雇用情勢、一段と悪化の様相
―オバマ次期大統領、300万人の雇用創出策を検討
連邦労働省によると、2008年11月の失業率は6.7%に達し、1993年以来の高水準を記録した。また、非農業部門の就業者数は11月期に53万3000人減少し、1974年以来の大きな減少幅を記録した。さらに、12月1日から12月6日までの新規失業保険の申請数は57万人を超えた。このような大量申請数は1982年以来だ。金融危機を発端とする経済危機によって、雇用情勢は一段と悪化の様相を濃くしている。オバマ次期大統領は道路建設やクリーンエネルギー投資などの大規模なインフラ投資による300万人規模の雇用創出策を検討中と表明している。
失業保険申請件数、1982年以来の高水準
連邦労働省が12月11日に発表した新規失業保険申請件数(12月1日から12月6日分)は57万5000人(翌週に57万7000人に修正)に達し、1982年11月22日から11月27日の週の61万2000人以来26年超ぶりの高水準となった。翌週の12月18日の発表では、12月8日から12日12日分については2万1000人減少になったものの、前週の申請者数が57万5000人に修正(2000人増)された上、過去4週間の移動平均でみた場合には54万3750人に達し前週よりも増加する結果となった。最近の新規失業保険申請件数の推移は図1のとおり(注1)。
図1:米国の失業保険新規申請者数 (千人)
出所:連邦労働省発表(季節調整済み)
また、失業給付受給者の総数は増加傾向を示しており、12月6日時点で430万人を超えている。図2では、2008年7月以降の推移とともに、参考までに1年前の同時期の数値を付した。1年前は250万人から260万人を推移していた。
図2:失業保険給付者総数の推移(2007年と2008年の比較)(人)
出所:労働省発表資料より作成
さらに、2008年6月と11月に決定した失業保険給付延長措置によって、カリフォルニア州やミシガン州のように失業率が6%以上の州では33週間の給付延長措置がとられている(注2)。7月から実施された給付延長措置に伴って、延長給付受給者数は9月には140万人に達した。その後、給付期間を満了する受給者が増え、いったん67万人まで減少していたものの、11月に決定した再延長措置もあって、11月29日時点では前週から25万人増加し93万3000人となった。
失業給付受給者は失業者の約37%
12月5日に発表された11月期に関する『雇用統計』では、非農業部門の失業者数が1030万人に達し、失業率は10月の6.5%から0.2ポイント上昇し6.7%となった(注3)。なお、12月19日に発表された州別の失業率ではミシガン州が最も高い9.6%に達している(注4)。
就業者数は2008年1月から一貫して減少している。10月の減少幅は前月40万人から32万人に縮小したが、11月期1カ月の減少数は53万3000人に達した(図3参照)。2007年の景気後退以来、11カ月間に喪失した雇用機会は190万人とされている(注3)。
図3:就業者数と失業者数の推移 (千人)
出所:労働統計局資料より作成
失業は長期化する傾向が見られる。失業者中、15週以上26週未満が170万人強、27週間以上の失業状態が220万人強となっている。最近の15週以上の長期失業者数の推移は図4のとおり(注3)。
図4:長期失業者数の推移 (千人)
出所:労働統計局資料
失業者が増加する中、失業保険給付制度を改善すべきとするレポートが発表されている。センター・フォー・アメリカン・プログレス(Center for American Progress)が11月14日に発表したレポートによると、就業条件が合致せず、失業しても、実際に失業保険給付を受けられるのは約37%に止まっているという(注5)。州政府による失業保険給付の適格者判断は、1935年に制度ができてから改正されないまま運用されており、パートタイム労働者、女性労働者、低賃金労働者、高離職率の職場といった現在の労働市場の特徴は、制度の創設時には想定していなかったためだと指摘している。また、失業保険で給付を受けられる額は全米平均で1週間に293ドルで、これは平均賃金の35%に相当する額である。これは連邦政府が失業保険制度で想定する従前賃金の50%を大きく下回る水準となっていると指摘する。
次期大統領、市場経済優先策を転換へ
オバマ次期大統領は、11月24日の記者会見で、2011年1月までに250万人規模の雇用創出策を検討していると発表した(その後、12月19日の会見で300万人規模に拡大)。
オバマ次期大統領による雇用創出策は、大規模インフラ投資、すなわち道路の敷設、橋梁の建設、学校、医療システムの近代化の推進を主軸としており、市場経済を優先し主に法人を対象とする減税策が中心であった雇用対策から大きく転換することが見込まれる。
オバマ次期大統領は、産業としてのクリーンエネルギーへの投資を掲げており、風力発電、太陽光発電、高燃料効率車の開発、代替エネルギー技術の開発への投資により雇用創出を図る考えである(注6)。
この雇用対策案に対して、AFL-CIO(全米労働総同盟産別会議)、全米商業会議所はともに、基本的な考え方に賛成するとした上で、具体策がまだ発表されておらず、1月の政権発足後に具体化する雇用政策の議論の中で労使双方の雇用創出策を提案していく考えであるとしている(注7)。
注
- 連邦労働省雇用訓練局ウェブサイト
- カリフォルニア州労働省ウェブサイト
- ミシガン州労働省ウェブサイト (PDF:88.21 KB)
- 労働統計局ウェブサイト (PDF:198.29 KB)(1)
- 労働統計局ウェブサイト(2)(州別失業率)
- Center for American Progress, 2008, Helping the Jobless Helps Us ALL
- オバマ・バイデン次期政権のウェブサイト等参照
- メールでのインタビューによる
参考
- “Daily Labor Report”, Nov. 25, Dec. 19, 2008,. BNA
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