長期失業者に特別手当支給など
―新たな失業者対策プランを発表

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2010年6月

フランスでは、失業手当の受給権を喪失し無収入となる者が今年新たに36万人に上ると予想されている。サルコジ大統領は4月15日、これら長期失業者に対し、「特殊雇用契約」(注1)を締結しての採用や職業訓練の強化を打ち出すとともに、特別手当支給制度を創設する新たな失業者対策プランを発表した。新たに打ち出された施策の財政規模は7億ユーロと予想されている。

フランスの失業保険制度の手当は種類が多く制度も複雑であるが、大部分の失業者に支給される手当は「雇用復帰支援手当ARE(Allocation d’aide au retour à l’emploi)」と呼ばれる。これは支給期間は原則加入期間に準じるが、年齢により上限が定められている。失業手当の受給期間を終了するものは毎年80万人から85万人に上ると見られるが、公共職業安定所の推測によると、今年は経済危機以前と比較して15万人から20万人多い100万人規模に達する見込みだという。これら失業手当の受給期間が終了した者に対しては、再就職する者を除き、「積極的連帯所得手当RSA(Revenu de solidarité active)」 (生活保護に相当)、「特別連帯手当ASS(allocation de solidarité spécifique)」( 失業保険の受給期間を終了した長期失業者を対象)が用意されている。しかしながら、RSAやASSは世帯収入を基準に支給されるため、例えば配偶者の収入が一定額以上の場合は支給されない。そのため、失業手当の支給期間の終了した者の中には完全に無収入となる者も存在し、その数は2010年に36万人となる見通しである(注2)。

このような者に対する救済策として政府が打ち出した新たな失業対策プランは、(1)民間企業で5万人を特殊雇用契約により採用(特殊雇用契約予算を5万人分増) (2)地方自治体や非営利団体などで12万人を特殊雇用契約により採用(同12万人分増)(3)7万人に職業訓練を受講させながら報酬(平均で650ユーロ、支給額の基準は不明)を支給(4)上記の3対策から漏れた者(7万人~11万人と想定)に対して、「雇用復帰支援特別手当(Aide exceptionnelle de retour à l’emploi)」 を1カ月当たりおよそ460ユーロ(単身者のASSと同額)、最長で6カ月間支給するという内容。この対策の財政出動規模は総額7億ユーロに上り、国や全国商工業雇用連合UNEDIC(Union nationale pour l’emploi dans l’industrie et le commerce)などが負担する。

この対策は2010年1月1日以降に失業手当の受給権を喪失し一切の収入がなくなった者で、かつRSAやASSの受給権を持たない者を対象とする。(4)の「雇用復帰支援特別手当」は、世帯収入が高い場合には支給されない見込みであるが、その基準額はRSAやASSを上回る。従って、今回の対策はいわば「中間層」(注3)向けであり、支給対象者を特殊雇用契約での就職や職業訓練から漏れた者に限っていることから、セーフティー・ネットとしての意味合いが強いと考えられる。

サルコジ大統領は、4月15日、パリ北郊の街ゴネスの公共職業安定所を視察した際、この新プランを発表した。この政府の対策に対しては、主要経営者団体であるフランス企業運動MEDEF、中小企業総連盟CGPME (Confédération générale du patronat des petites et moyennes entreprises)、手工業者連盟UPA(Union Professionnelle Artisanale)」が、また主要労働組合のうちフランス民主労働同盟CFDT、労働者の力FO、フランスキリスト教労働同盟CFTC、管理職組合総連盟CGCが同意を示した(労働総同盟CGTは拒否)。この対策は今年中には施行される見通し。また政府はこの対策を今年限りの措置とする方針を明らかにしている。

出所

  • 大統領府サイト、海外委託調査員ほか

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=113.01円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年6月4日現在)

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