IGメタル、フォルクスワーゲン社と3.2%の賃上げで合意

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2011年3月

IGメタル(金属産業労組)は2月8日、欧州最大級の自動車会社であるVW(フォルクスワーゲン社)と交渉の結果、3.2%の賃上げに合意したと発表した。新しい賃金協約の有効期間は2012年5月31日までの16カ月間である。今後VWは、2月から4月までの間に従業員に対して、各人の年間給与の1%に相当する一時金(最低500ユーロを保障)を支給した上で、3.2%の賃上げを5月1日から実施する予定。新しい協約は同社の国内工場と子会社等に適用され、約10万人の従業員が対象となる。

ストライキ回避の思惑も

IGメタルは当初6%の賃上げを求めており、一方VWは2.9%の賃上げと300ユーロを下限とする一時金を提示していた。
現地の報道(Deutsche Welle)によると、好調な販売実績と新興市場での需要急増を背景に、ストライキを回避したいというVW側の思惑もあり、3回目の交渉で今回の妥結にいたった。
 VWの2月9日の発表によると、VWブランドの1月の販売台数は41万8800台で、前年同月比で16.5%増加している。特に中国を含むアジア・太平洋地域では31.5%増だったほか、インドでは10倍に増加するなど非常に好調な販売実績が続いている。VWでは、今後2018年までに世界で新たに4万人を雇用する計画で、うち3万5000人は中国での採用を予定している。中国におけるVWの昨年全体の販売実績は前年比36%増と急速に伸びており、これに対応するために中国現地での生産を拡充する方針とみられている。

労使および専門家の反応

労使は、ともに今回の交渉結果を好意的に捉えている。IGメタルの交渉担当者であるハルトムート・マイネ(Hartmut Meine)氏は「今回の労使合意は、堅調な経営状況と業績を反映し、労働者への支払いを考慮した結果で、妥当である」と述べ、一方VWの人事責任者であるホルスト・ニューマン(Horst Neumann)氏は「会社と労働組合はともに納得のいく妥当な賃上げで合意に達することができた」と述べた。
 ただ、バークレイズ・キャピタルの経済専門家であるトールステン・ポライ(Thorsten Polleit)氏は「今回のVWの賃上げ合意は、現在進行している賃金抑制の傾向を示している可能性もある」として、今回の賃上げに若干の懸念を表明している。賃上げについては、昨年9月末のIGメタル鉄鋼部門の労使交渉では3.6%と、今回の賃上げよりも高い率で合意した実績があり、1月に発表されたユーロ圏のインフレ率は過去2年間で最も高い2.4%だった。

IGメタルの今後の取り組み

IGメタルでは、今後も引き続き業績やインフレを考慮しながら他産業で賃上げなどの交渉をすすめる予定だが、同時に昨年秋から取り組みを強化している非正規の労働条件向上にも力を入れるとしている。
 2月24日には、ドイツ労働総同盟(DGB)や統一サービス産業労組(Ver.di)と合同で、非正規労働者の労働条件向上や均等待遇促進に関する全国キャンペーンを実施したが、これに呼応してVWやダイムラーでは同日、計数千人の非正規労働者を常用雇用とすることを発表し、労働組合側にとって幸先の良いスタートとなった。
ただ、今後もこのような動きが他の産業や企業で広がるかどうかは不明である。

参考資料

  • IGメタルプレスリリース(2月8日付、25日付)、Deutsche Welle(2月8日付)、AFP(2月8日付)、欧州労使関係展望オンライン(EIRO)(1月28日付)

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=113.39 円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2011年2月24日現在)

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