景気回復による雇用増は若者と高齢者へ
労務管理の専門団体であるCIPD(人材開発協会)が12月に発表したレポートによれば、2010年中に増加した就業者数のほぼ全てを35歳未満層と50歳以上の高齢者層が占め、中年齢層(35~49歳層)はほとんどその恩恵を被っていなかった。男女別には男性の比率が高く、また9割以上がパートタイム雇用だという。
同レポートは、労働力調査のデータを用いて、今年1-3月期から7-9月期の間に増加した35万人分の雇用の内訳を分析、18~34歳層が67%、50歳以上層が38%を占める一方、35~49歳層ではむしろ雇用が5%縮小していることを示した。形態別には、被用者が63%、自営業者30%、無給の家族従業者などが7%となっている。また、被用者の増加分の95%をパートタイムが占め、フルタイム雇用はほとんど増加していない。さらに、大半が男性の雇用増(83%)だ。
CIPDのチーフ・エコノミック・アドバイザーのフィルポット氏は、中年齢層が雇用増から取り残されている理由について、いくつかの可能性を指摘している。若者や高齢者に比べて政府からの支援が手薄だった、賃金額がピークにさしかかる時期であることから企業に雇用されにくかった、若者や高齢者に比べてパートタイム雇用に対する収入面での抵抗感が強く働いた、あるいは若者や高齢者のように、就学や退職を通じて非労働力化するという選択もしにくかった、など。景気回復により、フルタイムかつ期間の定めのない雇用が増加すれば、中年齢層の雇用状況も改善するとみられるが、2011年は2010年ほどの成長が期待できないとの見方が強く、このため今後しばらくは同様の状況が続く可能性が高い、とフィルポット氏は述べる。
また同氏は、不況期から回復期にかけての男女間の対照的な雇用の推移に言及。不況期には、民間部門のフルタイム労働者の減少を通じて男性の雇用が打撃を受けたのに対して、女性は公共部門の雇用増により相対的に不況の影響を免れた。一方、目下の景気回復で男性の雇用は民間部門を中心に復調しているが、女性については今後の歳出削減による公共部門での雇用減の影響を少なからず被ると推測している。なお、統計局が12月15日に発表した雇用関連統計によれば、公共部門では2010年前半から雇用の減少が続いており、7-9月期の雇用は前期(4-6月期)から3万3000人減。一方、民間部門では2009年末から2010年半ばにかけて雇用が増加してきたが、7-9月期の雇用は横ばいとなり、公共部門における人員削減は民間部門の雇用増により吸収可能、との政府の主張に早くも水を差した形となった。
就業者数 | (変化率) | 失業者数 | (変化率) | 非労働力 | (変化率) | |
16-17歳 | -2 | (-0.5) | -19 | (-9.2) | 2 | (0.2) |
18-24歳 | 87 | (0.0) | -19 | (-2.5) | -56 | (-3.2) |
25-34歳 | 147 | (2.3) | -38 | (-6.9) | 17 | (1.4) |
35-49歳 | -16 | (-0.1) | 17 | (2.7) | -50 | (-2.6) |
50-64歳 | 66 | (0.9) | 6 | (1.6) | -12 | (-0.3) |
65歳以上 | 68 | (87.0) | -5 | (-0.2) | 32 | (0.4) |
男性 | 289 | (1.9) | -110 | (-7.1) | -72 | (-0.4) |
女性 | 62 | (0.5) | 52 | (5.4) | -28 | (-0.2) |
計 | 350 | (1.2) | -58 | (-2.3) | -100 | ( -0.5) |
出典:"Work Audit - The 2010 Jobs Recovery" CIPD
参考資料
- "Work Audit - The 2010 Jobs Recovery
", CIPD
- "Labour market statistics December 2010", Office for National Statistics
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