「国家雇用戦略2020」を発表

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  • 国別労働トピック:2010年11月

政府は10月12日、2020年までに就業率を70%にまで引き上げることを目指すとした「国家雇用戦略2020」を発表した。同戦略には韓国が先進諸国と肩を並べるために必要な5つの優先課題、(1)地域および企業における雇用創出、(2)公正で活力のある労働市場の構築、(3)仕事と家庭を両立させる雇用の拡大、(4)高齢者への「生涯二毛作」の推進、(5)就業による貧困からの脱出への支援――が明記された。

地域および民間主導の雇用創出

「国家雇用戦略2020」は、雇用創出は中央の施策だけでは困難とした上で、民間部門および地方政府の連携が重要であると指摘している。これに沿って、政府代表と経済団体の代表者が集まり、若年失業問題やその他未解決の労働問題について検討できる協議機関の設立が決定された。また、地方政府と民間企業がより多くの雇用を創出するのを促進するため、雇用創出において優れた成果を上げた上位100社のリストを毎年発表し、表彰する計画も盛り込まれた。加えて、予算編成、課税、産業対策、公的調達などが雇用優先で実施されるよう求めている。このため、大規模な国家プロジェクトを対象とした雇用影響調査が今後徐々に拡大される予定である。

公正で活力のある労働市場の形成

同戦略は、下請企業の雇用慣行、派遣労働および有期労働に関する規則、長時間労働慣行などが、若年労働者に見られる中小企業(SME)の忌避傾向や労働市場の二重構造化の原因となっているとの認識に立ち、この改善が活動の中心になるとしている。

具体的にはまず、自動車業界や造船業界を始めとする5つの業界の29の企業における下請企業の雇用慣行に関する調査結果に基づき、間接雇用から直接雇用に変更するよう指導が行われるほか、建設業界における諸問題、すなわち賃金カット、賃金不払い、熟練労働力不足、外国人の違法雇用――などに対処するための対応策を発表するとしている。

また、来年以降、実労働時間を削減するための労働基準法の改定が予定されている。従来1000人以上の事業所に適用されていた週40時間労働が、2011年の7月から従業員数20人未満の企業についても適用となる見込み。また、休暇の代替えとなる超過勤務、休日勤務、夜間勤務を行なうことが可能となる「労働時間貯蓄口座制度」の導入も盛り込まれた。

さらに、現在派遣労働が認められている32の職種は2011年前半に変更される予定であり、有期雇用契約の期間制限についても見直されることとなっている。

仕事と家庭の両立への支援

女性のパートタイム労働における雇用の不安定さが課題となっていることから、パートタイム労働に従事する女性の継続的雇用拡大を念頭に、仕事と家庭の両立を支援する一連の施策が盛り込まれた。この施策を後押しする「パートタイム労働者に対する需要拡大およびこれら従事者のための法律」が来年前半に公布される予定となっている。同法には、育児および介護のための勤務時間短縮や部分休暇取得などの規定が盛り込まれる。

また、両親の子育て休暇取得資格の対象となる子供の年齢の上限(6歳)が引き上げられるとともに、支出増に対して資金を提供する施策を講じることも検討されている。特に労働力不足に悩んでいる業界や職種において、特別なプロジェクトが実施される。加えて、公共部門においてもパートタイム勤務が拡大されることになるとしている。

例えば「失業中の看護師のための雇用創出プロジェクト」はその一環。推定9万人以上の看護師の支援を目指す。無期限の雇用契約でパートタイム看護師を雇用する者には、1年間、看護師1人につき1カ月最高40万ウォンの補助金が支給される見込み。一方、職を失った看護師には、雇用あるいは再雇用のための訓練や教育を受ける費用の負担などの支援が提供されるとしている。

「生涯二毛作」を通じた高齢者(ベビーブーム世代)支援

経済活動人口に占める割合が急速に増加している55歳以上の人々(ベビーブーム世代)の雇用を拡大するため、「生涯二毛作」と称する支援を行なうとしている。

来年には「労働時間に基づく賃金ピーク制度」が導入される予定で、これに伴い高齢労働者が短時間勤務に移行した場合に、その所得減少分に対して補助金を支給する制度の導入が検討されている。一方政府は、労働時間の長さを調節することなしに、単に減少した賃金を補填するに過ぎない遅延退職賃金ピーク制度に基づく補助金を廃止することを決定した。

さらに、退職年齢に近い高齢者の職業流動性を高める目的で、職業転換への補助金の資格要件が緩和される見込みだ。なお、高齢者の呼称をgo-ryeong-ja(高齢者)からjang-nyeon(中年)に変更することも検討されている。

労働インセンティブを持つ社会的セーフティーネットの構築

同戦略は、基礎生活保障手当(生活保護)受給者が福祉に頼って生活するのではなく、貧困の罠から抜け出すのを支援する目的で総合的な計画を策定するとしている。昨年、就労能力があると見られる28万人の手当受給者のうち、職に付くことが求められた人々はわずか2000人(0.7%)に過ぎなかったという。政府は今後全手当受給者の調査を実施し、就労能力を持つ者を切りだすとともに、調査結果に基づき個々の貧困撲滅計画を作成し、雇用支援プログラムに参加するよう指導するなどの施策を展開していくとしている。

政府は、この戦略により今後10年間で年平均24万の雇用を創出し、2020年までに就業率を62.9%(2009年末現在)から先進国水準の70%にまで引き上げることを目指す。同戦略についてパク・ジェワン雇用・労働相は、「戦略は国家レベルで雇用問題に対処する初めての包括的な計画であり、今後の経済発展において極めて重要な意味を持つ。政府は、この戦略の成果を3カ月毎に監視し、1年毎に行動計画を見直していく」と述べた。また、経済団体との協力が必要な問題(例えば若年雇用問題など)に関しては、「関係する省庁が一致協力して懸案事項の解決にあたる」としている。さらに、使用者と労働組合の見解が大きく異なる法律問題に関しては、「経済・社会開発委員会で三者協議を行って共通認識を醸成していく」とも述べている。

参考資料

  • Labor Today, No730 , 2010.10.14

参考レート

  • 100ウォン(KRW)=7.23円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2010年11月24日現在)

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