派遣労働の現状

カテゴリー:非正規雇用労働条件・就業環境労使関係

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  • 国別労働トピック:2007年3月

派遣労働者数が急増

連邦雇用エージェンシー(BA)の統計によると、2006年6月30日現在の派遣労働者数は、前年同期の45万3000人から約32%増加して、59万8000人となった(図1)。内訳は男性が44万9000人(75.1%)、女性が14万9000人(24.9%)であった。職種別では、詳細な職務規定のない補助工20万2000人、金具工・機械工7万6000人、その他のサービス業(注1)7万2000人の順に多い(表1)。景気回復が本格化した06年における雇用の増加の多くを派遣労働者が占めていた。また、社会保険に加入する義務のある雇用(注2)の増加にも派遣労働者が貢献している。労働市場職業研究所(IAB)は、この現象を景気回復の初期に典型的に見られる傾向と分析している。連邦労働者派遣事業者連盟(BZA)は、景気後退期に企業は柔軟な雇用形態によって競争の激化に対応してきており、景気回復期にはさらに集中的に派遣労働者を活用していると指摘する。

  • 出所:連邦雇用エージェンシー
  • 注2:12~14を除くサービス業従業員
  • 注2:12~14を除くサービス業従業員

派遣労働に関する法規制

ドイツの労働者派遣法は、1972年に制定された。派遣事業者は、原則として派遣労働者と期間の定めのない労働契約を締結しなければならない(いわゆる登録型派遣の禁止)。対象業務は、原則として、建設業を除いて制限がない。派遣期間の上限は、当初3カ月とされていたが、数次にわたる規制緩和の末、労働市場改革法により、03年1月から上限規制が撤廃された。また、派遣労働者と派遣先事業所の正規従業員との間に、賃金を含む重要な労働条件に関する均等待遇原則が適用されることとなった。ただし、労働組合と派遣事業者は、労働協約によって、正規従業員と異なる派遣労働者の賃金や労働条件を取り決めることができる。

派遣労働者の労働協約

均等待遇原則の導入を受けて、ドイツ労働総同盟(DGB)は03年、連邦労働者派遣事業者連盟(BZA)およびドイツ労働者派遣事業協会(iGZ)とそれぞれ別個に、賃金や労働条件について規定した労働協約を締結した。また、ドイツ・キリスト教産業労働組合(CGB)は、中小人材サービス企業使用者連盟(AMP)と労働協約を締結している。労働協約の正確な適用率は定かではないが、DGBとBZAおよびiGZが約50%、CGBとAMPが約25%をカバーしていると推測されている。DGBとBZAの労働協約に基づく07年の賃金表(表2)によると、時間給は9等級に分かれており、7.38ユーロから16.69ユーロの幅がある。9カ月間を超えて同一の派遣先に勤務する場合は1.5%、12カ月間を超える場合には3.0%、賃金が上がる。

出所:BZAホームページ

労使団体、研究機関の反応

ドイツ使用者団体連盟(BDA)は、派遣労働者の増加は、個人が失業を回避し、また失業中に職を見つける手立てとなっていると評価している。また、現行の均等待遇原則を廃止することによって、この好ましい傾向がさらに前進するとしている。

ドイツ労働総同盟(DGB)は、事業所の基幹従業員が安い派遣労働に置き換えられ、正規雇用を駆逐していると主張する。これは基幹従業員の雇用を脅かし、協約賃金水準を葬り去るものであるとして、法規制の強化を求めている。

労働市場職業研究所(IAB)は、正規雇用の駆逐効果には根拠がないと主張する。派遣労働も社会保険への加入義務および解雇保護が適用される正規雇用であり、失業者の労働市場への復帰を助ける重要な役割を担っていると指摘する。連邦雇用エージェンシー(BA)によると、派遣労働者の約60%は失業状態から移行しているという。ケルン経済研究所は、長期失業者の40%を占める低資格者が派遣労働の恩恵を最も受けており、育児の後に労働市場に復帰しようとする人々にも役立っていると分析している。

参考レート

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