練の仕事に従事させられ、終了後の採用機会も提供されないケースがメディアで報じられるなど、批判を集めてきた。制度を所管する雇用年金省はこうした批判に応えて、就業体験プログラムの効果に関するレポートを公表した。これによれば、プログラム参加者は非参加者に比べて、給付からの離脱率が6ポイント(参加者46%、非参加者40%)、就職率が8ポイント(同35%、27%)高まるという(注2)。

また、CIPDとジョブセンターは、就業体験の実施に関して昨年公表した使用者向けガイダンスを4月に改定、10カ条の「就業体験の質に関する憲章」(Work Experience Quality Charter)を盛り込んだ。「憲章」は、個々の若者のニーズや境遇への配慮、提供する支援や指導等の明確化、参加者やプログラムの適正な管理などに交じって、就業体験を求人の補充に利用しないことなどを使用者が誓約する内容だ。グレイリング雇用担当大臣は憲章を称賛し、企業に参加を求めている。また、若年層はより就業経験もスキルもある外国人労働者と競争しなければならず、不利な状況にあるとして、就業体験を通じた就業経験の蓄積の有用性を主張している。

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