失業者数、大幅に増加
―93年以来15年ぶりの高い増加率

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2008年11月

国立統計所(INSEE)が9月4日に発表したデータによれば、今年度第2四半期(7-9月)のフランス本土の失業率は、第1四半期と同じく7.2%で大きな変化はみられなかった。

フランス政府は近年、国際労働機関(ILO)の算定方式に従い、毎月の発表はせずに、四半期ごとに失業率を発表している。今回の発表を受けて政府は、「厳しい世界経済状況のなか、フランスの失業率は安定している」としているが、毎月のデータが発表されている失業者数についてみてみると、雇用情勢の悪化の兆しがうかがえる。

フランスでは、失業者を「不就労者」ではなく「求職者」とみなしている。例えば失業保険は、公共職業安定所(ANPE)に求職者登録をしている限り、月78時間未満の就労者も失業者として認め手当を支給する。さらにANPEに登録している求職者は、毎月の就業時間(78時間未満か78時間以上か)、求める労働契約の種類(期間の定めのある契約か期間の定めのない契約か)、就業形態(パートタイムかフルタイムか)によって、全部で8つのカテゴリーに分類されている。この8つのうち、「無期かつフルタイムの雇用を求めて、1カ月の就労が0~78時間までの者」は「カテゴリー1」と定義される。INSEEの調査で「失業者」とされるのは、一般的にはこのカテゴリー1の求職者である。また、1年以上失業継続の「長期失業者」は、カテゴリー1から抽出している。

INSEEによれば、2008年8月のカテゴリー1の求職者数は前月比で約4万人(2.2%)増加している。カテゴリー1の求職者数は5月から増加傾向が続いていたが、前月比の増加率が2%を超えたのは1993年以来15年ぶり。08年8月末時点のカテゴリー1の求職者は、194万9 600人で、前月末より41万3000人(2.2%)増加した。これを男女別にみると、男性が100万4000人で前月比2.7%増、女性は94万5600人で前月比1.6%の増加であった。

カテゴリー1の求職者のうち、少なくとも週1時間以上かつ月78時間未満の就労を行った者は、31万3400人で、前月より5.7%増加した。これにより、無期かつフルタイムの雇用を求めてANPEに登録している者のうち、今年8月に就労を全くしなかった者は、163万6200人となる。

また、カテゴリー1の求職者を年齢階層別にみてみると、25歳未満の若年層は35万900人で、前月末比で0.1%の増加に過ぎなかった。しかし、この25歳未満の若年層を男女別にみると差が出ている。男性が前月比で0.3%増加しているのに対して、女性は前月比で0.2%減少している。なお、25~49歳の求職者数は130万6700人で前月比2.6%増、50歳以上の中高年層は29万2000人で前月比2.9%の増加となっている。

さらに注目すべき点は、長期失業職者の大幅な増加である。8月末時点で、ANPEに1年以上登録しているカテゴリー1の求職者は49万3700人と、前月末と比べて3.4%も増加した。求職者の増加率は、求職登録の期間が長いほど高くなっている。8月末時点で、求職者登録の期間が1年以上2年未満の求職者数は28万9300人で前月比2.9%の増加だったのに対し、2年以上3年未満の者は9万5700人で3.8%の増加、3年以上では10万8700人で4.5%の増加となっている。

ここ1年のフランス本土及び海外県における失業率の推移をみてみると、07年第2四半期は8.4%(本土のみでは8.0%)であったが、同年第3四半期に8.3%(同7.9%)、同年第4四半期に7.9%(同7.5%)、08年第1四半期に7.6%(同7.2%)と低下を続けてきた。しかし、今年第2四半期は7.6%(同7.2%)と横ばいとなっており、7月と8月の求職者数の増加をうけ、08年第3四半期の失業率は上昇に転じる恐れがある。

政府によれば、08年第2四半期の経済成長率はマイナス0.3%(速報値)、9月半ば以降の金融危機以前から第3四半期もマイナス成長が予測されている。こうした厳しい経済情勢を背景に、雇用情勢の悪化が懸念されている。

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