コロラド州、米最賃制度史上初の引き下げの可能性

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  • 国別労働トピック:2009年9月

アメリカの最低賃金は連邦の制度とともに州別の制度がある。連邦の制度と同様に法律によって最賃額を決定し水準の変更には法律の改正が必要な州が多くを占めるが、消費者物価などに基づき毎年水準を調整する州がアリゾナ州やフロリダ州など10州ある。このうちコロラド州とミズーリ州では引き上げとともに、物価水準が下落した場合には減額の可能性も認めている。ただし、ミズーリ州の最賃額は現在、連邦最賃と同額に設定されており、次回の最賃額改定で減額の決定が下されることはない。

労働統計局の8月14日の発表(注1)でコロラド州の州都デンバー圏の2008年7月から2009年7月にかけての消費者物価指数が0.6%下落した。同州では州最賃を7.28ドルと規定しており、連邦最賃よりも3セント高い水準になっている。物価水準の下落を受け、来年の1月の最賃額改定において減額される可能性が出てきた。減額されれば1938年に連邦最賃が制度化されアメリカにおいて最賃制度が確立して以来、はじめてのケースとなる。
コロラド州労働省労働基準局のピーター・ウィンゲイト局長の8月26日時点でのコメントとして、「従来、労働統計局の消費者物価指数に連動する形で最賃額を決定してきたことは事実である。しかも現行の制度になって消費者物価が下落したのは初めてである」とした上で、「ただし、正式な決定は2~3週間の審議を経て9月下旬に下されるため、最賃引き下げは現段階での公式決定ではない」と強調している。

コロラド州において良き仕事と強いコミュニティの実現にむけてアドボカシー活動を展開するFRESC(注2)のロビン・クニーク・ディレクターは、インフレ率に沿って調整する最賃制度であるから減額の可能性があることは当然のことではあるが、昨年以来の経済が危機的な状況下にあって、経済を回復し労働者とその家族の苦難を回避しようと取り組んでいるなか、事業主は賃金の引き下げに走るようなことはないようにしてもらいたいと主張する。

貧困や低所得層支援のために最賃の問題に取り組む非政府組織は、最賃額を生計費やインフレと連動させようとする運動を展開している。コロラドでその改革を推進した運動家たちは生計費が下落することは想定していなかった。ただ、コロラド州で最賃を物価上昇率に連動して改定する制度を導入した2006年、州議会議員の多数の支持を得てこの制度を成立させるためには、最賃額の引き下げに関する条項を盛り込むことが不可欠であったと指摘する。

コロラド州で最賃の物価上昇に連動して改定する制度の実現に携わった組織の一つである「働く女性全国連盟」、そのコロラド支部ローレナ・グラシア支部長は「最賃水準で生活している者にとって、ペニー(1セント硬貨)一枚一枚が生活の支えとなっている。時給で3セント引き下げられただけでも生活に大きな打撃となる」と強調する。

参考資料

参考レート

  • 1米ドル(USD)=92.96円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年9月8日現在)

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