失業率:低下傾向の鈍り
―若年者の就職支援で新たな雇用政策

カテゴリー:雇用・失業問題若年者雇用

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  • 国別労働トピック:2007年1月

2005年3月以来ほぼ連続していたフランスの失業率の低下傾向が停滞している(注1)。2006年11月29日の雇用省の発表によると、10月の失業率は8.8%(ILO基準)で、前月の水準維持にとどまった。これをうけてド・ヴィルパン首相は、若年失業者にターゲットを絞った雇用政策を発表。人手不足産業へ就職した若年者への課税控除額引き上げなどで、「最も厳しい状況にある人々」の就職促進を図るとしている。

政府は、失業率低下傾向の鈍りは、第3四半期のGDP成長の不振によるとしながらも、サービス部門と建設部門における雇用の伸びを強調し、「制約された経済状況にありながらも、雇用情勢の改善傾向は続いている」と主張(注2)。失業率を「2007年7月までに8%以下にする」という政府の目標に変更はないことを強調した。

しかし、失業率を年齢別にみれば、25歳以上50歳未満は8.0%、50歳以上は6.0%であるのに対し、25歳未満は21.8%と、若年者層の失業率の高さが際立っている。

これをうけてド・ヴィルパン首相は、「最も厳しい状況に直面している」若年層の就職促進策を発表した。主な内容は以下の通り。

  1. 人手不足産業へ就職した若年者に対する課税控除額の引き上げ

    2007年12月31日までに、政府の指定する人手不足産業の企業に就職し6カ月以上就業している26歳未満の若者に対する課税控除額を、現在の1000ユーロから1500ユーロに引き上げる。所得が課税最低限以下の者に対しは、1500ユーロの特別手当が国から支給される(現在は1000ユーロ)。

    同優遇措置は既に2005年7月から実施されているもの。政府は人手不足産業として、農業(野菜栽培家、庭師、ワイン生産家など)、建設及び土木(熟練労働者、左官、鉱山労働者、重機取扱者、建設及び土木に関する特殊技能取得者など)、機械及び金属産業(金属加工専門の熟練労働者、機械工業の専門技術者など)、商業(現金出納係、セルフサービス店の従業員など)、ホテル業・レストラン業・食品業(精肉業、加工肉業、パン職人、調理師、ホテル従業員)を指定している。これらの産業では、およそ50万人に上る人手不足が起きているとされている。

  2. 未熟練の若年者に対する個別指導の強化

    毎年19万人の若者が、学業修了証を取得できずにドロップアウトしている。この現状を受けて、公共職業安定所(ANPE)は、こうした若者も含め未熟練者に対する個別指導・就職の斡旋を強化する。

  3. 移動支援手当の増額

    求職者が現在の居住地から200キロメートル以上離れた場所で就職する場合に支給される「移動支援手当prime de mobilite」を、現在の1500ユーロから2000ユーロへと増額する。これは、遠隔地への就職促進及び新生活の開始を円滑にすることを目的とするもので、期間の定めのない雇用契約(CDI)か12カ月以上の有期雇用契約(CDD)により就職した者に支給されている。

こうした政府の雇用対策に対して、失業者や労働組合は「既存のものにただ修正を加えただけ。大量失業は相変わらずで雇用の不安定が増しており、このような対策は何の効果も期待できない」と反発。12月2日にはパリで、失業者を中心としたデモ行進が行われた。デモには、4000人以上(警察発表で1150人)もの人々が参加し、数字上の「失業率の改善傾向」が、国民の実感として表れていないことを象徴するものとなった。

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