ボーイング社のスト、57日間で終結

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2008年12月

米航空機最大手ボーイング社と同社の機械工関連部門を組織する国際機械工・航空宇宙産業労働者組合(IAM)との3年間の新労働協約交渉が今年の5月から行われていたが、9月4日の失効期限になってもまとまらず、9月6日にストライキへ突入し、57日間のストを経て、11月1日にようやく解決した。

前回の2005年の協約改定では4週間のストライキ後に合意したが、今回は1カ月を超過しても話し合いの予定すらたたない状態だった。交渉の膠着状態を受けて、連邦調停和解サービス庁は労使双方に対して、話し合いは中立的な場で行い、合意への道筋をつけるように要請する事態になった。これに対して労使は同庁の調整官と連絡を取り合って交渉のテーブルにつく努力を続け、スト開始から47日目にあたる10月23日から5日間の集中交渉を行い、52日目の10月27日に暫定合意に至った。最終的に投票により新協約を妥結し労働者が職場復帰するまでに57日間を要し、ボーイング社とIAMの間では過去最大規模のストライキとなった。なお9月末までの交渉過程の詳細については当機構海外労働情報2008年10月を参照されたい。

今年9月までの協約が失効する直前の8月29日に経営側から提案された新協約改定案に対して、労働側は以下の点を不満としていた。(1)賃上げ13%を主張に対して、経営側の提案は11%であったこと(2)労働側が強く求めていた雇用保証について現行の協約から前進が一切なかった点である。後者については、同社がアウトソースの割合を高めていることに労働側は不満を抱いた。最終的な妥結内容との相違については表のとおりである。

表:経営側提示内容と最終妥結内容の相違
8月29日提示内容 最終妥結内容
賃上げ
1年目:5% 1年目:約5%
2年目:3% 2年目:約3%
3年目:3% 3年目:約4%
総額:11% 総額:約13%
一時金
妥結一時金:2500ドル 1年目 10%または5000ドル
一時金:総額賃金の6%あるいは2500ドル 2年目 1500ドル
3年目 1500ドル
月額年金給付
2009年1月1日から
70ドル→80ドル
2009年1月1日から
70ドル→81ドル
2012年1月1日から
83ドル

出所:“Daily Labor Report”, BNA, Aug. 29, Sep. 3, 5, 9, Oct. 6, 29, 2008より作成

雇用保証について、妥結内容には外部ベンダーの利用はデザイン分野に限定することや、材料搬送における3000人分の職を保証するなどが盛り込まれた。今回妥結した協約の有効期限は4年間、2012年9月8日までである。

ただ、今回のストによるボーイング社の業績への影響は大きく、第三四半期の純収入ベース、今年初期との比較で11億1000万ドルから6億9500万ドルへ38%減少する結果となった。

参考

  • “The Wall Street Journal”, Oct. 23, 2008, A1, A9
  • “The New York Times”, Oct. 23, B10
  • “Daily Labor Report”, BNA, Aug. 29, Sep. 3, 5, 9, Oct. 6, 29, 2008

参考レート

  • 1米ドル(USD)=92.98円(※みずほ銀行リンク先を新しいウィンドウでひらくホームページ2008年12月3日現在)

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