相次ぐ最低賃金改訂の動き

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2007年9月

上海市の韓正市長は8月15日、最低賃金月額を840元に改訂する方針を明らかにした。15日付現地サイト東方網が伝えた。改訂されれば12%の上昇となる。引き上げの時期については言及されていない。上海市の最低賃金は2006年9月1日に現行の750元へ改訂がなされており、実現すればほぼ1年での再引き上げとなる。また引き上げ幅も前回の8.7%を大きく上回る。

中国の最低賃金は「労働法」および「最低賃金規定」に基づき労働者保護を主な目的とする。改訂に当たっては、労働者及びその扶養家族の最低生活費、都市部居住民の消費者物価指数、就業状況、当該省区市の都市部と農村部における経済発展水準の格差等を考慮の上調整される。現行の「最低賃金規定」は2004年3月に制定され、賃金基準は2年に一度見直し調整することが規定されるなど管理面が強化された。

上海市のほか、全国でも高い水準にある広東省でも引き上げの動きがあるようだ。現在深セン市が月額810元で全国最高額。広州市もこれに続く780元となっており、引き上げが実施されればさらに高い水準となる。この相次ぐ引き上げの動きの背景には、現地の急激な物価上昇があるようだ。中国国家統計局が6月発表したところによると、都市部の企業に勤める労働者の平均賃金は2007年上半期において前年同期比18.5%上昇した1万990元となっている。都市部住民の平均可処分所得は1人当たり7052元で、同17.6%増えた。インフレ調整後でも14.2%の伸びとなっている。他方都市部住民1人当たりの平均支出も同14.2%(実質11.0%)増え、4830元となった。しかし農民1人当たりの平均支出は同13.3%増えたものの2111元に過ぎない。都市部と農村部の格差は依然大きな隔たりを見せている。

全体としては依然中国の経済成長は続いており、国家統計局によると2005年の経済成長率は10.2%、2006年は11.1%(2007年7月に上方修正)に達している。これまでの持続的な経済成長により賃金水準の上昇が続いているわけだが、中国経済の発展において低賃金が優位性の大きな要因であることは言うまでもない。この状況がこのまま続くとすると、今後の経済発展にも少なからぬ影響を与えることが予想される。

参考

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