11月の失業者数、4年ぶりに400万人を割る
ドイツの11月の失業者数は、2002年10月以来4年ぶりに400万人を下回り、399万5000人となった。失業率も前月より0.2ポイント低い9.6%であった。好景気と雇用情勢の改善を反映して、失業保険の保険料率(現行6.5%)は、07年1月より当初予定されていた4.5%より0.3%低い4.2%に引き下げられることとなった。
11月の雇用失業情勢
ドイツの11月の失業者数は、4年ぶりに400万人を下回り、399万5106人となった。これは10月に比べると8万8902人少なく、前年同月より53万6206人少ない数字である。女性の失業者数は前年同期比7.5%減の200万7592人、男性は同15.7%減の198万7450人。若年の失業者数は、20歳以下が前年同期比20.8%減の8万9853人、25歳以下が同20.3%減の42万6845人であった。高齢の失業者数は、50歳以上が前年同期比8.4%減の106万1845人、55歳以上が同6.9%減の52万4514人となっている。長期失業者数は、前月より4万546人少ない149万4418人であった。
失業者数は2月にはまだ500万人を超えていたが、好景気を背景に急速に改善した。失業率も2月の12.2%から11月には9.6%まで低下した。失業率は通常冬季には悪化するが、今年は穏やかな天候のおかげで10月の9.8%からさらに0.2ポイント改善した。旧西独地域の失業者数は267万2129人(失業率8.0%)、旧東独地域は132万2977人(同15.5%)であった。
好景気は雇用情勢にも好ましい影響を与えている。労働市場政策を管轄する連邦雇用エージェンシーには、11月に前年同月を18万7000件上回る60万8900件(44.4%増)の求人が登録された。10月の就業者数は、9月より18万1000人多い3967万8000人(0.5%増)。9月の社会保険義務を伴う就業者数も8月を30万4500人上回る2688万2900人(1.1%増)であった。
連邦統計庁によると、06年のドイツ経済は、第1四半期0.8%、第2四半期1.1%、第3四半期0.6%成長した。国際通貨基金(IMF)は12月、06年のドイツの経済成長が2.5%以上になるとの予測を発表した。このような大幅な成長は2000年以来のことである。専門家の多くは来年についても楽観的な経済見通しを示している。IMFは07年の経済成長を1.5%と予想している。
連邦雇用エージェンシーは、07年の平均失業者数が今年度の450万人から来年度は430万人に減少すると予測している。経済大臣の諮問機関の総合経済発展鑑定評価専門委員会は、約420万人まで減少すると予想する。同委員会のベルト・リュルップ委員長は、「雇用に配慮した賃金政策、企業のリストラ策の成功、ハルツ第Ⅳ法の効果および輸出の増加によって、05年末に始まった好況が、この喜ばしい展開をもたらしている」と語った(ハンデルスブラット紙)。
年 | 月 | 失業者数(千人) | 失業率 (%) |
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合計 | 男性 | 女性 | 20歳未満 | 長期失業者 | |||
2006年 | 11月 | 3,995 | 1,987 | 2,008 | 90 | 1,494 | 9.6 |
10月 | 4,084 | 2,033 | 2,051 | 101 | 1,535 | 9.8 | |
9月 | 4,238 | 2,121 | 2,117 | 124 | 1,571 | 10.1 | |
8月 | 4,371 | 2,199 | 2,173 | 142 | 1,598 | 10.5 | |
7月 | 4,386 | 2,234 | 2,152 | 119 | 1,622 | 10.5 | |
6月 | 4,399 | 2,276 | 2,122 | 97 | 1,639 | 10.5 | |
5月 | 4,535 | 2,378 | 2,157 | 99 | 1,648 | 10.8 | |
4月 | 4,790 | 2,570 | 2,220 | 107 | 1,673 | 11.5 | |
3月 | 4,977 | 2,732 | 2,245 | 114 | 1,697 | 12.0 | |
2月 | 5,047 | 2,778 | 2,269 | 114 | 1,668 | 12.2 | |
1月 | 5,010 | 2,734 | 2,277 | 110 | 1,607 | 12.1 | |
2005年 | 12月 | 4,604 | 2,433 | 2,171 | 108 | 1,484 | 11.1 |
11月 | 4,529 | 2,358 | 2,171 | 113 | 1,471 | 10.9 | |
10月 | 4,554 | 2,367 | 2,187 | 123 | 1,481 | 11.0 | |
9月 | 4,646 | 2,423 | 2,223 | 142 | 1,492 | 11.2 | |
8月 | 4,798 | 2,512 | 2,286 | 155 | 1,509 | 11.6 | |
7月 | 4,837 | 2,555 | 2,282 | 138 | 1,527 | 11.7 | |
6月 | 4,781 | 2,552 | 2,229 | 106 | 1,517 | 11.5 | |
5月 | 4,884 | 2,627 | 2,257 | 106 | 1,532 | 11.8 | |
4月 | 5,052 | 2,744 | 2,308 | 114 | 1,546 | 12.2 | |
3月 | 5,266 | 2,930 | 2,336 | 126 | 1,553 | 12.7 | |
2月 | 5,288 | 2,939 | 2,349 | 131 | 1,547 | 12.7 | |
1月 | 5,087 | 2,828 | 2,258 | 122 | 1,522 | 12.3 |
出所:連邦統計庁ホームページ
失業保険の保険料率の引き下げ
05年11月に発足した大連立政権は、企業の国際競争力を向上させるため、社会保険料率の労使負担を40%以下に引き下げる目標を掲げ、その一環として、07年1月より失業保険料を6.5%から4.5%に引き下げることで合意した。
06年に入って雇用情勢が好転し、連邦雇用エージェンシーの財政状況も著しく改善した。11月だけで約20億ユーロの剰余金が発生し、今年1月から11月までの黒字累計が98億8000万ユーロに達した。1年前の05年11月には6億2100億ユーロの赤字を計上しており、06年予算では18億ユーロの剰余金しか計上されなかった。連邦雇用エージェンシーは、06年の剰余金の合計が105億から110億ユーロに達すると見込んでいる。
このため、政府は、失業保険の料率を4.5%からさらに0.3%引き下げ、07年から4.2%にすることを決定し、連邦議会においてもこれが承認された。4.2%の保険料は、総額437億ユーロに相当する。失業保険料率の2.3%の引き下げにより、労使の保険料負担が200億ユーロ軽減される。このうち65億ユーロは07年1月より16%から19%に引き上げられる付加価値税の財源が割り当てられ、残りの135億ユーロは連邦雇用エージェンシーの経費削減によって賄われる。失業保険の被保険者一人当たりでは、約770ユーロ負担が減少する。
連邦雇用エージェンシーの07年予算では、労働市場政策にかかる経費として、06年より17億ユーロ多い総額130億ユーロが計上されている。失業者数が減少しているにもかかわらず、若年者、低資格者や高齢者の就労機会の拡大を目的とした積極的就労支援策に対しては、前年と同等の33億ユーロの予算が割り当てられる。失業給付については、年間約140万人の受給者を見込んでおり、217億6000ユーロの予算を計上している。
約100億ユーロにのぼる連邦雇用エージェンシーの剰余金により、失業保険の料率を4.2%に引き下げても、2010年までは安定した資金調達が可能になると見込まれている。
参考
- ハンデルスブラット紙(12月1・2・3日付)
- 連邦雇用エージェンシー・ホームページ
参考レート
- 1ユーロ (EUR) =154.93円(※みずほ銀行ウェブサイト
2007年1月9日現在)
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