基礎情報:中国(2005年)

基礎データ

  • 国名:中華人民共和国 (Peoples Republic of China)
  • 人口:13億756万人 (2005年)
  • 実質GDP成長率:9.9% (2005年)
  • GDP:18兆2,321億元 (2005年)
  • 就業者数:7億5,825万人 (2005年)
  • 失業率:4.2% (都市部登録失業率、2005年)

資料出所:国家統計局「2005年国民経済と社会発展統計公報」

Ⅰ. 労働関係の主な動き

労働社会保障部によると、2005年全国都市部において新たに増加した就業者数は970万人、再就職を果たした国有企業の「下崗」(リストラ)労働者は510万人であった。下崗労働者のうち再就職が難しいといわれる「4050」人員(40歳以上の女性と50歳以上の男性)では130万人が再就職を実現した。一方、都市部登録失業者数は839万人、登録失業率は4.2%で前年末と同じ水準であった。中央政府は、新規就業増加目標900万人、下崗失業者の再就職500万人、そのうち4050人員の再就職100万人、年登録失業率4.6%の実現を、「95146」目標として2005年頭に打ちたてたが、これらはすべて達成された。

2005年は、政府の国家目標である「第10次5カ年計画」の最終年であった。「第10次5カ年計画」では、積極的な就業政策を目標に掲げ、中央・地方の各級レベルの党委員会政府は就業問題を人民の生活の根本ととらえ、経済社会発展の中心的方針として政策実現に努めた。これにより、労働者が自主的に職業を選択し、市場が需給を調節するよう就業構造のメカニズムの基本が確立された。その結果として、「第10次5カ年計画」期間においては全国都市部及び農村部の就業者数は約7.6億人に達し、「第9次5カ年計画」期間より4000万人増加している。特に都市部の就業者は2.7億人に達し、「第9次5カ年計画」末から4200万人が増加している。就職、再就職に関する政府目標は毎年更新され、3年連続して目標を上回る成果をもって達成された。特に「第10次5カ年計画」期間中には国有企業の下崗労働者1800万人の再就職が実現しており、2003年以降の「4050」人員の再就職に関しては390万人が再就職をはたした。

「第10次5カ年計画」における就業政策方針の根幹として、政府は「人材強国」戦略を打ち出した。それに基づき実施された具体的なアクションは以下のとおりであった。

  1. 技能人材に関する調査研究を総合的に展開し、高い技能を持つ人材の育成に重点を置いた施策を実施
  2. 国家高技能人材東部地区研修センタープロジェクトの開始
  3. 2004年「3カ年新技師50万計画」を開始、新らたに技師28万人を育成
  4. 再就職のための研修と創業のための研修を展開、全国で400万人が再就職研修に、30万人が創業研修にそれぞれ参加
  5. 職業資格証書を3200万人が取得し、同証書取得者延べ総数は6000万人に到達、また、関係部門との協力のもと、農村部の労働力の移転研修業務を展開

2005年末には、2006年からスタートする「第11次5カ年計画」(案)が発表されている。それに基づき、労働と社会保障の分野においても5カ年目標が策定されている。国務院は、「就職及び再就職業務の更なる強化に関する通達」を重点政策として発表しており、労働社会保障事業においても全国的に業務を強化していく方針を発表している。労働社会保障部では、一層の就職促進を目指し、2005年末に国家統計局と共同で全国の都市部労働力調査を実施し、2006年にもさらに2回の調査を実施する予定としている。また、政府は、規範的な労働力調査制度の確立と労働市場需給システムの整備作業を推進しているところであるが、その一環として「就職促進法(草案)」の起草業務を進め、国務院法制事務部門に提出、審査の段階に入っている。

