若年者対象の職業訓練ボーナス制度がスタート

カテゴリー:若年者雇用人材育成・職業能力開発

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  • 国別労働トピック:2008年10月

連邦政府は8月29日、「支援を必要とする若年者職業訓練機会改善法(社会法典第III編第5改正法)」を公布し、翌日8月30日より若年者に訓練ポストを提供する事業主に対するボーナス給付制度およびフレッシュマン支援をスタートした。同法により、職業訓練市場でこれまで機会に恵まれなかった若年者を対象に、2010年までに新たに10万人分の訓練ポストを創出することを目指す。

職業訓練ボーナス

今回新たに導入する職業訓練ボーナスは、(1)義務給付(事業主に職業訓練ボーナスの請求権が発生するもの)(2)裁量給付(雇用庁の裁量により給付が認められるもの)――の二つ。「義務給付」は、2007年もしくはそれ以前に普通教育課程(ドイツの学校系統図については、図1を参照)を修了または中退し、2007年もしくはそれ以前から雇用庁に登録して職業教育機会を探し続けていた者のうち、(1)特別学校(聾唖学校など)修了証やハウプトシューレ修了証を有する者、または何ら修了証を有さない中退者で、長期にわたって職業教育機会に恵まれない者(2)学習能力が劣るか、社会的に不利な境遇にある若者――に対し、職業訓練法、手工業法および海員法に定める職種において新たに職業教育機会を提供する事業主に支給する。「裁量給付」は、2007年もしくはそれ以前に普通教育課程を修了し、(1)2007年もしくはそれ以前から雇用庁に登録して職業訓練機会を探し続けていた実家学校(レアールシューレ)修了者(2)2年以上職業訓練機会を探し続けていた後期中等課程修了者(3)職業訓練を提供する事業主の倒産・廃業・閉鎖により職業訓練の中断を余儀なくされた訓練生で、本人に問題があって訓練機会の斡旋が困難な者――に対し、職業訓練法に定める職種において新たに職業訓練機会を提供した事業主を対象として、雇用庁の裁量により支給する。

職業訓練ボーナスの支給は、(1)試用期間終了時点(2)修了試験申込時点――の2回に分けて行われる。ボーナス給付額は、訓練生への報酬に応じて4000ユーロ、5000ユーロ、6000ユーロに区分される。これに加え、訓練対象者が重度障害者である場合は支給額の30%を上乗せ給付する。職業訓練ボーナスに注入する予算規模は、約4億5000万ユーロだ。

フレッシュマン支援

連邦政府はまた、職業訓練ボーナスに加えて「フレッシュマン支援モデル」を期限付き(2014年末まで)で試行する。目的は、普通教育課程から職業訓練への移行過程における若年者に対する個別支援の強化だ。具体的には、全国1000校において、卒業後の準備指導や職業適性判断、職業オリエンテーリング、職業訓練への移行などに関する学生支援を行う。この目的のため、地方公共団体の正規職員として新たに就職アシスタントを配置する予定。フレッシュマン支援には、約2億4000万ユーロの予算が注入される。

図1

資料出所:文部科学省(2008)「平成20年版教育指標の国際比較」

就学前教育:幼稚園は満3歳からの子どもを受け入れる機関であり、保育所は2歳以下の子どもを受け入れている。

義務教育:義務教育は9年(一部の州は10年)である。また、義務教育を終えた後に就職し、見習いとして職業訓練を受ける者は、通常3年間、週に 1~2日職業学校に通うことが義務とされている(職業学校就学義務)。

初等教育:初等教育は、基礎学校において4年間(一部の州は6年間)行われる。

中等教育:生徒の能力・適性に応じて、ハウプトシューレ(卒業後に就職して職業訓練を受ける者が主として進む。5年制)、実科学校(卒業後に職業教育学校に進む者や中級の職につく者が主として進む。6年制)、ギムナジウム(大学進学希望者が主として進む。9年制)が設けられている。総合制学校は、若干の州を除き、学校数、生徒数とも少ない。
後期中等段階において、上記の職業学校(週に1~2日の定時制。通常3年)のほか、職業基礎教育年(全日1年制)、職業専門学校(全日1~2年制)、職業上構学校(職業訓練修了者、職業訓練中の者などを対象とし、修了すると実科学校修了証を授与。全日制は少なくとも1年、定時制は少なくとも3年)、上級専門学校(実科学校修了を入学要件とし、修了者に高等専門学校入学資格を授与。全日2年制)、専門ギムナジウム(実科学校修了を入学要件とし、修了者に大学入学資格を授与。全日3年制)など多様な職業教育学校が設けられている。また、専門学校は職業訓練を終えた者等を対象としており、修了すると上級の職業資格を得ることができる。夜間ギムナジウム、コレークは職業従事者等に大学入学資格を与えるための機関である。
なお、ドイツ統一後、旧東ドイツ地域各州は、旧西ドイツ地域の制度に合わせる方向で学校制度の再編を進め、多くの州は、ギムナジウムのほかに、ハウプトシューレと実科学校を合わせた学校種(5年でハウプトシューレ修了証、6年で実科学校修了証の取得が可能)を導入した。

高等教育:高等教育機関として、大学(総合大学、教育大学、神学大学、芸術大学など)と高等専門学校がある。修了にあたって標準とされる修業年限は、通常、大学で4年半、高等専門学校で4年以下とされているが、これを超えて在学する者が多い。

参考資料

  • 海外委託調査員報告
  • 連邦労働社会省発表資料(2008年8月29日)
  • JILPTデータブック国際労働比較2008

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