日曜日労働の解禁法案、国会提出
―強気の大統領、与党内の反対論押し切る

カテゴリー:労働条件・就業環境勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2009年1月

サルコジ大統領は12月16日、日曜労働を解禁する法案を国会に提出した。日曜労働の解禁は、金融・経済危機への対応策の一環として、10月末に同大統領が発表した雇用に関する行動計画「金融危機の雇用に対する影響を緩和するための主たる方策」の柱の一つ。フランス社会の慣習に関わる問題だけに、野党だけではなく、与党内にも反対論が強かった。「働きたい人が、より働き、より稼ぐ」をスローガンに掲げる同大統領が半ば強引に国会に法案を持ち込んだ格好だ。年明けに審議が本格化する。

報酬は2倍、希望者のみで拒否権設定も

フランスでは、労働者は連続して週6日以上労働してはならず、日曜日を休息日とすることが、労働法典に明記されている。この規則への違反は明確な違法行為としてみなされるが、交通機関、病院、ホテル、飲食業、文化・スポーツレジャー施設、そして法定指定観光地域などは、例外として日曜日の営業が認められている。さらに、大都市郊外の大型ショッピングセンターなどは、営業申請をして認められれば、期限付き営業許可が与えられる。労働法典には180もの例外措置(注1)が盛り込まれており、INSEE(国立統計研究所)によると、現在740万人が日曜日にも働いており、そのうち日曜日の労働が慣例化している人は340万人にのぼる。

このように被用者の4人に1人が定期不定期の如何にかかわらず日曜日に働いている現状にあって、「日曜日は労働してはならない」という規定は、あまりにも現実からかけ離れているというのが、サルコジ大統領の主張だ。法案を作成した与党のリシャール・マリエ氏は、「働きたいと希望する人が、より働き、より稼ぐ」というサルコジ流原則にのっとり、(1)日曜勤務による報酬は通常日の少なくとも2倍にする(2)日曜勤務は希望者のみとする(3)「拒否権」を設定し、日曜勤務を希望しない被用者に対する処罰、差別的措置、解雇はできない――という内容を盛り込んだ。

野党・労組は反対、悪影響を懸念する雇用主も

サルコジ大統領は12月15日、与党内の妥協を図るため、金融危機対策会議を開き、席上、「現状維持では許されない。『労働の価値』(注2)で我々は国民に選ばれたのだから、日曜日も働いている人たちが今後も日曜日に働き続けるのを妨げることはできない」と述べ、60人あまりとみられる反対派の説得に努めた。その結果、現在では一時的な措置として年に5回認められている日曜日の労働を、年に10回にすることについては合意に至り、翌16日、大統領は半ば強引にこの法案を国会に提出した。

これに対して、野党・社会党は「労働者の権利を侵害し、社会構造を狂わす悪法を認めることはできない。フランス人の生活や共に生きる我々のやり方に直に影響するこの法案を前に、我々は激しく反対していく」と強い反発を示し、修正案を作成した。また、労組も「そもそも賃金がもっと高ければ、日曜日の労働など必要ではない」と主張している。

一方、雇用主側では意見が分かれている。経営者団体のMEDEF(フランス企業運動)は、「商業活動が活気づく」と法案を評価しつつも、「拒否権」については反対している。中小企業総連盟や、職人連合、その他多くの雇用主組合は、日曜日の労働の規制緩和により、法案が適用される地帯の付近にある小売店に悪影響が出ることや、賃金の不平等が生じることに強い懸念を示している。

大統領は、日曜日の営業の拡大は雇用機会につながり、労働者の所得増や消費の拡大、ひいては景気回復をもたらすとして、法案成立に強い意欲を示しているが、与党内でも未だ根本的な合意には達していない。法案の条項の検証と修正案に関する討議は、年が明け国会が再開してから本格化する。

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