特殊法定最低賃金、新たに三業種で発効

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  • 国別労働トピック:2009年12月

連邦労働社会省(BMAS)は10月23日、「鉱山特殊業」、「大型顧客向けクリーニング」、「塗装業」の三業種に、新たな特殊最低賃金を導入することを官報で告示した。

この結果10月23日現在、労働社会省が労働者送出法(注1)(Arbeitnehmer-Entsendegesetz:AEntG)によって法制化(注2)した最低賃金は、すでに導入されている「建設業」、「電気業」、「屋根ふき業」、「郵便サービス業」の4業種を含め計7業種となった。

表1. 三業種の最低賃金(10月23日告示)
(単位:Euro/時間)
鉱山特殊業(法規命令:Rechtsverordnung)
有効期限:2010年12月31日
2009年10月23日付官報160号(3632頁)
適用範囲 発効 賃金グループ2 賃金グループ1※※
全国 2009年10月24日 12.41 11.17
  • ※採鉱夫/特殊知識を持つ専門労働者
  • ※※工員/採鉱夫

(単位:Euro/時間)

大型顧客向けクリーニング(法規命令:Rechtsverordnung)
有効期限:2013年3月31日
2009年10月23日付官報160号(3634頁)
適用範囲 発効 全ての労働者
西部 2009年10月24日 7.51
2010年04月01日 7.65
2011年04月01日 7.80
2012年04月01日 8.00
ベルリンを含む東部 2009年10月24日 6.36
2010年04月01日 6.50
2011年04月01日 6.75
2012年04月01日 7.00

(単位:Euro/時間)

塗装業(第5法規命令: 5 Rechtsverordnung)
有効期限:2012年2月29日
2009年10月23日付官報160号(3634頁)
適用範囲 発効 熟練社員 非熟練社員
ベルリンを含む西部 2009年10月24日 11.25 9.50
2010年09月01日 11.50 9.50
2011年07月01日 11.75 9.75
東部 2010年10月24日 9.50
2011年09月01日 9.75

資料出所:BMAS

今回の特殊最低賃金導入の背景には、大幅な改正が行われて今年4月24日新法として施行された2009年労働者送出法がある。それ以前は1996年に制定されたEU海外派遣指令96/71の国内実施法(注3)があった。これは、ドイツに越境派遣される建設業外国人労働者に対する賃金ダンピング防止を目的としたもので、2009年の新法制定により変更があったのは主に次の4点である。(1)適用事業の拡大、(2)越境外国人労働者のみならず国内労働者の保護も明示、(3)労働協約当事者双方の合意の上での申請が前提、(4)法規命令は、当該産業の労使を拘束するのみならず、一般的拘束力が及ぶ労使にも適用される(労働者にとって有利な協約内容が優先される)。

連邦労働社会省によると、今回の最低賃金導入により三業種合わせて約10万人の労働者がその恩恵を受けることになる。また、これまで通算すると約200万人の労働者が最低賃金請求権を有し、今後賃金ダンピングから守られるという。

この特殊法定最低賃金は、政権交代直前に社会民主党(SPD)のオラフ・ショルツ労働社会大臣が強力な主導権を発揮して導入された。これに対し、10月28日に就任したフランツ=ヨーゼフ・ユング新労働社会大臣(キリスト教民主同盟:CDU)(注4)は、「国は賃金設定に口を出すべきではない。これは賃金自治の問題だ。」と明言し、法定最低賃金の導入には反対の姿勢を示した。新政権は、2011年10月までに、この特殊法定最低賃金が産業育成を阻害していないかどうかの検証を行うとしており、今後、大幅な制度変更もあり得る情勢となっている。

参考資料

  • 連邦労働社会省(BMAS)プレスリリース、日本労働研究雑誌2009年12月号、海外委託調査員報告

参考レート

  • 1ユーロ(EUR)=129.72円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2009年12月1日現在)

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