域外からの受け入れ条件を厳格化
―雇用情勢悪化で内務省引き締め策

カテゴリー:雇用・失業問題外国人労働者

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2009年3月

国内の雇用状況の悪化に歯止めがかからない状況をうけて、内務省は2月下旬、EU域外からの移民労働者の受け入れに関する引き締め策などを発表した。ひとつは、専門技術者の受け入れに際して雇い主に課されている労働市場テスト(域内での一定期間の求人)について、ジョブセンター・プラスを通じた求人を義務付けることだ。また、不足職種リストに対応した専門技術者を国内で育成し、移民労働者への依存を減じることを目指す。さらに、高度専門技術者についても、資格と賃金水準の下限に関する基準を引き上げる。国内労働者の雇用機会を増加させることがねらいで、いずれもこの4月からの導入を予定している。

このほか、内務相は移民制度に関する政府の諮問機関である「移民提言委員会」に対して、次のような諮問を行った。(1)専門技術者の受け入れを不足職種のみに絞る場合の経済への影響(2)移民労働者の扶養者の経済への貢献と労働市場における役割(注1)(3)経済状況の変化への対応のため、高度専門技術者の受け入れ制度について今後どのような変更が必要か――など。いずれも、移民受け入れに関する条件を今後さらに厳格化することが予想される内容だ。高度専門技術者の受け入れ条件の引き上げを提案しているウーラス移民担当大臣は、この夏の新規学卒者の雇用状況が厳しくなることが見込まれるため、とその理由を説明している。

統計局が発表した08年第4四半期の就業者数は、イギリス人労働者の約15万人減に対して、外国人労働者は6万人あまり増加している。うちEU域内の労働者はむしろ4000人減少しており、増分は基本的に域外からの労働者だ。特に、東欧諸国(A8)からの労働者の減少が著しく、前期比で3万4000人減の46万9000人となった。イギリス国内の景気の悪化による雇用機会の減少や、ポンドの下落、母国での好況などの影響とみられる。

ただし、農業関係者は、外国人労働者の減少に伴う人手不足のため、季節農業労働者スキーム(SAWS)の受け入れ枠の5000人分の拡大を政府に要請している。同スキームは、現在ルーマニアおよびブルガリアからの労働者を対象に実施されているもので、既に昨年には、農業労働者不足の緩和を目的に受け入れ枠を5000人分拡大し、2万1250人としていた。関係者によれば、農業労働はほぼ最賃レベルの低賃金と重労働のため、国内で募集をかけてもイギリス人労働者の応募はほとんどないという。しかし、小売企業からはコスト抑制を迫られるため、賃金の引き上げが難しいことから、外国人の受け入れでこれに充てたいというのが彼らの主張だ。

参考

2009年3月 イギリスの記事一覧

関連情報