DGBゾンマー会長続投、三期目へ
5月17日の全国大会(注1)で、ドイツ労働総同盟(DGB)は現職のゾンマー会長(Michael Sommer)を選出した。ゾンマー会長は、前回大会(2006年)の得票率78.4%を大幅に上回る94.1%を獲得し、三期目の続投となる。これは、13年(1969~1982年)に亘りDGB会長を務めたフェッター氏(Heinz Oskar Vetter)に次ぐ長さである。
副会長には、同じく現職のゼアブロック氏(Ingrid Sehrbrock)が再選された(得票率60.7%)。
使用者や政府との良好な関係を強調
DGB中央執行部を選出する大会は、4年毎に開催し、今回で第19回目となる。本部のあるベルリンで5月16日から20日まで開催された。DGBおよびWorld Socialist Web Siteによると、ゾンマー会長は、初日に約400人の組合幹部と約600人の招待客の前で演説を行い、金融危機から現在までの労働組合と従業員代表委員会(注2)の連携による功績を称えた。また、来賓席にいたドイツ使用者連盟(BDA)のフント会長(Dieter Hundt)に向かって「使用者、従業員代表委員会、労働組合の三者は、短時間労働の活用に関して素晴らしい協力を行い、危機の影響軽減に成功した。このような労使協力の重要性を今後も忘れないでほしい」と語った。同日メルケル首相も出席したが、ゾンマー会長は「メルケル首相と私は、今回の危機で、政府と労働組合は対立するよりも協力し合った方が良い結果を生むことを学んだ。この経験は、政府と労働組合相互の信頼関係の改善につながった」と述べて、現政権との良好な関係を強調した。
第19回 DGB全国大会の様子(連合提供)
新時代における労組の役割
DGBの組合員数は、減少傾向にある。1993年に1,029万人だった組合員数は、2008年末に637万人にまで落ちこみ、減少が続いている。そのためDGBが真に労働者全体の利害を代表しているのかを疑問視する声もある。ゾンマー会長はこの点について「今後ドイツ社会には『新しい秩序』が必要だ。DGBはその中で自ら新しい役割を見つけていくべきである。今後は傘下の労働組合員のみならず、労働者全体や弱者のために、そして社会的均衡を推進するために労働組合は重要な役割を果たさなければならない」と述べた。
国際的な連帯も視野に
ゾンマー会長は、ドイツ国内のみならず国際的な労働者の連帯にも力を注いでいる。今回の大会には、世界中の労働組合幹部148人が招待された。日本からは連合が海外来賓として出席した。
複数の報道によると、ゾンマー会長は6月末の国際労働組合総連合(ITUC)世界大会で選出予定(注3)の次期会長候補に名を連ねている。しかし、ITUC規約では「会長は、地域組織が設立されている地域の中から輪番制で選出されるものとする」とされており、DGBが加盟する欧州労連(ETUC)はITUCの地域組織ではないため、この点が課題となりそうだ(注4)。
注
- DGB-Bundeskongress
- Betriebsrat
- 正確には、ITUCの大会で選出された執行委員会が、大会直後の会合で会長を選出する。
- ITUCには、その完全な地域組織とはいえないものの、ETUC(欧州労連)と共同でPERC(汎欧州地域評議会:Pan-European Regional Council)が2007年3月に設立され、欧州地域の労働者の意思を吸い上げるチャンネルが設けられている(連合ホームページ
)。また、今年6月に開催されるITUC執行委員会において、現行の「地域組織」から「地域組織もしくは地域機構」とする規約改正の提案がされる予定である。
参考資料
- DGBプレスリリース(10年5月17、18日)、Deutsche Welle (10年5月17日)、AFP(10年5月21日)、World Socialist Web Site(10年5月22日)、ZDF(10年5月17日)、連合ホームページ
2010年5月 ドイツの記事一覧
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