労働市場低迷、回復は2015年に後退か
―ILO「仕事の世界報告2010」

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2010年10月

国際労働機関(ILO)は9月30日、「仕事の世界報告2010 一つの危機から次の危機へ?」と題する年次報告書を発表した。それによると、前年の報告では「危機前の水準まで回復するのは2013年」としていた回復予測を、多くの国で景気回復が遅れて労働市場も低迷しているとして、2015年に下方修正した。

ILOの推計によると、2007年以降3000万人以上が失業に追い込まれ、世界の失業者数は、史上最悪の2億1000万人強に上っている。労働市場が危機前の水準に回復するまでには、世界全体で2270万人の雇用を創出する必要がある。

地域別では、日本などをのぞくアジアや中南米などの新興国で雇用回復の兆候が見られたが、世界全体では雇用の先行きは暗く、多くの国で見通しが大きく悪化した。ILOは加盟各国に雇用対策の継続と強化を求めている。

日本については、弱い景気回復が雇用市場に影を落としており、中期的な財政基盤も弱いと分析。 報告書では、就業意欲のある人を示す労働力率が前年同期比で0.6%低下しており、37万人の労働者が就職を断念したとみている(図1)。 また危機以前と比較すると、雇用水準も3.0%低下しており、先進国(G20)の中で最大の落ち込みであると指摘している。このほか対GDPの財政赤字比率も先進国の中で最大となっている(図2)。

そのため日本政府に対しては、景気刺激策を早期に打ち切るのは財政と雇用の双方からみて生産的ではないとして、景気刺激策の中心に雇用政策を盛り込むよう求めている。その上で、金融市場の透明性を高めてリスク低減を図りながら、金融市場改革をすすめることを提言している。

図1

図2

資料出所:IILS(ILO研究機関、国際労働問題研究所)推計

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