欧州の雇用 2006年

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  • 国別労働トピック:2007年1月

欧州委員会は11月6日、『欧州の雇用2006年』(第18版)を公表した。その要旨は以下の通りである。

2005年の雇用者数の増加は、2004年よりも若干高い0.9%の伸びを示した(2004年:0.5%)。就業率は2004年の63.3%から2005年の63.8%に上昇し、失業率が9.1%から8.7%に下落したことは明るい要素である。しかし、2005年の労働生産性の伸びは、緩やかではあるが低下した。EUは米国と比べて、雇用、生産性上昇の両面で後塵を拝する結果となった。

労働市場における柔軟性と保障

2005年の欧州労働市場は緩やかに改善する方向にあった。だが、リスボン戦略の目標値達成への進展は順調とは言いがたい。

積極的労働市場政策の効果的実行

近年、唱えられている「フレクシキュリティ」の議論を踏まえ、積極的労働市場政策を効果的に実行するためには、失業や非労働力化している者に仕事を提供する政策だけでなく、転職を支援するための政策が重要となってくる。労働市場を分断化してしまうリスクを軽減する一方、労働市場のフレキシビリティと雇用のセキュリティの適切なバランスの実現が重要となる。

加盟国における人的資源、技術、成長

知識を基本とする経済をめざすEUにとって、生産性を向上させるためには技術もつ人材の育成が重要である。高技能労働者を育成するための教育投資は、ヨーロッパにおいてGDPの1.2%にとどまっている。アメリカでは2.9%に達しており、この違いが近年のヨーロッパにおける成長の鈍化の要因の1つであろうと見られている。

域内の移動

域内の労働移動は、域外からの労働者の流入に比べると限られたものになっている。EUの労働力人口のうち、域内で出身国以外に滞在しているのは2%以下である。行政上の障壁や情報の流れを妨げる障壁を除去することは比較的容易であるものの、社会的、文化的障壁や教育関連、インフラ関連の障壁は残るであろう。人の移動を妨げる要因をなくすことは困難な状況にある。

結論

2005年の拡大EUにおける雇用状況は、経済成長の鈍化にもかかわらず、改善された。だが、リスボン戦略の目標値の実現にはさらなる施策が必要である。ただ、就業率全般、女性や高齢者の就業率は目標値に達しつつある。

高齢化とグローバル化によってもたらされる急速な経済構造の変化に対応し、包括的な改革を推し進めていく必要がある。そのために、加盟国は、労働市場におけるフレキシビリティとセキュリティの両方を向上させるような、適切な政策の組み合わせを明確化し実行していかなければならない。だが、すべてに対応できるような唯一の「フレクシキュリティ」の方策はありえない。また、加盟国それぞれがかかえる問題に対応する個別の改革を実効していかなければならない。労働法の現代化、積極的な労働市場政策、生涯教育制度、社会保障制度の現代化といった、主要な課題すべてを包括する改革の実行が必要である。

参考

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