雇用のアウトソースと経費削減に利用される高技能外国人労働力
―H-1B、L-1ビザ活用企業の分析から

カテゴリー:外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2010年3月

経済政策研究所(EPI)が2月17日に発表したレポートによると、高技能の外国人労働者を対象としたH-1BビザやL-1といった一時滞在ビザプログラムは、本来有能な外国人労働者をアメリカに永住させる第一歩として活用されるべきであるが、実際にはアメリカ国内の雇用機会を海外にアウトソースし、一時的な低コストの外国人労働者を雇い入れるために利用されていると指摘している。

同報告書は、多くのH-1Bビザの高技能労働者を雇用している20社を検証した結果、滞在期間満了後に、永住滞在の申請が提出されたのは13%程度にとどまり、社内転勤ビザであるL-1ビザでは7%程度であったとしている。

タタ・コンサルタント・サービスは、2008年にH-1Bビザ申請で4番目に多い企業であるが、永住滞在の申請件数はゼロであった。また、IBMインディアもH-1Bビザで10位、L-1ビザで4位に位置するが、永住滞在申請は行われていない。このほか、第2位のウィプロでも31人(H-1Bビザ承認数に占める割合で1.16%)、第3位のサットヤ・コンピューター・サービスは10人(同0.52%)であった(表1参照)。

表1:H-1Bビザ活用企業と永住申請件数(2008年
  順位 承認数 永住申請数 割合(%)
インフォシス・テクノロジー 1 4559 237 5.20
ウィプロ 2 2678 31 1.16
サットヤム・コンピューター・サービス 3 1917 10 0.52
タタ・コンサルタンシー・サービス 4 1539 0 0.00
コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ 7 467 332 71.09
ラーセン・アンド・ターブロ 9 403 11 2.73
IBMインディア・プライベイト 10 381 0 0.00
パットニ・アメリカス 13 296 37 12.50
テラ・インフォテック 14 281 7 2.49

資料出所:経済政策研究所資料

これらの企業は、外国から労働者をH-1BあるいはL-1ビザ滞在労働者として受け入れ、アメリカ人労働者とともに実務をこなすことによって技術や技能を習得し、トレーニングが終了した後、本国に帰国させてアメリカ人よりも安い賃金で雇用していると報告書は指摘している。

マイクロソフトやグーグル、クアルコムといった企業もH-1Bビザのヘビーユーザーであるが、一時滞在の就労形態から永住滞在の労働者の方を多くする傾向が見られる。マイクロソフトはH-1Bビザ承認数が1037人であるのに対して永住申請数が703人(68%)であった。グーグルは207人に対して108人、52%であった。また、シスコやプリンス・ジョージ・カウンティ・パブリック・スクールなどでは、H-1Bビザ労働者の4分の1から3分の1程度を永住滞在の労働者に切り替えている。

同報告書は、一時滞在外国人労働者のプログラムをアメリカにとっても、外国出身の労働者にとっても利益となるように改革すべきであると指摘し、高技能労働者が必要となるときには、まず第一に永住滞在の労働者から活用すべきであると主張している。

参考資料

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