中国労働市場の未成熟さを背景に、工場労働者の不足問題は依然大きな課題となっている。「民工荒」とよばれる、華南、珠江、長江地域など労働力需要が集中する地域での農民工(農村出稼ぎ労働者)の不足問題である。低賃金、長時間労働など労働条件が劣悪であることや、内陸部や農民の出身地域の開発が促進されつつあることなどから、出稼ぎ労働者が思うように確保できなくなってきた現象が象徴的に捉えられている。このため、生産停止に追い込まれる工場もあり、政府もこの事態を深刻に受け止め、労働力の需給システムと労働者の権益保護の両面から解決していくこととしている。

労働者の権益保護に関しては、2005年12月に「労働契約法(草案)」が共産党常任委員会を通過した。この法案は、労働者の権益保護を強化する内容で中国における今後の労使関係のあり方に影響を与えるものとして注目される。

同草案の概要は次のとおりである。

  1. 使用者が労働者から担保又は担保名義の金品を取ることを禁止する。また、戸籍身分による差別的取り扱いを禁止する。使用者がこれらに違反した場合、労働者一人について500元以上2000元以下の罰金を科すとともに労働者の損害賠償責任を負う。
  2. 労働契約は3カ月以上の雇用を定め、また試用期間についても規定する。試用期間は労働契約期間に含まれる。試用期間は、未熟練工は上限1カ月、熟練技能工は同2カ月、高級技能工は同6カ月とそれぞれ規定する。また、使用者が同一労働者に対し設定できる試用期間は1回に限定する。法改正時に期間を超えて試用期間を実施している場合、使用者は労働者に対して正規契約時の月報酬分を賠償しなければならない。
  3. 職業病や労災により就労できなくなった労働者、病気・怪我の治療中の労働者、妊娠・育児期間中の女性労働者、平等協議の代表者(政労使の各代表)、及び法律、行政規則により規定されるその他の労働者に対して、使用者は労働契約を不当に解除することはできない。使用者は労働契約を解除しようとする場合、まず工会(労働組合)に通知しなければならない。
  4. 工会は労働契約の解除が不適切と判断した場合、これに意見を提出する権利を有する。使用者は工会の意見を検討し、その結果を工会へ通知する。労働者が仲裁や起訴等を申請した場合、工会はこれを支持し支援しなければならない。
  5. 使用者は、労働契約において、労働者が契約解除後一定の期間内に職務上の秘密を競業する他社に知らせること、あるいは労働者本人が競業する事業を興すことを制限することができる。この制限の期間は2年を超えてはならないと定めている。
  6. 使用者は、暴力や威嚇、脅迫などの手段をもって労働者の身体的自由を制限してはならない、あるいは労働者にとって危険となる作業を強制、指示してはならない。これに使用者が違反した場合、労働者は使用者へ通知することなく、直ちに労働契約を解除することができる。
  7. 労働者が労働契約を解除する場合には30日前に書面をもって使用者に通知しなければならない。労働契約を解除できる場合とは、試用期間中である場合、労働条件が労働契約書に示されていない場合、安全な生産のための条件が満たされていない場合、労働報酬が適切に支払われない場合、使用者が社会保険料を納付していない場合、使用者の定款や規則が法律、行政規則に違反し、労働者の権利保護を損なっている場合などである。

中国の労働市場は、工場労働者等を対象とした労働市場と大卒者や技術労働者などの「人材」を対象とした労働市場と機能が二分化しているが、「人材」市場においてここ数年来大卒の就職困難者が増加しており、若年失業率も上昇傾向にあることが2005年の全人代で問題提起された。高学歴者の就職難については、最近の若者層の志向の変化、自らの技能と職業に求められる技能とのギャップ、卒業後も両親の庇護の下で学習を続けながら就職先を目指すというパラサイト状態を許容する社会、経済的背景などが指摘されている。

社会保障体系の整備(注1)

