第95回ILO総会の概要

カテゴリー:労働法・働くルール

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  • 国別労働トピック:2006年8月

スイスのジュネーブにおいて、2006年5月31日から6月16日にかけて、第95回ILO総会が開催され、ILO加盟国178国の大半から、政労使の三者構成による代表団約4000名が出席した。総会では、(1)児童労働(注1)をテーマにした「グローバルレポート」(注2)についての議論、(2)仕事の世界におけるパターンの変化に関する事務局長報告についての議論、(3)労働安全衛生、雇用関係、石綿に関する新しい措置の採択――などが行われた。

仕事の世界におけるパターンの変化~事務局長報告

総会での議論のために提出された報告書「仕事の世界におけるパターンの変化」(注3)の中で、ILOのソマビア事務局長は、仕事の世界における最近の変化の要因や、世界の労働市場の傾向、社会保障の将来に対する課題、変化に対応した労働市場の規制等について述べ、ILOが目指す「全ての人へのディーセント・ワーク(まともで、人間らしい仕事)」の達成に与える影響について検討している。事務局長は総会での審議を総括し、「我々に与えられた『ディーセント・ワーク機関』としての認識に自信を持って、我々のシステム刷新のプロセスに完全に着手する強い権限」を与えるものになったとコメントした。

条約・勧告(注4)の採択

総会では6月15日、労働安全衛生の促進的枠組みに関する条約と勧告、雇用関係に関する勧告を新たに採択した。6月14日には石綿(アスベスト)の暴露に関する決議も採択された。

労働安全衛生に関する条約と勧告は、2003年の総会で採択された「労働安全衛生世界戦略」を基礎としている。新しい条約と勧告は、労働安全衛生国家計画を設けることにより、「戦略」に謳われた予防的安全衛生文化の育成を促進し、予防的な措置を通じて、より安全で、より健康な作業環境を推進するもので、圧倒的多数で採択された。

雇用関係(注5)に関する新しい勧告は、保護の枠外に置かれた労働者を適切に保護するため、雇用関係の存在の決定、被用者と自営労働者の区別に関する国の政策を労使と協議の上、策定し採択すること、偽装された雇用関係に対する対策を講じ、あらゆる形態の契約取り決めに適用される基準を確保することを加盟諸国に提案するものである。

石綿に関する決議は、石綿への暴露から労働者を保護し、石綿関連の死亡や疾病の将来的な発生を予防するための最も効果的な措置は、石綿の将来的な利用をなくし、現在使われている石綿の把握と適正な管理であると宣言するものである。さらに、1986年に採択された石綿条約(第162号)(注6)を、石綿の継続的な利用を正当化または承認するものとして用いてはならないことも決議した。

この他、国内での強制労働が指摘されているミャンマーに関して必要な措置(注7)をとり、2006年11月のILO理事会で検証することを決定した。また、ILOの技術協力計画に関する審議では、完全雇用、生産的な雇用、ディーセント・ワークが開発の中心的な推進要素であること、従って国際協力における優先目標であるとの理念のもと、ILOの構成メンバーである政労使を強化すること、政労使が技術協力に参加することの重要性が強調された。

参考

  • ILO駐日事務所ウェブサイト

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