雇用・失業情勢のさらなる悪化と進む失業保険の改革
労働統計局が4月3日に発表した『雇用統計』(注1)によると、2009年3月期の失業率は前月比で0.4ポイント上昇し8.5%に達した。前年同月比では3.4ポイントの上昇である。雇用機会は66万3000人喪失し、2007年12月以降の累計では、513万人の雇用機会を喪失したことになる。
新規失業保険申請件数も依然として高い水準にあり、失業期間は長期化する傾向が見られる。27週間以上の長期失業者数は2008年2月の129万人から2009年3月の318万人へとおおよそ2.5倍に増加している。15週間から26週間の中期失業者数も110万人から253万人へと一貫して増加傾向が見られる(図1参照)。
図1:失業期間別の失業者数の推移(2008年2月~2009年3月) (単位:千人)
出所:連邦労働省発表『雇用統計』
ミシガン州での失業保険改革
ミシガン州の3月期の失業率は12.6%で、全米で最高の水準にある(注2)。ミシガン州失業保険庁は、2008年9月以降、事業主に失業保険制度を適正に理解してもらうためのセミナーの開催、クリスマス休暇など対応窓口の開設時間の拡大、失業保険申請手続きの迅速化など行政サービスの向上をはかってきた。給付期間の延長にも州として積極的に取り組んでおり、2009年2月3日から給付期間を13週延長し、合計で72週になっていた(注3)。さらに7週間給付期間を延長する法案に、4月13日、グランハム州知事(民主党)が署名し、合計で79週間となった(注4)。同州の労働力人口は496万人で失業者数は約61万人である。同失業保険庁の推計では、制度改正前には約3000人が失業保険延長給付を受給していたが、4月末までに連邦失業保険の受給が終了した労働者7万人が延長給付を受けられるようになり、2009年末までには20万人以上の失業者が延長受給することになるだろうとしている。
連邦政府から州政府への資金供与
2009年2月に成立したアメリカ復興再投資法では、州政府に対して失業保険制度改革のための総額70億ドルの資金を用意している。この資金をニュージャージー州に対して供与することが、3月27日、50州で最初に承認された。その後、サウスダコタ州などに供与が承認された(既に資金の供与が決まった州は表1のとおり)。供与された資金は、失業保険支出の財源となるほか、失業保険給付業務の管理費としても活用される。また、現行制度では受給資格のない低賃金労働者やパートタイム労働者へ適用範囲(注5)を拡大するための改革も着手される予定である(注6)。
供与額 (千ドル) |
承認 | 失業率(%) | |||
---|---|---|---|---|---|
2008年3月 | 2009年3月 | 前年比 | |||
ニュージャージー州 | 206823 | 3月27日 | 4.8 | 8.3 | 3.5 |
サウスダコタ州 | 5883 | 4月2日 | 2.8 | 4.9 | 2.1 |
コネチカット州 | 29270 | 4月7日 | 5.3 | 7.5 | 2.2 |
ニューハンプシャー州 | 10467 | 4月14日 | 3.7 | 6.2 | 2.5 |
出所:"Daily Labor Report”, March 30等より作成
注
- 2009年4月発表の雇用統計The Employment Situation (PDF:198.29 KB)
- 労働統計局Regional and State Employment and New employment (PDF:782.19 KB)
- ミシガン州失業保険庁ホームページ
アメリカの失業保険制度は州別に運営されており、多くの州で通常の給付期間は最大で26週である。通常の州の失業保険制度に関しては、当機構海外労働情報2008年5月の表1参照。昨年の6月と9月に連邦政府による延長給付策が決定され、失業率が高い州に限定した給付延長も含めれば、給付期間が最長で59週間となっている。 - Governor Granholm Signs Legislation Extending Jobless Benefits up to Seven Weeksミシガン州失業保険庁ホームページおよび”Daily Labor Report”, April 14, BNA
- 連邦労働省資料” SIGNIFICANT PROVISIONS OF STATE UNEMPLOYMENT INSURANCE LAWS, JANUARY 2008 (PDF:83.62KB)”によると、州別失業保険の適用範囲は州ごとに異なるが、サウスダコタ州やコネチカット州、ニューハンプシャー州などでは雇用期間20週間あるいは四半期ごとの所得が1500ドル以上と定めており、同様の規定の州が多い。
- ”Daily Labor Report”, March 30, April 3, 8, 15, 21, 23, BNA
参考レート
- 1米ドル(USD)=98.67円(※みずほ銀行ホームページ2009年5月7日現在)
関連情報
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