「第10次5カ年計画」期間中、「二つの確保」(注2)が全面的に確立されたが、社会保障事業は更に発展し、養老、失業、医療、労災、生育(出産)保険を主な内容とする社会保障体系の枠組みが形成された。加入者数をはじめ適用範囲は拡大を続け、資金規模は倍増した。2005年、5項目の社会保障基金の総収入は約7000億元に達し、総支出は約5400億元となった。社会保障体系の整備は、経済体制の改革と経済構造の調整という大きな変革の中で、多くの労働者の権益が効果的に保障され、社会の安定、経済発展の促進、社会の調和の促進のために重要な役割を果たしたといえる。

(1)都市部企業労働者の養老保険

企業のレイオフ労働者、失業者への養老年金の支給業務が全面的に実施された。「第10次5カ年計画」期間中、養老年金支給額は合計で1兆5876億元となり、「第9次5カ年計画」期間中より8032億元増加した。また、2004年から2年連続で、「当期分の未支給なし」を実現することができた。養老保険加入者数は、拡大を続けており、2005年12月末時点で、保険加入者数は1億7444万人に達し、2000年末比で3826万人、28%増加した。基金収入も大幅に増加、「第10次5カ年計画」期間中の基本養老保険基金総収入は、1兆8639億元で、「第9次5カ年計画期間より1兆0427億元、127%増加し、累計残高は3900億元あまりとなった。また、使用者(単位)と従業員からの保険料納入、政府からの補助といった多ルートからの資金調達形式が採用され、全国社会保障基金は1900億元に達している。管理サービス業務の民間移管も安定的に推進された。「第10次5カ年計画」の初期から、企業退職者についてはコミュニティ(社区)に組み入れて民間で管理が行われるようになったが、2005年12月末までに、全国で2655万人の企業退職者がコミュニティ(社区)による管理に組み込まれた。これは企業退職者総数の68.3%を占める数である。このように都市部の社会保障体系のモデルケース業務で新たな進展が見られた。

2005年12月13日、国務院から『企業従業員基本養老保険制度の整備に関する決定』(国発[2005]38号)が通達され、養老保険制度の基本原則、主な任務、政策措置がよりいっそう明確にされた。この決定によると、(1)都市部の個人経営の商工業者、就業者を対象の重点として組み入れ、対象範囲を更に拡大すること、(2)個人口座実質化のモデルケースを徐々に拡大すること、(3)基本養老年金の計算、支給方法を改革すること、(4)基本養老年金の正常な調整メカニズムを構築すること、(5)企業年金を発展させること等が目的として示されている。

(2)失業保険

2005年末時点の失業保険加入者数は、全国で1億648万人、2000年末比で239万人増加した。2005年の失業保険の受給者数は362万人で、2000年末から172万人増加した。2005年の失業保険基金の収入は333億元で、2000年比で173億元、108%増加している。2005年、全国であわせて678万人が様々な期限の失業保険を享受した。

(3)医療、生育(出産)保険

2005年末時点の医療保険加入者数は、全国で1億3709万人、2000年末比で9922万人、262%増加した。2005年の医療保険基金の収入は1378億元で、制度改革初期であった2000年から7倍あまり増加した。

2005年末時点の生育保険加入者数は、全国で5389万人、2000年末比で2387万人、80%増加した。2005年の生育保険基金の収入は42億元で、2000年比で282%増加した。2005年、全国でのべ60万人が生育保険を享受した。現在、全国の20の省(直轄市、自治区)で生育保険法規が打ち出されている。

(4)労災保険

2005年末時点の労災保険加入者数は、全国で8390万人、2000年末比で4040万人、93%増加した。2005年、労災保険基金の収入は87億元で、2000年比で248%増加した。2005年、全国でのべ63万人が労災保険を享受した。

労働関係の調整と労働保障の法制

2005年、労働関係の調整と労働保障法制の分野において新たな進展があった。労働関係の調整システムが強化された。労働保障関係の立法と法の執行ついても施策が積極的に推進され、労働者の合法的権益や社会の安定のための努力が図られた。

