雇用失業情勢が大幅に改善

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  • 国別労働トピック:2007年7月

連邦統計局によると、2007年第1四半期の季節調整後のGDP(国内総生産)は対前期比で実質0.5%増加した。07年通期のGDP実質成長率は2.8%になると予想されている。就業者数が前年同期より大幅に増加し、失業者数も顕著に減少している。好調な経済が労働市場に波及し、労働市場の改善が好景気を支える状況となっている。好景気によって電機産業や建設業の技術者不足が深刻化している。雇用情勢の改善により政府は、失業保険料率を08年1月から0.3%引き下げることとした。

失業者数が前年より大幅に減少

5月の失業者数(季節調整前)は、4月より16万1000人減の380万6000人となった。前年5月に比べると、失業者数は73万2000人(16%)減少した。

西部ドイツの5月の失業者数は、4月より10万6000人減の249万9000人であった。前年同月比では54万9000人(18%)減少した。東部ドイツの失業者数は4月から5万5000人増加して130万7000人となった。前年同月比では18万3000人(12%)減少した。

55歳以上の失業者数は前年5月に比べて8万1000人(14.1%)減少した。25歳以下の失業者数も前年同月比で13万2000人(26.0%)減少した。

5月の失業率は前年同月から1.8ポイント低下して9.1%となった。東部ドイツの失業率は15.2%で、西部ドイツの7.5%のおよそ2倍となっている。前年同月比では、西部ドイツ1.7ポイント、東部ドイツ2.2ポイント、それぞれ改善した。

労働市場政策を統括する連邦雇用エージェンシー(BA)のヴァイゼ長官は、「大幅な経済成長や春季の活況により、失業率は低下し続けている。秋には失業者数が350万人を切る可能性もあり、そうなればここ12年間で最低水準となる」と述べた。

就業者数も大幅に増加

連邦統計局によると、4月の就業者数は3月より17万人増加して3928万人となった。前年同月比では53万9000人増加した。

3月の社会保険加入義務のある就業者数は2656万人で、前年同月より61万8000人増加した。このうちの半分以上がフルタイム就業者であった。社会保険加入義務のある就業者数は、前年に比べて、東部ドイツで3.4%、西部ドイツで2.1%増加した。

最も注目されるのは、4月の高齢者層(55~64歳)の就業率が50%を記録したことである。03年のこの数字は39.3%。EU各国は高齢者層の就業率を10年までに50%に引き上げることを目標としている。これを踏まえてドイツ政府は昨年、「イニシアチブ50プラス」と題する高齢者雇用対策を策定し、10年までに50歳以上の就業率を55%に引き上げる目標を掲げている。

求人件数も伸びている。5月の求人数は64万3000件であり、前年同月より7万7000件増加した。そのうちの89%がすぐに就業可能な求人であった。また、全体の63%(40万4000件)が社会保険加入義務のある雇用関係を対象とした賃金助成を受けない求人であり、その数は前年同月より10万8000件増加した。

技術者不足が深刻化

電機産業や建設業などでは、好景気を反映して、技術者不足が深刻化している。ドイツ工学アカデミー(Acatech)は、現在、2万~4万8000人の技術者が不足しており、この傾向はさらに強まるだろうと予測する。ドイツ経済研究所は、技術者不足により、06年にドイツ経済は35億ユーロの売り上げを喪失したと推計している。

技術者不足は今後も継続すると見られる。これは、96年以降、工学・自然科学専攻の卒業生の数が大幅に減少し、現在も低い水準に留まっていることによる。ドイツ経済研究所は20年までに最大で27万人の技術者が不足すると予想する。この技術者不足が解消されない限り、企業は将来、研究・開発部門を海外に移転せざるを得なくなると懸念されている。

その対応策の一つとして、外国人技術者の受け入れ拡大が挙げられている。しかし、現在の移民法は、高度技能者の受入れを、一定額以上の年収(07年は8万5500ユーロ)の外国人労働者に限定している。経済界は、この高額の年収制限が外国からの高度技能者獲得の障害になっていると批判する。キリスト教社会同盟のグロス経済相は、年収制限を半分にするよう主張する。他方、社会民主党のミュンテフェリング副首相兼労動社会相は、いかなる移民規制の緩和にも反対しており、約380万人にのぼる失業者の活用を優先すべきだと主張する。

失業保険料率の0.3%引き下げを決定

ドイツ政府は07年1月、失業保険料率を6.5%(労使折半)から4.2%に引き下げるとともに、付加価値税を16%から19%に引き上げた。失業保険料率の引き下げと引き替えに、連邦雇用エージェンシー(BA)の07年予算には、付加価値税引き上げ分を財源とする65億ユーロの連邦補助金が投入された。07年のBAの財政は、雇用情勢の改善を反映して、55億ユーロの黒字になると予想されている。

シュタインブルック財務相は5月、BAに対する連邦補助金を廃止し、急速に増大する医療費の財源に充てることを提案した。BAは、失業者が1年以上就業できなかった場合、連邦に対して、1人当たり1万ユーロの負担金を支払わなければならない。06年には、この負担金の総額が33億ユーロにのぼった。同財務相は、同時にこの負担金を廃止することを提案した。これに対し、ドイツ使用者連盟のフント会長は、「負担金があることで失業保険料が一般会計に流用され、別の目的に使用されている。これは憲法違反ではないか」と述べ、BAの負担金および同額の連邦補助金の廃止は容認するが、それを超える連邦補助金の廃止には断固反対を表明した。

ドイツ政府は6月18日、認知症・アルツハイマー患者の給付増額等を内容とする介護保険改革を決定し、介護保険料率を08年7月1日から0.25%引き上げる(現行は1.7%、子供のいない人は1.95%)。他方、失業保険料率は、08年1月1日から0.3%引き下げ、3.9%とする。これにより労使折半で負担している賃金附帯費用(社会保険料)は総所得の40%以下に維持される。

出所:連邦雇用エージェンシー

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