(1)労働関係の調整

2005年、中央・地方の各級レベルの労働社会保障部局は、労働関係の調整業務に努力した。

第一に、都市部の労働者の給与未支給問題の解決に引き続き取り組み、給与支給を保障する監督管理制度の構築を積極的進めた。現在、全国の16の省、自治区、直轄市に給与支給保障制度が構築され、14の省、自治区、直轄市に給与支給監督管理制度が構築されている。

第二に、国有の大型・中型企業に対する主従の分離、非主流業務の制度改革、閉鎖破産のプランの審査業務に力を入れ、企業がこれに誠実に取り組むよう督促を行った。現在までに、71企業の民営化、非主流業務の合理化など制度改革の実施プランについて審査を行い、回答を出してきた。3800強の組織に着手し、分離配置された労働者は60万人に達した。また、各地方も企業の制度改革の中で、労働者の分離配置や経済的補償のプランを厳格に審査し、制度改革を積極的に推進した。

第三に、労働関係の三者調整メカニズムが構築、整備された。「第10次5カ年計画」の初期に三者調整メカニズムの構築がスタートし、現在では、全国の各級レベルに6600強の三者調整組織が存在する。地市レベル以上の都市には全般的に構築されており、現在、県、区、郷鎮、街道へと構築が波及しつつある。

第四に、労働争議の仲裁業務が引き続き確実に実施された。2005年の第1四半期から第3四半期までに、全国の各レベルの労働争議仲裁委員会で立件され受理された労働争議は23万件で、関係する労働者は56万人となった。このうち集団的な労働争議は1万件強、関係する労働者は33万人となった。仲裁の成就率は90%以上に達している。

第五に、『投書陳情条例』が全面的に実行され、給与未支給、退役軍人の労働保障問題の解決を重点として、具体的な方法や措置が研究、制定され、各種の陳情事件への処理が速やかに行われ、社会の安定を重視した政府による取り組みが行われた。

労働保障の法制

2005年、労働保障関係の立法業務は以下のとおり新たな進展を見せた。

  1. 『労働契約法』がすでに国務院常務会議を通過して、全国人民代表大会常務委員会の審議にかけられた。
  2. 『就職促進法』草案の起草が完了し、修正と論証のために国務院の法制部門に提出された。
  3. 『職業技能研修・検定条例』草案に対する修正が行われた。
  4. 『台湾香港マカオ住民の内地における就職の管理規定』が公布された。

2004年に条例が施行され、体制整備が進む労働保障監察業務も引き続き強化された。「第10次5カ年計画」期間の末においては、全国の3277の県レベル以上の労働保障行政部門に監察機構が設けられ、省・地・県の3レベルの監察・法執行ネットワークが基本的に形成された。全国では18の省、自治区、直轄市で労働保障監察条例(地方法規)が公布され、13の省、自治区、直轄市で労働保障監察政府規則が制定され、15の政令指定都市と省の行政府所在都市で労働保障監察法規・規則が制定されている。「第10次5カ年計画」期間中、全国の労働保障監察機構は、次の具体的取締り業務を行った。すなわち、419.8万の事業所(単位)を検査し、413.5万の事業所(単位)に対して年度検査を実施して、各種の違法な案件106件について取り締りを行った。また、取り締りの結果、3434.5万人の契約を締結せずに就労していた労働者のために労働契約を追加締結するよう使用者(単位)に命令し、また社会保険料149.5億元の支払いを命じた。

労働保障監査業務の強化に関連して、労働保障部門の法に基づく行政業務も一層強化された。労働保障の行政審査制度の改革と行政の法執行責任制が積極的に推進され、社会に対する政務公開方法、全国の労働保障系統に対する政務公開方法、労働保障部内に対する政務公開方法の3つの政務公開方法が制定された。2005年、更に、政府は、全国人民代表大会常務委員会に協力して、『労働法』の実施状況の検査を実施し、また農村部から都市部に出て働く労働者の労働保障権益を守るための法律の整備、普及、宣伝を重点的に実施した。

注:

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※2002年以前は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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例) 出典:労働政策研究・研修機構「基礎情報:中国」

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